ニシノ3
爆発がフロアを揺さぶっとる。
雷鳴のような砲撃。
昼間の空を何度も引き裂く。
何と野蛮な...。
...ズドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
...バラ...バラ...バラ...
...パラパラ....
...ユッサ...ユッサ....
...ドーーーーン...ドーーーーン...
モニター揺れとる。
あんなデカいもんが。
壁がひび割れて来た。
天井から落ちる残骸が、またデカなって来た。
「ひっ...に、ニシノさん。ニシノさぁぁぁん...学校が...が、が、学校があぁ...泣」
「クミちゃん。あんた何しとん。あんたはまた呑気な...」
「の、呑気て....汗。何をゆうてはりますのん?。ガッコが...が、学校が...汗。」
「ここはもうダメ...。諦めなさい。秘密路を行きなさい。みなもう行っとる。」
...バギィッ...
「私はここで...。私にはここしかないんですぅ...」
「何言うとる。大袈裟な。ここにおって誰が得する?。えぇから早よ行きなさい。ワシも後で行くから。早う!。」
「うそぉぉ...」
「あんたは家族もおるでしょが。行きなさい。ワシまで殺さんといてくれ!。」
「そなんこと言うたかて、息子は家出て、娘も結婚して、家におんのんはあのぐーたら...」
「何ーにーをごちゃごちゃごちゃごちゃと!。」
「ひっ...そなん大きな声出さんでも...」
「クミコ!。聞こえなんだか!。早よ行け!ゴラァ!。」
「ひぃぃっ...怒鳴らんかて...」
「やかましわ!ワシもこんな状況で忙しいんじゃ!見て分からんかぁ!!」
「ひ、ひいぃ...!。」
行きよった。やっと。w
「ガハ..ガハ...ガハハハハハハハハ。クミコぉー。スキップで逃げ?」
「何言うてはりますのん!」
ノリええやっちゃな。クミコ。
ホンマにスキップで逃げよる。
「ガハ...ガハ....ガハハハハハハハハハハハ。」
「に、に、ニシノさん!。」
来たか......キョイ。
血相変えて...。
また、真っ青な顔して...。
...ズドーーーーーーーーーーーーーーン...
...バラバラバラ...
...パラパラ....
...ユッサ....ユッサ....
...ドーーーーン....ドンドーーーーン...
「おい!何しとる!早よ逃げんか!。」
「ここを、ここを捨てるんですか!。」
「仕方ない。歯が立たん。相手があれでは...。」
「あの子達。どこに連れて行けば良いんです?汗」
「まずは逃げろ!。それからや。また作れ。クミちゃん達もおる。心配すな。何とかなる。狙いはこのワシ。ワシとコマチで時間を稼ぐ。地下から行け。あの子らを連れて秘密路を....。一番遠い地上に出て散れ。できるだけバラバラに....」
...ユッサ....ユッサ....
「しかし....。」
「何をしとる!早よ行け!。直ぐ出られんようなる!。あの子達を先導せな!。誰かが!」
「は、はい。し、しかし...」
「急げ!。おまえがオトンや。あいつらの。」
「私じゃ無理です!。私なんかについて来ませんよ。所長もご存知でしょう!?。私はあいつらに...」
「バカたれ!。そんな弱気でどないするのじゃ!。おまえの強い思いで!強い愛で!あいつらを護ったらんかい!。こなぁ!」
「うわぁ...」
キョイ。
自信だけ。
おまえに無いのは自信。
もう何でも出来る。
気づいてないだけや。
自信持て。
笑...
ワシの大声で、こいつまた直立不動になっとる。
笑
「世界一強くて温かいおまえの愛で護ったらんかい!。」
「あ...あの...」
「返事はハイ!じゃろがい!。」
「は、は、ハイっ!」
...ドーーーーン...ドンドーーーーン...
...パラパラ....
「なんワシの顔見とんじゃ!おんどれ!はよ行かんか!あほんだらぁ!」
キョイ。
行け。
「ニシノさん....」
震えながらこいつ何頑張っとん?。
「はよ行かんか!。手遅れになる!。」
「...。」
頑固じゃのー。
驚くわ。
「はよせい!。」
「...。」
もっぺん脅すか?。
いや、ここは柔らか作戦じゃ。
「頼むぞ。ワシらの宝物。守ってくれ。ワシの代わりに。託すぞ?。キョイ。おまえに。」
「...。」
涙も鼻水も流しとる。
そんなに悲しむな。
ここは無くなるが、ワシはいつもおまえらの側にいる。
泣くな...キョイ。
おまえは若い。
若いから迷う。
若いから自信が無い。
じゃが、いかん。
ここで止めてもうては。
おまえに託すぞ。
希望の襷を。
明日への扉を。
今ええ事言ったなワシ...。
「キョイ!。」
「は...はい!。」
泣くなよ...。
もうええ大人が。笑
あぁワシがか?。笑
「笑え!キョイ。あの子らのために。笑え!みなのために!。」
あぁワシもか...。笑
そして...。
おまえ自身のために...。
「泣。ど..どうかご無事で!どうか...。今まで!今まで!どうも、どうもありがとうございましたっ!泣...」
走って行く。
やっと行った。
頑固者ばかり。
じゃが、わき目を振らず全力で走って行た。
一途な男。
直向な男。
丁寧なお辞儀。笑
初めて会った時。
あれは初夏のネオヤマト。
7年前。
確かEXPOの時だった。
おまえ変わらんな。
あの時もあんな感じじゃった。
言われていたような傲慢な天才ではない。
不器用だが誰よりも優しい。
誰よりも温かい。
誰よりも愛が深い。
変わらない。
おまえも、ハセガワも。
子供みたいなもんや。
ワシの息子や。
...カチッ...カチッ...カチッ...
