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不滅じゃないなんてやってられないよ



結局、波柔(はじゅう)は死んだ。

しかたないので彼の焼けてしまった家の庭に埋めてやった。

哪吒 (なた)は僕に転生者は不滅の存在だと言った。なのに、彼は死んだまま蘇えらなかった。哪吒 (なた)が嘘をついていたんだろうか。でも、僕は実際に二度も生き返っている。それが嘘であるはずがない。ということは、まだ僕が知らないルールが何かあるということか。考えてみても結局わからなかった。


「いや、まいったよ。なんでこんな事になってるんだ?」


「そんなのこっちだって分からない。なんで霊体なんだよ」


夜になって商会の雑務をようやく終えた僕がそろそろ横になろうかと部屋の明かりを消したところ、何かただならない雰囲気を感じて目を開けた。

そしてそこに、昨日埋葬したはずの波柔(はじゅう)の顔が逆さに浮かんでいるのを発見したのだ。

思わず夜中に叫んでしまい、「うるさいぞ」と隣室の誰かに怒鳴られる。


「いや、僕だってよく分からない。気がつくとこうなってたんだよ」


「そうか。では、神様には会ったかい?」


「なんだよ。神様って? そんなのいるわけないだろう。前世でも不遇だった僕はそんな物は信じていない。神様なんてモノが目の前に現れたら唾でも吐きかけてやるところだよ」


いや、神を信じないなんて幽霊に言われてもな。

僕は神様である哪吒 (なた)に教えられた転生者のことをかいつまんで波柔(はじゅう)に伝えた。


「ふうん。じゃあ、やっぱり神様なんて嘘つきなんだな。ますます信じられないね」


あ、そっち。存在を信じていないんじゃあなくて、信用できないという意味ね。うん、たしかに、今の状況は神様の言葉を裏切っている。


「じゃあさ、董真(とうしん)氏。今死んでみてよ。どういうことなのか神様に会って問い詰めてよ」


僕まで幽霊になってはたまらないので、もちろん断った。


「にゃあ」


部屋の隅に黒猫がうずくまっている。波柔(はじゅう)の使い魔だった猫だ。


「なあ、董真(とうしん)氏。お願いがあるんだ。彼女、ユリリンの面倒をみてやってくれないか?」


ユリリンというのは、あの黒猫の名前のようだ。そして、彼の好きだったアイドル、GON46の平間百合音ちゃんのあだ名がユリリンである。

霊になってしまった彼にはもう彼女の餌やりなどの面倒をみてやる事はできない。だから僕に代わりにやって欲しいということだ。


「代りと言ってはなんだけど、僕のスキル、『使い魔』と『水魔法』、『土魔法』をあげるよ。こうなってしまった今はもう魔法は使えないみたいだし」


「えっ。ほんとに? いいのかい?」


喉から手が出るほど欲しい。魔法。こちらの世界に生まれてこのかた10年ほど、僕がどれほどそれを望んでいたことか。それをあっさり手に入れる事ができるなんて。


「本当は、百合音ちゃんのグッズと交換にしたかったところだけど、こうなってはもう魔法にこだわっても仕方がないしね。それに、董真(とうしん)氏。どうせなら親友である君に使って欲しいんだ」


いつから親友にランクアップしたのかしら。まあ、それでも彼の言葉は心に響く物があった。つまり、ちょっと嬉しかった。


「なら、契約成立だな」


「ところで、どうやってスキル譲渡するんだい?」


そんな事ができるようなことを確かに哪吒 (なた)は言っていた。でもやり方までは聞いていない。


「それはなんとなく分かる。ユリリンに餌をやってくれ。あと、ブラッシングして寝床を作ってやってくれよ」


波柔(はじゅう)の意図はよく分からなかったが、言われたとおりにする。

店の売り上げから少しずつくすねていたお金や資材を入れた袋から、リンゴを出してやる。ちなみに、袋に入れておくと、品物の鮮度は入れた時点のものが保たれる。冷蔵庫いらずだ。

櫛などというぜいたく品は持ち合わせていないので、毛並みを整えるのは手櫛で我慢してもらう。猫の寝床は、商会の連中に見つからないようにこっそりと納屋へいって藁を寄せて作った。


「よし、これでいい」


なにがだよ。何がよしなのかは分からないけど、とりあえずは猫のお世話ができた。黒猫はすでに使い魔ではなく普通の猫に戻っているらしく、しゃべったりもしない。ただ満足そうに藁の寝床に収まって寝ている。


「では、初めは目をつぶってイメージを膨らませる方がいい。いわゆるイメトレだ。揺れる水面を思い浮かべてくれよ」


言われた通りにしてみる。そして、右手を前に出して拳を握る。拳の間から汗が滲み出るようにイメージをしていく。

そうすると、本物の汗なのか、水滴なのか分からない液体が右手から滲みだしてくるのを感じた。そのまま数分間集中し続けると右手から雫が一滴落ちて、地面にシミを作った。


「成功だね。『水魔法』スキルを譲渡できているよ」


契約を成立させた時に、彼の中で、スキルに違和感を覚えたということだった。自分のものではあるけれど、僅かに異物感を感じたんだそうだ。これは、僕と契約をしたことで、スキルが担保にとられたことによるのだろう。だから、猫の世話をさせることで、僕に契約を履行させた。その結果、僕にスキルが譲渡されたという事らしい。これが、僕が得た『契約』スキルの効果であるようだ。自分で確認ができないから、分かり難いな。いや、自分のステータスを『値踏み』で確認したら分かるのかな。

使用方法は難しいけど、これはかなり強力なスキルなんじゃないだろうか。スキル譲渡すら可能にしてしまうんだ。契約成立さえしてしまえば、なんだってできるのかもしれない。


「魔力が弱いね。初めてとはいえ、水がそれっぽっちしか出ないんじゃ使い物にならないかもしれない」


それからつつがなく、波柔(はじゅう)に教わった手順で、ユリリンを使い魔にすることができた。ただ、かなり時間がかかった。というのも、僕には【魔術師】の適正がないから、魔力も弱く、魔力量、すなわちマジックポイントも少ないのが原因だという。

しかし、そんな事はどうだっていい。僕は憧れの魔法使いになれた事に浮かれていた。





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