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妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四節 恙虫
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帰って来た龍華さん

「ここ……は?」


 眼を開く。

 脳裏には自身を慕ってくれていた人物が死ぬ姿が焼き付いていた。

 生きていればよくあることだ。


「そうか。私は、敗北したか」


 彼女には悪い事をした。

 だが、仕方の無いことではあった。

 敵が一枚上手だったのである。それだけのことだ。


「さて、有伽はどうなったか。ここは……妖タワーか。周囲には誰もいないな」


 記憶では黴に呑まれたところで異世界召喚されたのを覚えている。

 先程までントロという召喚された者同士の闘いに巻き込まれていたのだ。

 一先ずこの妖タワーを探索してみるか、と龍華は歩きだす。


 最初に屋上まで向かい、誰も居なかったので下へと降りる。

 しかし一階まで来ても誰も生存者はおらずもぬけの殻だった。

 キープアウトの帯を潜って外に出る。


「どうやら、既に事件は終わった後らしいな。戻ってくるにしても時間が経過していたか」


 面倒だな。そう思いながら有伽の家へと戻る。

 どうも深夜を過ぎてしまったらしい。暗がりの中部屋に戻ると、何故かそこには有伽ではなく常塚秋里がいた。

 何らかの事件があったようでここにもキープアウトの黄色いテープが張り巡らされていた。


「あら、龍華さん」


「チッ、間が悪かったか」


 嫌そうな顔で舌打ちし、踵を返しそうになった龍華を秋里は慌てて呼びとめる。


「待って! 高梨さんを、助けてあげて」


 尋常ではない様子に立ち止まる。


「……何が、あった?」


「ええ、それが……」


 龍華は話を聞いて眼を丸くする。

 高梨有伽は指名手配されていた。

 それもただの指名手配じゃない。


 当時の係長を殺し、指名手配されるのだと逆上し父親を殺し、逃走している極悪犯として指名手配されたのだ。つい、先程である。

 あり得ない話に唖然としてしまった。

 当然だ。秋里の話ではラボにより父親が殺されたらしい。

 飛行機のチケットは渡したが嫌な予感がするのだとか。

 ルートを確認するなり龍華は飛び出した。


「動いたかラボめ。しかし、係長と言えば白滝柳宮のはずだが、有伽が奴を殺した? 有りえん話だな。真奈香も死んだ? 私の居ない間に何がどうしてこうなる……」


 ントロ戦争でぴんぴんとしていた真奈香を見ただけに胸が締め付けられる思いだった。

 真奈香も柳宮も無事に、いや、確かあの黴騒動の時に二人はデートしていた。あの頃に呼び出されたのならば、成る程、こうなる前の状態に出会っていたのだな。と一人納得するのだった。




 翌日。龍華は己が役目を果たし終えて路上のテレビを見つめていた。

 秋里から連絡が来て、本日、高梨有伽を乗せた飛行機が飛行中大爆発を起こし海の藻屑になったらしいのだ。テレビでも大々的に放映されており、死者300名程とニュースキャスターが悲痛そうな顔で告げている。


 奴は逃げ切ったつもりで死んだらしい。

 本当に死んだのかどうかは分からない。だが、もしも生きているのなら、更なる追撃が始まるのだろう。


「あんたか、高梨先輩の助っ人してた女は」


 不意に龍華の元へ男がやってくる。


「お前は……グレネーダーの職員か?」


「おうよ。琴村騨雄。抹殺対応種処理班の期待の新人っつー奴だ」


 抹殺対応種処理班。その言葉に思わず唸る。これは僥倖か。しかし、敵である可能性は捨てきれない。


「有伽の後釜か……」


 思わず呟いた言葉に、騨雄が猛反応する。

 即座に龍華の襟元を掴み上げ、引き寄せる。


「あんたっ、先輩の味方か?」


「だったら、なんだ」


「頼む、あの人が生きてるか知りたい。教えてくれ、あの人は無事逃げられたのか!?」


 ビンゴだ。

 龍華は思わずほくそ笑みそうになった。


「それはこちらが聞きたいところだ。私が居ない間に起こったことが聞きたい。情報交換と行かないか?」


「……あ、ああ。そうだな。悪い」


 冷静に応えたことで相手も我に返ったようで、腕を離して龍華の拘束を解く。


「それで、あんたは?」


「そうか、私のことも知らされていないなら狗の可能性はなさそうだな。初めまして琴村騨雄。私の名は聖龍華。高梨有伽としばし一緒に暮らしていた者だ。妖タワー事件のおり逸れてな。そこからは音信不通だ」


「先輩と一緒に……そうか、じゃあ小林さんたちにも連絡を」


「待て。下手な奴を呼ぶとマズい。狗が混じっている可能性がある」


「狗……もしかして先輩が呟いてたっていう研究所?」


「ほぅそこまで知っているなら話は早いな」


「……数人、呼ぶがいいか。知りたいって奴が何人かいる。狗の可能性がある奴は?」


「濃厚なのは志倉翼だな。それと仲の良い者は狗の可能性は高いだろう」


「……マジか。いや、分かった。なら小林さんと黛さんはやめとくか」


「黛? 黛真由か。復帰したのか」


「え? あ、ああ。色々変わってると思うぞ。先輩の師匠の従妹もいるし。後で紹介するぜ」


「……ふむ。何やら少し留守にしただけでいろいろとややこしくなったようだな」


 顎に手を当て龍華は唸る。歯車は既に軋みながら動き出していることに彼女もまた気付くのだった。

妖少女Ⅱ開始しました。

https://ncode.syosetu.com/n4007ft/

にて連載開始中です。

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