表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/17

素敵な手の人

グローブ空手の大会のルールは3分1ラウンド、防具ありで顔面攻撃あり、1ラウンドに2ノックダウンでKO。判定は3人のジャッジによるマストポイント制で引き分け延長は無かったはずです。

毎度毎度ですが、間違ってたらごめんなさい。


各階級8人参加のトーナメントでしたが、一日で決着が付くワンデイ方式ではありませんでした。

準備期間は2ヶ月ぐらいだったと思います。


会場はなんと武道館です。

私には一生縁のない場所だと思っていました。


そして今回は55kg級が無かったので、60kg級に出場です。

もちろん増量には失敗していました。格闘技ナメててすいません。


空手の試合という事で道着の着用が義務付けられていました。

なので会長に発注をかけてもらって、ジムのロゴ入りの道着を購入しました。

1万円くらいだったかな? 忘れました。


試合を想定して、支部で道着姿になった時に「どうしちゃったんですか?」と竹内さんにドン引きされました。本部でも道着姿で練習していましたね。


特に動き辛いという事は無かったですが、帯の縛り方がヘタクソだったので不格好だったと思います。


出場選手は私と山本さんだけでした。

山本さんは気合入っていましたが、私は週1か2で練習に参加してましたね。

仕事は相変わらず忙しかったし、サボリぐせも悪化していました。

明らかに練習不足です。


これで負けたら連敗という事はもちろん頭に入ってはいましたが、それでも練習に熱が入らないのが私と言う男です。

出場も自分から志願したわけでもなく、山本さんが出るからついでにどう? と会長に言われて「出ます」と答えてしまっただけです。


本当に格闘技ナメててすいません。


そして車ですが、今回は自分で運転して一人で行く事にしました。

なんとなくそうしたかっただけで深い理由はありません。

ドライブで疲れるだろうから前乗りしてから試合に臨もうと考えていました。


その事を辻倉さんに話したら「えっ、前乗りして何するつもりですか?」と言われました。

私は何を言っているのかサッパリわからなかったのでキョトンとしてしまいました。


「ばっかお前」と一緒にいた四谷さんが笑いだしました。

そして「もしかして風俗行くつもりじゃないですよね?」と辻倉さんが聞いてきた事で、ああなるほどと理解しました。そして大笑いしてしまいました。


「ダメですよ! 試合に集中してくださいよ!」


「行く気ないですよ。というかそんな考え浮かばなかったです」


「ウソッス! 絶対遊びに行くつもりですね!」


これはイジれると思った時の辻倉さんは容赦が無くて困ります。

四谷さんは笑ってるだけで助けてはくれませんでした。


「店はもう決めてるんスか?」


「だから行かないですって」


「いーや絶対ウソです! 完璧にリサーチ済みですね!」


私は酷い冤罪に笑いが止まりませんでした。

ちなみに後から聞いたのですが、誰かの応援に行く時に前乗りして風俗に行く、というのは多田さんがよくやる手口だったみたいです。中島さんもだったかな? 忘れてしまいました。


試合当日に武道館で合流した時は「何カップでしたか?」とか聞いてきましたが、イジりすぎたと思ったのか、最後は「すいません」と謝ってくれました。



※  ※  ※  ※



東京へ行くのは修学旅行以来でした。

長距離の移動だったので、時々パーキングエリアで仮眠を取りながらの道中でした。

ドライブの感想は「とにかく首都高が怖かった」です。

東京暮らしの経験がある中島さんに「なんでみんなあんなスピード出せるんですかね?」と聞いたら「あいつらみんな頭おかしいんですよ」と答えられました。


運転ドヘタクソな私は料金所の渋滞もめちゃくちゃ怖かったです。

帰り道は時間かかってもいいから絶対下の道使おうと心に決めました。

どこから高速に乗れば安全かも分からなかったので調べるのに苦労しました。


宿泊場所は武道館の近くのホテルで会長が紹介してくれました。

会長まで「遊ぶ気だったんならもっと良い所があったからそっちを紹介したのに」とマジな顔で言われてしまいました。

辻倉この野郎...


