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トリスタンの皇帝  作者: Jota(イオタ)
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ニシノ4

北側の光学モニターが2体の兵曹を映し出す。


コマチですら、この偽装(シェイプシフト)を無効化出来ん。


灼熱の砂漠に、羽のついた2体の巨大な鉄仮面がただ浮遊しとる。


一体何のためにこんな偽装をしとるのか...。


この重い巨大な物体が空中に静止しとる。


完全に。


放電翼を広げて、やや前傾した状態で。


この体勢は、かなり力のある兵曹にしか出来ん。


空中で完全に静止するのは、ほぼ不可能や。


自分らの力を誇示しとる。


つまり、あいつらの標的(ターゲット)を、完全に威嚇しとる。


大きさは100mは裕に超えとる。


サッカーコート位の大きさがある。


微動だにせず、強い日光が、砂のオレンジ色を飛ばし、白んだ砂地に、漆黒の大きな影を作っとる。


雨雲かと思うほどや。


異様そのもの...。汗


施設から20km先。


太陽光すら光らせない暗黒の兵曹。


黒い方はとんでもない大きさや...。


対照的に、太陽の光を浴びて、一際、輝きを放つ黄金の兵曹。


まさか...。汗


「恐らく、あの兵曹たちは、我々の施設のメイン高圧炉(リアクター)の再稼働を待っています。」


「なぜそう思うんや?。」


ワシには、最高総監と言う、何やら大層な肩書きがついとる。


このような、私設軍隊では、オーナーが最高総監になることが、法で定められとるらしい。


「レムリア海岸から現地点までの移動の軌跡が、高圧炉(リアクター)の稼働と連動しています。」


「連動!?。どう言うこっちゃ。」


この施設が標的(ターゲット)言うことか?...汗。


「テオ。兵曹とアルマダイ高圧炉(リアクター)の活動相関図を最高総監殿にお見せしろ。」


「ハイ。オ待チクダサイ。」


最高総監...汗。


ワシが?w。


テオが北側モニターパネルの操作を始めた。


「できるか?。」


「ハイ。データはTVE形式ナノデ、光学モニターデモ再生デキマス。」


第2司令室からデータも引っ張ってこられるんやな。


知らんかった。


しかし、手慣れとる。大したもんや。


...ブウウゥゥーーーーン...


「ご覧ください。このように...。2体は、高圧炉(リアクター)の稼働時間帯に、のみ移動し、移動するごとに、当施設に接近しております。」


「なるほど...。」


「今この施設は停泊期にあり、メイン高圧炉(リアクター)は停止、1時間に 4.2cm のみの移動に抑えられておる状態です。」


「なるほど...。」


この施設は常に移動しとる。


一日10m、最大で1km...。


「運行スケジュールデスト、40分後ニ高圧炉(リアクター)ハ再稼働、通常移動ヲ経テ、巡航ニハイリマス。一日ノ移動距離ハ30mデス。」


1年で200km以上移動しとる。


「なるほど...そしたら、このまま停泊期を維持するのが良さそうや。」


移動する理由は、リフブ砂岩帯水層の巨大な地下水脈の確保、磁気嵐、外敵...色んな要素がある。


重量は、反重力板で、地下20階(80m)の体積分の、砂重と同じになるようにコマチが制御しとる。


アルマダイによる爆発的で圧倒的な力と、重力制御、そしてコマチの天文学的な計算能力があれば、不可能は存在しない。


地下階層の構造は、外殻(ジニリュウム) + ダンパー(生体ゴム) + 内壁(ジニリュウム)のめちゃくちゃ強い構造や。


外殻前方には多くの最新掘削機(スピルナー)と、砂流制御機構、サイドは砂の抵抗を和らげるスピナー(ごっつい歯車、つまり滑車みたいなもんや)がようけついとる。


この歯車は、一つの町が入るほど、でっかい歯車や。w


そして、施設の後方では砂を噴出し排出しとる。


この移動が、SITの位置の特定を更に難しくしとる。


大抵の者はこの施設が動いとるとは思わん。


イソギンチャクが泳ぐほど予想外や。


(イソギンチャクには泳ぐ種類がおるで?。知っとる?。)


