ニシノ2
レムリア海から金色の飛行艇が飛来している。
砂の世界タルカントに。
飛行艇は二つの太陽の光を反射し、眩い光を放っている。
自らが燃えるような黄金の光を。
どこまでも続く砂漠地帯を鏡のように映しながら。
これは、アトラの特殊な身分の者が乗る飛行艇エルドラ。
太陽の光で飛行する。
...ウーーーーーーーーーーーーーーーー...ウーーーーーーーーーーーーーーーー...ウーーーーーーーーーーーーーーーー...
風の音に似た不協和音が地響を伴い、幾重にも折り重なって行く。
砂獣ヤーの鳴き声だ。
ヤーはバグー、タルカント、サバランなど連なったこの砂漠地帯 バグースにだけ生息する巨大な獣。
砂漠地帯 バグースは大陸のおよそ8割を占める。
ヤーは、その砂の世界の覇者だ。
ヤーは群れで暮らし、大きいものは3000mを超える。
自在に砂中を泳ぎ、龍に似ているため、砂龍ともいわれる。
ヤーは、兵曹と同じくいくつもの光る目を持っている。
巨大な砂漠の特急列車であり、無敵の甲殻を纏った海老の怪物だ。
そして、ヤーも例外ではなく、人や獣を好んで食べる。
ただ、ヤーにとって、人間や動物は、砂面にいるただのプランクトンに過ぎない。
かってのシャイアン帝国の人々は、遺伝子のレベルで、ヤーの恐ろしさ知っていた。
シャイアン人々は、長い歴史の中で、ヤーを追い払う術を見つけた唯一の民族だった。
タルカントには、シナハッカクと言う強い匂いのする植物が生えている。
見つけることすら難しい奇跡の植物。
この植物の臭いをヤーは嫌う。
子供のヤーはこの植物が体内に入ると死ぬことすらある。
シャイアンの民は、シナハッカクをタルカントに繁茂させることに成功した。
そして、自らモンタギューの天敵、砂獣ヤーをタルカントから追い払った。
...ウーーーーーーーーーーーーーーーー...ウーーーーーーーーーーーーーーーー...ウーーーーーーーーーーーーーーーー...
遠くの砂丘に、赤いヤーが横たわっている。
タルカントのオレンジ色の砂の彼方に。
ヤーの背の上を、赤やオレンジ、黄色、色とりどりの鮮やかな服を着た人達が歩いている。
ボグルー族だ。
ヤーにオアシスから運ばせた水を、ボグルーは、頭に乗せ、それぞれの村に運んでいる。
ヒドウィーンが海の民であるのと同じく、バグーの民バグダディスは、砂の民と言われる。
ボグルー族は、砂の民バグダディスの中でも、磁気嵐や、二つの太陽の気違い染みた直射日光、そして、最熱期70度を越える気温に、最も適応した種族。
そして、ボグルーは、ヤーを最も巧みに操ることが出来る唯一の民族だ。
ボグルーには、しばしばハーメンと言われる特殊な身体をした子が生まれる。
ハーメンは、ヤーを操るのに適した身体をしている。
ハーメン達は、かつてモンタギューを撃退した。伝説の砂獣使いバーメルンと共に。
その功績にも関わらず、ハーメンは半獣として扱われ、地位は低い。
家畜やペットより少しマシな程度だ。
タルカントには見渡す限り砂の世界が続く。
旅人の気を狂わせるほど果てしなく。
狂気の美しきオレンジ色の世界...。
視界の彼方で、竜巻がいくつも立ち上がる中。
二つの影は、黄金の飛行艇から、灼熱の砂に降り立った。
銀色の戦闘服を着た者が、黒い戦闘服を着た者に従っている。
タルカントに降り立つ常人はいない。
自殺行為だ。
二体は、恐らく兵曹。
飛行艇に見張りもつけずに歩き出した。
砂は深く、二体は膝の上まで砂に埋まっている。
人間の重さではない。
...ドーーーーン...
