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素敵なクリスマス会なんてやってられないよ




クリスマス会の日取りも決まって、クリスマスツリーも会場に運んだ。会場内の飾りつけも順調に進んでいる。料理の食材も揃ったし、あとはプレゼント交換に使うプレゼントだけだ。

これに関しては各自持ち寄ってもらうよう呼びかけるだけだ。そして自分で出す物はもう決まっている。


「兄様よう。俺っち思うんだけどよ。なんか、忘れてるような気がすんだ。こう、あれだ。クリスマスっつったらアレ、てくらい大事なアレ」


どこかしっくりしないといった風の董戎(とうじゅう)。なんの事だろう。必要なものは全部揃ったはずだけど。まだ何か足りない物があるだろうか。


「ところで、プレゼントはどうやって交換するんや?」


「そうか、それだよ。李霊(りれい)。僕としたことがそれを忘れていた。クリスマス会といえば、ビンゴ。ビンゴ大会だ。プレゼント交換はビンゴで抜けた者から受け取るようにしなきゃな。あと、進行役の司会者も要るな」


「そうか、それか。なんかしっとり来ねえけど、きっとそれだ。司会なら、面白いオッサンがいるぜ。俺っちがいつか長安に入れねえで困ってたところを助けてくれた、董旻(とうびん)とかいうオッサンなんだけど、その後も世話になったんだぜ」


僕が奴隷にされて長安に連れていかれた時、彼も旧都にいた。その時の話をしているのだろう。


「董旻(とうびん)って、大叔父様だろう。将軍だぞ。そう簡単に来てくれないだろ」


「お祭りごと大好だっつってたから、多分大丈夫だろ。俺っちに任せてくれ」


ビンゴ大会で使う紙が要る。これはまたマサイに頼る事になる。ビンゴマシーンはどうにか手作りするしかないだろう。羊聖(ようせい)と李霊(りれい)にも手伝ってもらうか。この期に及んで忙しくなってきた。クリスマス会まではあと二日だって言うのに。


「これはどういうこと? もう準備できちゃってんじゃん」


そうだろうそうだろう。一生懸命お前の為に準備をしたんだ。想いっきり喜んでもらわないと割に合わない。


「忙しそうだったし、僕らで会場の準備も全部進めさせてもらったよ」


「しかも、なにこのクソ広い会場。いったい何人呼んだん?」


クリスマス会開始直前。会場を眺めてなぜか不機嫌そうな董白(とうはく)。何か気に入らない事でもあったのだろうか。


「え~と、いつもお世話になっている屋敷の人達と、将軍が声をかけた人たちと……」


「ふ~ん。ま、いっか。ちょい思ってたんと違うけど、気持ちは買ってあげるよ。あんがと」


いつも通り軽い感謝の意を述べると、会場内を物色しに行った。思っていたクリスマス会と何が違ったのだろう。


釈然としない気持ちはあったが、ついにクリスマス会当日となった。


「れでぇーす、アンド、ジャントルメン。今宵はお寒い中、このくりすます会へようこそお越し下さいました。私、当会の司会を仰せつかりました董旻(とうびん)と申しまーす。どうぞ。ヨロシク。くりすますとは、聖なるお祭り。聖人の誕生日をお祝いする日です。皆さんと一緒にこの聖なる会を行えることを幸せに思います。では、まずこの会の発起人である令嬢、董白(とうはく)嬢より。開会の挨拶をどうぞ~」


会場に設えた舞台で司会を務めるのは、董旻(とうびん)。董卓(とうたく)の弟。つまり、僕らの大叔父にあたる。あれでも歴とした中央の将軍である。董戎(とうじゅう)が連れてきた面白いオッサンとは彼の事だった。二つ返事で引き受けたので、カンペを渡してやってもらうことにした。

これがなかなか、アドリブも入れながら上手い司会進行をやってくれた。


壇上には綺麗な中華風のドレスを着て着飾る董白(とうはく)がいる。髪を上げて両側で束ね、飾りを挟んで下ろしている。もともと美しい顔立ちだったが、今日は格別であるように感じた。こうして眺めていると儚げに咲く花のようでもある。ちなみにいつもの黒く塗り上げたメイクは封印しているのでまるで別人だ。しかし、一度口を開けば、そんな幻想は滅んで消えてしまうのだけれど。


「こんなに楽しいパーティーは初めてや。むしろ、パーティー自体が初めてなんやけど。このパーティーは最高やと、私は確信してるで」


「す、すごい、です。こんなに美味しい料理。この世に存在するなんて驚きです。あ、あのケーキ、ですか? 食べると、く、口の中が幸せで気を失いそうになってしまいましたよ、よ。私、とってもしわわせですよ。よ」


なぜか男装の李霊(りれい)と可愛らしい赤と白のフワフワを付けた衣装を纏った羊聖(ようせい)とがやってくる。羊聖(ようせい)は本当にケーキを食べて気絶したのか、口の周りにベッタリとクリームを残している。


「二人とも可愛いね。すごく良く似合っているよ」


「か、か、可愛いやて。そんな訳ないやん。田舎もんやと思ってからかわんといて。アホちゃうか」


「そうですよ。よ。奴隷に可愛いなんて言う人には気をつけなさいって、昔お姉さんも言ってましたよ。よ」


素直に褒めたのになぜかご不興を買ってしまったようだった。オッサンになっても女子の心は分からないな。いや、それは僕がオタだったからだろうか。


「兄様。大盛況じゃねえか。あのオッサンもやっぱ面白れぇ。料理も最高に美味いし、こりゃ最高のクリスマス会……。うん?」


「どうした、急にぼうっとして」


「なあ兄様、俺っち達はでっかい考え違いをしているんじゃねえか。クリスマス会っていやあ、真夜中に家に忍び込んで大人が子供にいたずらしながらお菓子を配るんじゃあねえのか?」


「そんななやべえ行事知らないよ。何かとごっちゃになってるよ」






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