更に、コマチが、潜伏し、偽装し、撹乱し、虚像を創り出すことで、この研究施設の存在を完全に消し去っとる。


100km圏内での、コマチの強力な誘導ビーコンが無ければ、訪問者は永遠にこの施設に辿り着けず、確実に遭難する。


「ソレガ...動カナイト、砂流b106ノ影響デ施設ノバランス取レナイデス...。」


「砂流b106?。なんやそれ?」


「今年最大級ノ砂流デス。」


「なるほど...。砂流キャスリーンみたいなもんやな。名前は統一した方がええぞ。」


「キャスリーンハ、バグー共和王国側ノネーミングデ、我々ノ軍事名デハf100デス。」


「なるほど...。」


「施設の今の状態は《停泊》ですが、この速度では、施設が砂流b106に呑み込まれてしまいます。コマチの演算ですと、もう70cmも砂上高が下がっています。」


ん?汗。


「砂上高が下がっとる!?。汗。それはあかんやつや。」


「ハイ。引キ込マレル速度(スピード)モ早クナッテル。危ナイ状況デス...。」


「なるほど...。この辺りには他の施設もある。他の施設が狙われとる可能性は?。」


「想定される有力なものでは、北アトラの自己増殖兵器の製造拠点、アマル帝国の大陸間弾道粒子砲のエネルギー炉が、この辺りにあることが確定しています。当初、我々も大陸間弾道粒子砲のエネルギー炉が標的(ターゲット)であると疑っておりましたが、活動相関図、距離、方向から、我々が標的(ターゲット)であることは、ほぼ間違いないでしょう。」


「なるほど...。」


「恐らく、SITがメインリアクターアルマダイ高圧炉(リアクター)を動かした段階で、奴らは即、動くでしょう。」


「なるほど...。」


「アフロダイ高圧炉(リアクター)ノ方ハ、既ニ起動シテマスガ、砂流ガ強過テ、アフロダイデハ抜ケラレマセン。」


「アルマダイを検知されたらどうしようもない。困った...。汗」


「はい。」


「困リマシタ。」


「避難路までの接続も考えなあかん。」


「そうですね。」


「施設警戒体制ハ第3種ノ待機ヲ発令シタ方ガ良イデス。」


「そうやな...やむを得ん。退避も想定せんといかんな。」


肝臓と胃が痛む...。


ズキズキと。


「ほな石川くん、《通常》移動にするか?《巡航》にするか?。」


「《高速》以上ニシナイト、砂流ヲ抜ケラレナイ、ト、担当ハ言ッテマス。コマチモ同意見デシタ。」


「あんたの所管か。すまん。ほな、高圧炉(リアクター)再起動してくれますか?。」


「了解シマシタ。今直グ指示ヲシマス。」


「施設警戒体制も第3種 待機を発令してくれ。」


「了解シマシタ。直グ対応シマス。」


「あ...テオ。待ってくれ。館内放送の間空けたってよ?。」


「間...?デスカ?。」


「高圧炉(リアクター)起動も館内放送流れるやろ。同時に流したら混乱するから。ほんで居住区民のパニックが一番怖いから。10分くらい間を空けたって?。」


「ハイ分カリマシタ。連絡・相談員モ、居住区ニ向カワセマス。」


「流石や。」


「しかし、中央アトラが、今更、我々に何の用でしょう...。」


「アスカ計画やろ。やはり。」


「アスカ計画の継承は、元老院も承認しているはずですが。」


「確認してみんと分からん。」


あいつらなら、わざわざ、偽態(シェイプシフト)せんはずや。


変な奴が幹部に上がったんやろか...。汗



...ポゥーーーーーーーーーーーン...