銀色の戦闘服の男から破裂音が轟く。
辺りの空気は振動をはじめ、砂嵐が巻き上がる。
...ドーーーーンドーーーーン...
破裂音は、黒い戦闘服の男からも。
砂嵐が巻き上がる。
嵐の中で二体は巨大化し、宙に浮き始めた。
皮膚が金属化し始める。
それぞれの戦闘服に近い色に。
浮かんだまま、ゆっくりと一定の方向へ進んで行く。
研究施設の方向に向かっている。
施設の防衛圏内に入った2体は、すぐに補足された。
___________________________________
ん?。
そうでもなさそうか?。
窓から施設の中と砂漠が遠くまで見渡せる。
その上に斜めに取り付けた、どデカい光学モニター。
映画館のモニターと同じ大きさ。
凄いか?。
そしたらあんたらも頑張りなさい。笑
誰でもできる。
熱意と愛さえあればな。ガハッ...
施設の防衛と管理を担当している者が10人。
男4人と女6人。
みな男みたいなもんじゃけどのう。笑
...ガハハハ...ガハ...
見た目は、普通の事務所じゃが、ここは管制司令室を兼ねとる。
部屋の隅にはモップが。
誰か掃除の途中で忘れてる。
またマツダか?。
まぁ、しゃぁない。
警備も掃除もみんな交代でやってくれてる。
白板はエリックさん...。
「エリックさん。モニター拡大して?。」
今日の当番はエリックさんの日ぃか。
まてマツダを疑ってもた。
...ガハ...ガハハハ...
「光学モニターで、映します。3、2、1。」
モニターに、兵曹が映し出される。
!
エラい図体のデカいのが2匹。
思てたんとちゃう...。
「あれは...。」
「あれは、ユーライじゃないか?。」
ハジブが言う。
あぁ?
ユーライか?。
違うようじゃが...。
お前らはいつもつるんどった。
金魚のフンみたいに。笑
「なんだ、ユーライか。」
「久しぶりだ...ふぅ。」
「びっくりした...。心配しちゃったわ...。」
マツダはモップを始めた。
やっぱりマツダか!。笑
...ガハッ...
キー腰にぶら下げとるわ。
あぁ、代わりにコマチのリロードかけてくれていたのか。
防衛システムが変わったからのぅ。
「おい。マツダ。ありがとう。」
「あ、いえいえ。」
一時的に2人になる。
コマチが。
引継ぎが少し悲しい...。
新旧の。
まぁ、その必要も無かったか。
「やれやれ...人騒がせな...。」
ハジブが言う。
張っていた空気がなごむ。
また、アツコさん達がお喋りを始める。
普段通り...。
よう喋るな。あんた達は。
ペチャクチャと。
「ユーライだ。少し色が違うが。もう一体は...。」
テオが言う。
誰が3Xが二体などと言った。おっちょこちょいが。
...ガハハ...
「あ、あれは.....。」
テオおまえは何を焦ってる?。
テオはレーダーや監視、管理全般を担当してくれとる。
?
!?