ホテルに到着した私がまずしたのはアダルトチャンネルの課金...ではなく、会長に到着の連絡を入れることでした。

「無事到着しました」と言う内容のラ〇ンだったと思います。


それからは特にする事も無かったので、ホテル周辺の散歩をしました。

武道館へのルート確認もしましたが、徒歩だったか車でだったかは忘れました。


ホテルは夕食無しで朝食のみだったのでコンビニでおにぎり買って食べました。

家を出る時計った体重は54kgだったので、何喰っても重量オーバーにはならないのですが、小食なのでおにぎり一個で十分でした。

ゲン担ぎにかつ丼でも食べておけば良かったですかね?


こっそり近くに風俗店が無いか探したのは内緒です。

ピンサロがありましたが、行くのはやめておきました。



※  ※  ※  ※



試合当日の朝になりました。

睡眠も問題なく取る事が出来ました。

私はリラックスするために風呂に入り、朝食も普通に食べました。

試合の緊張で味しなかったとかウソ書きたいところですが我慢しておきます。

そういえば試合しに来たんだっけ、とか惚けた事を考えていた気がします。


これ読んでるかもしれない減量苦の経験がある格闘家の皆さん、重ね重ね格闘技ナメ太郎ですいません。


そして武道館に向かい、出入り口で待っていた会員達と合流しました。

会長、辻倉さん、中島さんと出場選手である山本さんという顔ぶれでした。

みんなは早朝に出発して当日に現地入りしたようです。


「何カップでしたか?」攻撃を受けたのもこの時です。


苦笑いで攻撃を凌ぎながら、全員揃ったという事で武道館に入場です。


関係者の待機場所は体育館みたいな場所でした。

かなりの大きさに圧倒されました。

ですが「武道館来ちゃった」という感動は全然ありませんでした。

今でも武道館で試合した事実が夢のように感じられます。


計量は会場の方で行われました。

体重は52kgでした。2㎏がどこかへ行ってしまいました。

スタッフからは「絞ってますね」と言われましたが「これが普通なんですよ」と返しておきました。


その後は各階級ごとに1列に整列して待機する事になりました。

私は体重や年齢と言ったデータが記入された用紙を見られたくなかったので伏せて置いていました。


そこへ「すいません60kgの列ここですか?」と尋ねてきた人がいたので「そうですよ」と答えたら、真後ろに座られました。

対戦カード順に並んでいたので一発で今日の相手だと気が付きました。


身長は私より少し高く、歳は私より上に見えましたが、ふと見えた手は拳ダコでいっぱいでした。

なので今回の相手は『拳ダコ』と呼ぶことにします。


(絶対に強い!)


そう感じて、私は急に焦り出しました。

そしてガラにもなく、なんとかやる気を出そうとして、座ったままシャドーボクシングを始めました。

相手が伏せてあった用紙をガン見してきたのもプレッシャーを感じました。


2連敗の文字が頭をよぎり、ますます不安になる心をなんとか奮い立たせようと努めましたが、日ごろの練習量の少なさから自信なんて湧いてくるはずもありません。


その後の事はよく憶えていません。

ルールの説明とかがあった気がしますが忘れてしまいました。

途中、辻倉さんが「どうスか? 調子は?」と聞いてきたので「緊張してます」と答えた気がします。


解散後はイベント開始まで体育館の方に戻されました。

私は持ってきていた精神を高揚させる効果のあるサプリメントを飲みました。

ドーピングになるモノでは無かったはずです。


その効果があったのかどうかは不明ですが、わずかに試合に臨む勇気は沸いてきました。

しかし私の表情は死んでいたみたいで...


「マエカワさん元気ないんでちょっとイライラさせていいッスか?」


と、辻倉さんなりの激励をされました。

以前に「イライラしていた方が強い」と言われたのを思い出しましたが「勘弁してくださいよ」と断っておきました。


この時「負けるかもしれない」と諦めモードにならなかったのは今思い返しても不思議です。

2連敗して応援に来てくれた会員達をガッカリさせたくないという気持ちがあったのかもしれませんが、これは後からの予想なので、当時どんなメンタルでいたのかは不明です。


「負けたくないな」


練習不足、増量失敗、マイナス要素なんて腐るほどありましたが、生意気にもツギハギだらけの闘志を燃やす格闘技ナメ太郎な私でした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