90.5 インタビュー エンジニアリング会社社長
ええ、あの日の事はよく覚えています。
開業してから今まで、ウチには色んなお客さんが訪ねてきましたが、その中の誰よりも若くて有名人でしたからね。
なんで甲子園のヒーローが?って疑問でした。
そんな彼が『1000万円ご用意しますから、こう言うの作って欲しいんです。なるはやで』なんて言ってきたんで、みんな驚いていましたよ。
ウチは社員僅か六名のエンジニアリング……工業系に詳しくない方に分かりやすく説明すると『世界に1つだけの、誰も作ったことがない特殊な試作品』を作るのがめちゃくちゃ得意な会社です。
そんな我々に彼が提示してきたのは、既存の技術で実現可能なとあるアイデア製品でした。
春のキャンプインから野球の……特にバッティングの練習に使いたいらしく、予算も充分だったのでさっそく開発に着手することになったわけです。
しかし彼は凄いですね、文武両道というのか……彼の提示してきた企画書を読み、少し話をしただけで、まるで工業高校出身者のような専門知識を持っている事が伝わってきました。
で、当社が作成したのが、そう……『ストロボルーペ』になります。
ストロボルーペは、映画館などで使われている『3Dメガネ』の技術がベースになっています。
液晶レンズが小刻みに高速で点滅し、視界を制限する仕組みです。つまり電気が流れるとレンズが透明になり、電気が切れるとレンズが暗くなる。
この『見える』と『見えない』を1秒間に数回~数十回繰り返すことで、脳は『荒いコマ送りになった少ない情報から次に何が起きるか』を一生懸命予測しようとします。
湊選手はこの負荷が、動体視力や脳の高速処理能力を鍛えるトレーニングになると仮説を立てて、実行した訳ですね。
実際効果はあったのかって?
それは皆様ご存知の通りでしょう。
あいにく私は野球経験がありません。
しかし、投手としてはセリーグ過去20年で最高の打率を残し、貧打と言われていたドラゲキンのチーム打率まで引き上げたのだから、確かな成果があったと断言してもいいのではないでしょうか。
5年程後にアメリカのN社が同じような製品を発表してニュースになっていましたよね。つまり彼はそれだけ未来を生きていたことになります。
本当に凄い選手ですよね。