なんだ?。
モニターの中央に何やら大きな兵曹が...。
眼鏡はどうした?。
どこだ?眼鏡...。
「所長!。頭!。頭!。」
マツダ?!。
「おまえ!ワシをハゲと言いたいのか!」
「所長!眼鏡!どうしたの?」
ジュリが言う。
ん?。
眼鏡どうしたか...。
「所長。胸のポケットは?。」
はっ!。
いかん。塔の上に置いて来たぞ。
「あれは、ザネーサー...。」
ハセガワが言う。
また、皆の空気が凍りつく。
まさか...。
もしそうなら。
エラいこっちゃ。
しかし、眼鏡を置いて来るとは、なんという間抜け。
ワシとしたことが緊張感が足りてない。
「マツダ!。回線を開け!。急げ!。」
「は、はい!。なぜユーライがザネーサーと....」
知らん。
分からん。
聞いてみないと...。
「繋がりました。」
待っていたのか...。
対話をする気はあるようだ...。
『...聞こえるか。わしだ。こっちへ来るのか?。...』
ザネーサーも、ユーライも軍事兵曹。
アスカ計画から生まれた。
アダムとザネーサーは今から35年前。
13番目のプロジェクト。
ユーライとタイトはその後、44番目のプロジェクトで生まれた。
アルマタイトの新しい融合方式が見つかると、試験体が無数に作られる。
そして、いつかは完成体が見つかる。
完成体には、常に対になる逆の回転軸を持った個体が生まれる。
完成体を陽極星、他方を陰極星と呼ぶ。
陽極星のエネルギー規模は、普通、陰極星の69倍。
開発において、大抵の場合、陰極が間引かれる。
陽極開発に資金や人材を注力するため。
そして、殺し合いをさせないために。
しかし、陽極星のザネーサーは、エネルギー規模が想定を遥かに超えていた。
当時のパワープラントが幾つあっても足りないほどに。
殺処分されることとなった。
可哀想なことに。
が、ザネーサーを殺すことは出来なかった。
あの子は生まれた時点で完全体だった。
生まれながら、殺されることを知っていた。
恐らく、人工卵巣の中で、我々の話を聞いていた。
だから、自分の力を4歳まで隠した。
自分の力が脅威を上回るまで。
我々がマダクに言われ、殺処分を決めた時。
もう手遅れだった。
唯一の頼みの綱、ジェニファーは手を貸してくれなかった。
拒んだ。
そりゃそうや。
ジェニファーもザネーサーと同じ兵曹。
ワシらに加担する理由が無い。
もうどうすることも出来なくなった。
アトラは他のどの国とも違う。
軍事兵曹が強過ぎる。
メガラニア以外、人間の味方はいない。
そして、メガラニアは今、ザネーサーと共にある。
なぜか...。
軍事兵曹は、アトラを護り、他国を牽制し、侵略もする。
しかし、あいつらは統制に従わない。
今やアトラの最大の脅威。
アスカ計画はアダム0の暴走から始まり、失敗続きじゃった。
事故や災難が続いた。
ワシらの下らん野心が。
つまらん探究心が、とんでもない物を作り上げてしもた。
代償として、国と国民は、ベイエリアの大半500km四方を失った。
元老院の期待通り、アダムとザネーサーは、暴れまくった。
その圧倒的な戦闘力で。
あらゆる敵や脅威を殲滅し、近隣の小国の領土や資源を奪い尽くした。
多くの罪のない人々の命を道連れに。
あいつらの現れる場所には必ず災悪が伴う。
「..なぜ黙っとる?...」
ラジュカムの音声は届いているはずだ。
回線は開いても、あいつらは応えない。
マツダが口から泡を飛ばし、マイクに向かって叫んでいる。
「...応えてくれ。ワシらを恨んでいるのは知っている。帰ってきたのなら...」
...ピュウーーーーーーーーーーーーーーーーーーーィ...