『...こちらは、SIT 起動・運行管理局よりお知らせします。まもなく、アルマダイ メイン高圧炉(リアクター)を起動します。...』


『...高圧炉(リアクター)起動に伴い、施設全域において、大規模な起動音、衝撃音、および短時間の振動が発生します。...』


『...これは正常な起動手順によるものです。全職員および居住区住民の皆様は、慌てず、通常活動を継続してください。...』



「私は第2司令室に戻り、戦力の出撃体制を整えます。テオはここに残ってくれ。」


「分カリマシタ。」


「最高総監殿。上位の兵曹相手なら、最初から総力戦になります。」


「分かっとる。」



...ポゥーーーーーーーーーーーン...


『...こちらは、SIT 起動・運行管理局よりお知らせします。まもなく、アルマダイ メイン高圧炉(リアクター)を起動します。...』


『...高圧炉(リアクター)起動に伴い、施設全域において、大規模な起動音、衝撃音、および短時間の振動が発生します。...』


『...これは正常な起動手順によるものです。全職員および居住区住民の皆様は、慌てず、通常活動を継続してください。...』


...タッ..タッ..タッ..タッ..タッ..ダダ..ドタ...


「所長?。」


!?。


くみ子が2階からが降りてきた。


「まだおったんかいな。汗」


「上でラーマンさんとスーパーの打ち合わせしてました。大丈夫なんですか?。ウチの施設。」


「大丈夫や。安心せい。」


ハジブは、ハジブ・ラーマンは、大分後ろに立っとる。


ワシへの配慮やろう。理解はできてると言う意思表示や。


「これからのお食事、冷食にした方が良いと思うんですけど、丁度発注ラインで、全員分は3日持ちません。今日の分は給食部門で作りたいと思います。」


「いや、冷食でもええ。足りん分は、非常食があるやろう。」


「はい。それで良かったら半年分の備蓄はあります。そんなに悪いんですか?。」


「すまん。最悪、避難の準備をさせといてくれ。給食部門でも。」


「はい。わかりました。周知の上、準備します。所長もちゃんと休んでくださいよ?。」


「大丈夫や。ありがとう。くみ子。」


「はい。」


「世話かけるな。」


「いえ、何ちゃ。何ちゃ。仕事ですから。」


「何ちゃ」は、西アトラの方言で、全然という意味らしい。くみ子も西からの難民。苦労したやろに。


しかし、くみ子のこの「何ちゃ」に何度救われたことか...。



...ポゥーーーーーーーーーーーン...


『...こちらは、SIT 起動・運行管理局よりお知らせします。まもなく、アルマダイ メイン高圧炉(リアクター)を起動します。...』


『...高圧炉(リアクター)起動に伴い、施設全域において、大規模な起動音、衝撃音、および短時間の振動が発生します。...』


『...これは正常な起動手順によるものです。全職員および居住区住民の皆様は、慌てず、通常活動を継続してください。...』



「ニシノサン。ソロソロ高圧炉(リアクター)ガ起動シマス。」


「ハジブ!。くみ子!。手すりに捉まれ!。起動するぞ!。」


...クミコサン急イデ!....


...ここで大丈夫かしら..汗...


二人は出口の手すりに走って行く。


もしかしたら、もう会えんかもしれん...。


はっ!?。


ワシは、何を不吉なことを...。


縁起でもない。


...


....


...ンンーー...ーーンーーーー...ーーーー...ーーーーー..ーーーーンンーーー....ーーーーーー...ーーーーー..ーーーー...


..ツッ....


...ツ...


....


...ドーーーー...ーーーーー..ーー..ーーーーーーーーーーーー..ーーーーーーーーー...ーーーーーー..ーーーーーーーン...


...


施設に衝撃音が轟く。


...ユッサ...ユッサ...ユッサ...ユッサ...ユッサ...


震度計は4を指しとる。


アルマダイ メイン高圧炉(リアクター)が起動した。


1時間に、41.7cm のスピードで施設は移動を始める。


加速の体感はない。


2段階で、これの倍のスピードになるが、気づく者はおらん。


おっても軽くよろめく程度や。



...ウォ---------------ン...ウォ---------------ン...ウォ-------------------ン...