...ガチャ...
えーと。
これは。
古いから接触が悪いなぁ...。
字が細いし、ボタンがチカチカするわい。
あぁー見にく。
老人には。
えぇと。
受話器を取ってパネルを押す...と。
...カッチッ...
警報は解除...と。
いつもクミコにやらせてたからなぁ。
えーと。
どれが...。
...ズドーーーーーーーーーーーーン...
...バラバラバラ...
...パラパラ....
...ドーーーーン...ドーーーーン...
攻撃が益々激しなっとる...汗。
落ちてくる破片がまたデカなって来た。
『.....ピンポンパンポーーン...みなさん。SIT所員のみなさん。私です。ニシノです。さっきからの爆発で分かるだろうが、ここは今アトラの兵曹に攻撃をされてますぅ。コマチとSITは、第一級戦闘態勢を取っておりましたから...みなさんは、大急ぎで退避しなさい。恐らく皆さんのような小物は狙われてません。ガハハ!。でも、用心には用心を重ね、地下通路から、逃げて下さい。ワシも後で行くから、ガハハハ!それから、施設にある備品は何でも持って行きなさい...ピンポンパンポーーン...』
!?
「所長!。」
「ニシノさん!。」
「所長ーーっ!。」
おお?汗
まだおったんかいな!。汗
カトウ、タナカ、ジュリ、チエ...。
来おったわ。
ゆるキャラ4人組が...。
あかんぞ?。
間に合わんようになる...汗。
じゃが...こいつらはやり易い。笑。
思いっきり脅かしたろ。
「バカタレ!。早よ逃げんか!。ワシが逃げ遅れるじゃろがい!。殺す気か!。クラッソコナァ!。」
「ひいぃ。」
「うわぁぁ。」
「キャアァァァァーーー!大きな声出さないでぇ!。」
「えぇぇ。」
「ガッハッハッハッハ!ガッハッハッハッハ!ウハ!ウハ!」
おまえの方がデカイ声じゃろがい。笑
ごめんよ。
ずっこけながら走って行く。
地震、雷、火事、親父と言うからなぁ。笑。
こうやって見ると。
みなも歳とったなぁ。
流石に。
長い間良う働いてくれた。
あの子らのために。
ありがとう...。
みな。
最後まで。
感謝。
『...ピンポンパンポーーン...ガハハハ!ガハ!ウハハ。最後になった人はお給料でません!ガハハハ...ピンポンパンポーーン....』
ワシの笑い声、こんなに下品だったか...。
館内に響き渡る。
下品な笑い声が...。
粒子砲撃の度に、施設が激しく揺れる。
ハリケーンの中の笹船のように。
いつかはこうなる運命。
早いか遅いか...。
なぁ。ナミちゃん。ユキナ...。
おまえ達の写真。
これだけになってもうた。
このカードケースも、変色し色褪せた。
長い間に。
ボロボロになってしもた。
こんなに長生きしてしもて...。
ワシだけ、1番早よ死んだらええワシだけ。
こんな...。
ナミちゃん。
最高の嫁さん。
ユキナ。
あんたに貰ったカードケース。
もうクシャクシャ。
どこに行くにも肌身離さず持っとったから...。
約束は果たせなんだ。
すまん...。
おっさんが禿げ頭に写真ぴったり着けてすすり泣く姿。
人には見せられない。
...ブウーーーーーーーーーーーーーーー!...ブーーーーーーーーーーーーーーーー!...ブーーーーーーーーーーーーーーーー!...ヒュルルルルルルルルルルルルル......ヒュルルルルルルルルルルルルル......ヒュルルルルルルルルルルルルル......ブーーーーーーーーーーーーーーーー!...ブーーーーーーーーーーーーーーーー!...ブーーーーーーーーーーーーーーーー!...ヒュルルルルルルルルルルルルル......ヒュルルルルルルルルルルルルル......ヒュルルルルルルルルルルルルル......ブーーーーーーーーーーーーーーーー!...ブーーーーーーーーーーーーーーーー!...ブーーーーーーーーーーーーーーーー!...ヒュルルルルルルルルルルルルル......ヒュルルルルルルルルルルルルル......ヒュルルルルルルルルルルルルル...
警告音が鳴り響く。
けたたましい。
切ったはずの警報機...。
!?
28番?。
何で....?。
制御パネルが。
28番ゲートが点滅しとる。
正面に一番近いゲート。
開き始めたゲート。
モニターに映る。
「なんじゃ!?。」
子供が...?。
飛び出していく。
誰だ?。汗
少年が映っとる。
そんなはずは。
一気に兵曹の方角に走っていく。
人の速度じゃない...。
!
ハッ!?。汗
あ、アカン!。
「おお!?あ、あいつ...。バ、バカか..?。何番?。どれクミちゃん。どの...。」
タイガーの作業着、何番?。何番だ?。汗。
通信機能がついとる。
「バカたれ!戻れっ!あ、あ?おい。タイガー!タイガーッ!何しとる!?。何しとる!。」
...ピーーーー...カチッ...カチッ...カチッ...カチッ....
『...父さん。いつもゴメン。僕が時間稼ぐから逃げて!。父さん。...大好き!。...』