受信機に雑音が混ざる。
アルマダイが干渉する音だ。
『...我々は戻ってきたのではない。...』
ラジュカム言う音声変換機に作られた声...。
銀色の兵曹の方から発信された。
ユーライよ...メガラニアよ。
一体どうした?。
返事をするだけ良心的ということか。
「...何をしにきた。ここを、ワシらを滅ぼしに来たか?...」
「通信が、通信が途切れました。」
マツダが何度も回線をつなごうとしてる。
しかし、もう繋がることは無いだろう。
これは...アカン...。
えらいことになってしまった。
これは...。汗。
ただではすまない...。
何と言う。
何と言うことだ...。
今の内に皆を逃がさないと。
落ち着け。
落ち着け。
落ち着いて急げ...。
この時が来た。
「ハセガワ!。おまえは今日は帰りなさい。」
この火を、業火を消すためには。
「し、しかし...。」
真のアスカを。
本当の救世主を。
「面倒なことになった。ただでは済まない。」
お前一人に託すのは酷かもしれん。
「私だけ逃げるわけには...。」
だが、頼む。
違う。
「アホか!早よ行け!行かんか!。」
ワシにはもう時間が残されていない。
「ニシノさん...。」
お前達ならきっと。
ワシを越えたお前達なら...。
「生まれるじゃろがい。元気な赤ちゃんが。」
そして、幸せを掴め。
ワシらの夢見た世界。
「....。」
なぜ、分からない。
「あの子らはキョイに頼む。」
自己犠牲など必要無い。
「キョイ1人では無理です!。私も!。」
「人の背負うものはそれぞれちゃう。おまえは帰って嫁さんと、生まれてくる子と幸せに暮らせ。」
ハセガワは真顔になった。
こいつは、律儀な男。
見た目とまるで違う。
下手すると直ぐにワシに迎合する。
「そ、そんな私だけ....」
いかん。
また、始まった。
急がなければいかん。
「おまえは、ワシが死んでもアスカの火を、希望の光を護ってくれ!。」
楽なことでは無い。
だが、おまえなら出来るり
お前を始めて見たとき、ワシらに足りなかった物を持っていると感じた。
ハセガワは真っ赤になっている。
この頑固者が。
こうなったら、中々言うこと聞いてくれん。
「わ、私には、荷が、荷が重過ぎます...」
ちょっと、ワシも気が動転して上手いこと出てこない。
「バカタレが!。おまえがやらな誰がやる!。クラッソコナァ!。」
「...はっ...はいっ!。汗」
ハセガワが飛び上がった。
あぁ、ワシのデカい声。
こう言う時に役立つな。
ハセガワもキョイもこれが怖いらしい。笑。
「子が大きなるまで身を隠せ!。」
「...。」
こいつ。頑固者が!。
「バカタレが!コラ!聞いとんか!。」
「は、はいっ!。」
体育会系はこういう時扱い易い。笑
「はよ、行きなさい。」
この優しい声で決まり...。
「はい...。」
やっと歩き出した。
泣くな。笑
頼む。
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《...逃がしてやるつもりか。...》
《...大勢に影響はない。...》
《...情けは命取りになる。...》
《...分かっている。》
《...時間を早め攻撃を開始する...》
《....》
《...これは命令だ。...》
また、爆音とともに砂嵐が巻き上がる。
...キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
ジェットタービンが高速で回転するように、金属音が響き渡る。
高さの違う金属音が互いに揺らめき干渉しあいながら。
二体は更に巨大化する。
黒い兵曹は、コウモリのような真っ黒い金属の翼を、銀色の兵曹は、斧のような形の銀色の翼を広げる。
放電翼と呼ばれているもの。
巨大なその翼は、二体を悪魔のように見せる。
黒い兵曹は、楕円の赤い二つの目、銀色の兵曹は黄色い三角形の目を左右に2つずつ持っている。
砂煙の中、それぞれの目は、光を放ち始めた。
車のヘッドライトのように。
サタンやルシファーは、きっとこのような姿なのだ。
...ブーーーーーーーーーーーーーーーー!...ブーーーーーーーーーーーーーーーー!...ブーーーーーーーーーーーーーーーー!...ヒュルルルルルルルルルルルルル......ヒュルルルルルルルルルルルルル......ヒュルルルルルルルルルルルルル......ブーーーーーーーーーーーーーーーー!...ブーーーーーーーーーーーーーーーー!...ブーーーーーーーーーーーーーーーー!...ヒュルルルルルルルルルルルルル......ヒュルルルルルルルルルルルルル......ヒュルルルルルルルルルルルルル......ブーーーーーーーーーーーーーーーー!...ブーーーーーーーーーーーーーーーー!...ブーーーーーーーーーーーーーーーー!...ヒュルルルルルルルルルルルルル......ヒュルルルルルルルルルルルルル......ヒュルルルルルルルルルルルルル...
施設の警報がタルカントに鳴り響く。
...ダン!ダン!ダン!ダン!ダダン!......ダン!ダン!ダン!ダン!ダダン!......ダン!ダン!ダン!ダン!ダダン!...
