番外編 三年目の文化祭(上)
県立八幡高校には商業科があり、その関係から文化祭でもクラス対抗戦が開催される。
外部からも人を沢山呼び、各クラスの「模擬店」を本格的に運営し、最も高い利益を出したクラスが『最優秀店舗』としてチャンピオンになる仕組みだ。
八幡に進学を決めた際、俺は『何一つ犠牲にせずに勝てる事を高校野球界に証明する』と誓いを立てた。
故に、こういう学校行事も前世以上にガッツリ参加して積極的に楽しませて貰っている。
とはいえ正直、過去二年はちょっと調子に乗りすぎてしまった感がありそこはちょっと反省中だ。
前世、色んなお仕事漫画を読んできたが故に、『八幡高校の文化祭ではこんな事やってみたいなー』ってのが多々あったからなんだけど、人生2度目の奴がガチプレゼンして若人がアイデアを輝かせる場を奪っちゃいけなかったなーと。
ちょうど今からその模擬店を決めるための話し合いが始まるところなんだけど、そんな経緯で今年はサポート役に回ろうと思う。
「さあ、今年はどうしようか湊くん」
なんて思っていた矢先、司会を務める岩野くんが開口一番にそんな事を言ってきた。
「いや、今年は別の人が出したアイデアにした方がいいんじゃないかなぁ」
「なんで?!」
「なんでって……ほら、俺の案は去年と一昨年にもう採用して貰ってるし、来場者アンケートで結構クレームもきてたみたいだし」
ちなみに一年目は『スーパー乗り物タウン』という企画をさせてもらった。
田舎って子沢山の人や持ち家の人が多い関係で意外と昔の玩具を取っていたりする。
そこでクラスメイト各自が家にある『プから始まる鉄道玩具』と『トから始まる自動車玩具』を持ち寄って巨大な町を作るっていう企画だ。
巨大ジオラマ展示と組み立て体験ゾーンの二つに分けてファミリーで楽しめる様に工夫したものだ。
原価は鉄道模型を走らせる電池代位で激安、来場したお子様達は大満足、一年生クラスとしては史上初となる『最優秀店舗』に輝いた。
……までは良かったんだけど、人が人を呼ぶ『バンドワゴン効果』を狙って入場時間制限を設けなかったことで大混雑し、まだ遊びたいと泣き出す子供が続出し、他の展示が回れなかったと苦情を頂いてしまった。
そこで二年目は反省を活かして『ガチ怖⭐︎お化け屋敷』を企画。これなら混雑し辛いからね。
ちなみに文化祭のお化け屋敷に本気で怖いものが少ないのは基本的に『暗度』と『色』と『音』が足りないからである。
故に、俺達のクラスは遮光カーテンを二重張りにし、持たせる懐中電灯には青いセロハンを貼って、隠したラジカセで不協和を流した。
加えて、通路を狭く曲がりくねらせ、床をデコボコにして、見えずに触れる仕掛けを作り、業務用クーラーをレンタルして部屋全体を冷やし……と動線と触覚でも最大級に恐怖感を煽る仕掛けを実現。
設備投資にお金をかけ、時間毎の入場人数も絞った分かなり強気の価格設定にしていたが、口コミが口コミを呼び人がずっと途切れず、二年連続で『最優秀店舗』に輝くことができた。
……までは良かったんだけど、怖すぎて泣き出す子供が続出した。まあそれは想定内ではあったから注意書きしていたんだけど、恐怖のあまり漏らす子まで出たとか、腰を抜かして彼女に愛想を尽かされたという想定外の苦情を頂いてしまった。
「いや、君しかいないって。史上初の三連覇が期待されてるし、今年は何してくれるんだってめちゃくちゃ期待されてるんだから」
そうなの?全然しらないんだけど。まあ、ベースボール・ワールドカップと国体で二学期始まってから今まで殆ど学校にいなかったからかもしれんが。
「そうだよ。そんな中で急に今年の企画なんて任されたら他の奴はプレッシャーになっちゃうって!」
持ち上げすぎじゃない?と半信半疑でクラスを見回すと、皆ウンウン頷いていた。
じゃあ、まあ任せて貰おうか。
一応ネタがないわけじゃないし……