...ウォ---------------ン...ウォ---------------ン...ウォ-------------------ン...


『...こちらは、統合監視・管制・司令室です。...』


『...警戒レベルが引き上げられました。ただいまより、第3種警戒体制へ移行します。...』



動きよった...。汗


2体の兵曹が...。


何の慈悲も遠慮も無く。


血の気が引くとはこう言うことや。


覚悟はしていたものの。汗


「動キ始メマシタ...残念デス...汗。」


「動きおった。汗」


ワシとテオは、北向きの光学モニターに釘付けや。


2体の兵曹は直立したまま飛来しとる。


大きな放電翼をカナブンのように広げて。


これで間違いない。


アトラの軍事兵曹がワシらのこの施設SITを目標(ターゲット)に侵攻しとる...。



...



...ウォ---------------ン...ウォ---------------ン...ウォ-------------------ン...


...ウォ---------------ン...ウォ---------------ン...ウォ-------------------ン...



『...施設周辺において、脅威接近の可能性が高まっています。...』


『...現在、施設への直接的な危険は確認されていません。しかし、状況によっては、更なる警戒体制への移行、および退避命令が発令される可能性があります。...』



...ツゥーーーーッ...ツゥーーーーッ...ツゥーーーーッ...


...ツゥーーーーッ...ツゥーーーーッ...ツゥーーーーッ...



部門長からの連絡。


「私や。」


『...アトラの兵曹2体が、時速100kmで、当施設に接近中です...』


「見えとる。」


『...現在、外縁警戒圏を飛行中...』


「了解。」


『...後23分で警告発出圏に侵入します...』


「国際緊急回線で警告を開始を頼む。」


『...了解...』


【...こちらSIT統合監視・管制•司令室。接近中の軍事兵曹2体に告ぐ。所属および接近目的を直ちに通報されたし。...】


...。


反応がない。汗



...ウォ---------------ン...ウォ---------------ン...ウォ-------------------ン...


...ウォ---------------ン...ウォ---------------ン...ウォ-------------------ン...



『...軍事部門および即応部隊は、防衛配備開始。幹部および管理部門は、指揮所へ移動し、待機。...』


『...一般職員は、所属区画にて退避準備を開始し、即時行動が可能な状態を維持。...』




【...こちらSIT統合監視・管制•司令室。接近中の軍事兵曹2体に告ぐ。所属および接近目的を直ちに通報されたし。...】



...。


『...反応がありません...』


「....。困った...汗。呼びかけを継続してくれ。」




...ウォ---------------ン...ウォ---------------ン...ウォ-------------------ン...


...ウォ---------------ン...ウォ---------------ン...ウォ-------------------ン...



『...居住区住民は、居住区内で待機し、避難指示に備えてください。...』


『...育成生徒は、担当教員の管理下に集合、担当教員の指示に従ってください。...』



【...こちらSIT統合監視・管制•司令室。接近中の軍事兵曹2体に告ぐ。所属および接近目的を直ちに通報されたし。...】


【...こちらSIT統合監視・管制•司令室。接近中の軍事兵曹2体に告ぐ。所属および接近目的を直ちに通報されたし。...】



..ウォ---------------ン...ウォ---------------ン...ウォ-------------------ン...


...ウォ---------------ン...ウォ---------------ン...ウォ-------------------ン...



『...医療部門は、救護所を開設してください。...』


『...全職員、全住民は、不要な移動を控え、次の放送に備えてください。



【...こちらSIT統合監視・管制•司令室。接近中の軍事兵曹2体に告ぐ。所属および接近目的を直ちに通報されたし。...】



「絶対防衛圏マデ20分ヲ切リマシタ。」


『...兵曹が速度を上げました!汗...』


「絶対防衛圏でこの2体を防げるか?石川くん。」


『...いや難しいでしょう。...』


「ミラージュヲ緊急発進(スクランブル)サセマスカ?。」


『...やむを得ん。そうしよう。良いですな?。最高総監殿?。...』


「分かった。」

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