...ウゥゥウゥゥ......ウゥゥウゥゥ......ウゥゥウゥゥ......ウゥゥウゥゥ......ウゥゥウゥゥ...
....ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ...
施設ごと揺れている。
施設が防護壁を立ち上げ始めた。
巨大な防護壁を。
防護壁が3km四方、施設を全て覆い隠す。
ルシファーとの戦闘のために。
ブルーの光が全てを覆う。
防御シールドだ。
通信塔は地面にもぐり、変わりに砲台が無数に立ち上がる。
敷地の地面は、地下に傾斜し、いくつもの滑走路に変わる。
...ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...ゴーーーーーーーーーーー...ボウーーーーーーーーーーシュウーーーーー......ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...ゴーーーーーーーーーーー...ボウーーーーーーーーーーシュウーーーーー......ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...ゴーーーーーーーーーーー...ボウーーーーーーーーーーシュウーーーーー......ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...ゴーーーーーーーーーーー...ボウーーーーーーーーーーシュウーーーーー...
ブルーの光を打ち破り、次々と攻撃機が二体の兵曹へ向かう。
100機を超える数だ。
無人攻撃機だ。
研究施設としては、要塞なみの軍事力。
...キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
二体は、ジェットタービンのような回転音を更に高める。
二体の周りには緑色の光の膜ができる。
防御シールドだ。
...キュイーーー...ズドーーーーーーーーーン...ズドーーーーーーーーーン...ドーーーーン...キュイーーーーーー...キュイーーーーーーン...ズドーーーーン...ドドーーーーーン...
攻撃機は、二体に近づくことが出来ない。
防御シールドの発する強いエネルギーの渦によって、次々と砂丘に激突し爆発していく。
ほんの数秒の間に...。
砲台からの射撃が二体を纏うシールドに弾かれる。
...ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴーーーーー......ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴーーーーー......ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴーーーーー......ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴーーーーー......ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴーーーーー...
防護壁の手前の地面が傾斜する。
...ザッザッザッザッザッザッザッザッ...ザッザッザッザッザッザッザッザッ...ザッザッザッザッザッザッザッザッ...ザッザッザッザッザッザッザッザッ...ザッザッザッザッザッザッザッザッ...ザッザッザッザッザッザッザッザッ
整列したアンドロイドが行進しながら地上に現れる。
数百体いる。
女性型アンドロイド レティーナ•ダイアルタイルだ。
ダイアルタイルは、若くして亡くなった、ニシノの娘ユキナを模って作られた。
ダイアルタイルは、世界最強のアンドロイドだ。
アトラやアマルで一般的な、戦闘用アンドロイドGM10バラクターの戦闘力を、遥かに上回る。
施設の防御は堅い。
...ボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボウ...
銀色の兵曹の、放電翼が青白い光を発している。
...キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
...キュワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
兵曹の黄色い目が燦然と輝き始める。
粒子砲だ。
施設の鉄壁な防御は、今まで、ありとあらゆる政治的圧力、反社会勢力を完璧に退けてきた。
バグー軍を退けたこともある。
しかし、今回ばかりは違う。
...
...
...ズッドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
軍事兵曹からから発せられたたった一回の砲撃。
317体のダイアルタイル(アンドロイド)を粉々に吹き飛ばした。
...キュワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...ズッドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
...キュワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...ズッドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
...キュワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...ズッドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
シールド、防護壁...。
まるで役に立たない。
チョコレートのように溶け、ガラスのように砕け散る。
...キュワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...ズッドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...キュワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...ズッドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...キュワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...ズッドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
軍事兵曹は、施設のシンボルを次々と破壊する。
...キュワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...ズッドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...キュワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...ズッドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...キュワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...ズッドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
軍事兵曹達が、施設に近づく。
ゆっくりと。
砲撃は、全てのシールドを吹き飛ばし、全ての防護壁を破壊した。
圧倒的な火力の前に、タルカンドの要塞は風前の灯だ。