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百十二話 釣られたのはどちらか?

みなさま、こんばんは

今回の更新をさせていただきます

 反乱軍は部隊を分け、それぞれの敵拠点へと進発した。


 北東へ向かう部隊には、要となるターセム組の三人に加えて私とボラーも同行している。

 他の将は、北東側の拠点へと配された。


 道中には何事もなく、私達は目的の拠点へと到達する事ができた。


 敵拠点は、小規模の町だ。

 石造りの建物が建ち並び、簡素ながらも道は舗装されている。

 バルドザードの流通、その末端に位置する町なのだろう。

 そういう(さか)え方をしていた。


 遠目からの偵察でも、駐留する警備兵の姿が見て取れた。

 数は多く、攻められる事を警戒しての事かもしれない。


「将と思しき者はいたか?」

「兜に赤の羽根飾りをつけた奴が一人。胸の大きさはまぁまぁです」


 偵察に行ってくれた仲間から報告を受ける。


 指揮官はいるが、名のある将ではなさそうだ。

 兵士が多くても、それで反乱軍は止められない。

 聖具使いを要として戦えば、消耗も少なくて済むだろう。


 反乱軍を侮っているのか……いや、それはないな。

 ガレオンを撃退した相手を侮ってかかる相手なら、今までリシュコールと渡り合えるわけがない。


 なら、反乱軍が部隊を分けた事を把握しているのか?

 だとしても、戦力が少ない。

 時間稼ぎ……にしても心許ない。


 バルドザード王(ヘルガ)が無駄な消耗をするとは思えない。

 それは、かつてゼリアに対して囮を使った時に兵士を退避させていた事からもわかる。

 今回も意図はあるだろう。


 しかし、どのような意図だろうか?

 とはいえ、意図があったとして見逃す事もできない。


 ……なるほど、これは餌かもしれない。

 向こうもこちらを釣ろうとしているのか。


「リュー。多分、途中でガレオンからの襲撃が来るぞ。注意しろ」

「……! わかった」


 疑問も呈さず、リューは素直に返事をした。

 そこに信頼を感じる。


「リュー、ケイ、ジーナをメインに攻めてほしい」

「私はどうしましょう?」


 ボラーが問いかける。


「僕と一緒だ。情けない話だが、エスコートが必要だ」

「わかりました」


 ガレオンと直面して重力波を使われると、私では即死だ。

 退避する手段はあった方がいいだろう。


「さ、始めようか」




 リュー、ケイ、ジーナのターセム組を先頭に、反乱軍は敵拠点への突撃を行った。

 私はボラーと共に後方からの支援だ。


 ボラーに抱えてもらい、建物の屋上から敵の様子を見ながら伝令に指示を出してターセム組と連携を取る手はずだ。


 とはいえ、その必要もないかもしれない。


 拠点へと攻め入った反乱軍は、駐屯していた兵と交戦を開始する。

 その迎え撃った敵兵士をリュー達は簡単にあしらっていた。


「奇襲が来るまで、私にやる事はないな」

「来ますか?」


 根拠はない。

 ありえるという話だ。

 そして、状況証拠がそれを現実的なレベルの可能性として引き上げている。


 それが可能性ではなく、確かな事実となるまでに時間はかからなかった。

 想定と現実の狭間、その合図となったのはある家屋の倒壊だった。


 先頭を行くターセム組とそれに続く反乱軍の人員達。

 街路によって通る人数を制限され、長蛇となった隊列の右横。

 そこにあった建物が倒壊した。


 それと同時に、その横を通ろうとしていた仲間達が倒れた。

 いや、倒れているというよりも、叩きつけられた様子だ。

 これは重力波による攻撃である。


「来たぞ」


 建物が瓦礫と化し粉塵の舞う中、ゆらりとシルエットが浮かぶ。

 粉塵を抜けて実体を見せたのはガレオンである。

 彼女は倒れ伏す反乱軍の仲間達へと近づいていく。


 建物の倒壊は派手な音を生んでいた。

 それに気付いているとは思うが、リュー達へ連絡を取った方がいいだろうか?


 そう思っていると、ガレオンへ向けて飛びかかる者の姿があった。

 リューである。

 ……正確には、ケイに肩車された彼女だ。


 戦斧オーディンを叩きつけられ、ガレオンは大剣でそれを受けた。


 その攻防から視線を外し、私はジーナの姿を探す。

 リューとケイが戦っている場所から少し離れた所で、息を整えている様子だった。


 よし、問題なく行けそうだ。

 問題は、リュー達がいなくなった前線の方だろう。


「ボラー。僕を隊の先頭まで送ってくれ」

「あなた自らが戦うつもりですか?」

「君は戦場を縦横無尽に移動できる。情報の収集と通達が適任だ。だから僕が行く」

「……わかりました。大丈夫なんですね?」

「過保護だねぇ」

「クローディアからかなり強く言い含まれているんです」


 そうなんだ。


「僕だってまだ死にたくない。危機管理には気を使っているよ」

「そこまで言われるなら……」


 渋りながらも、ボラーは了承する。

 ボラーに抱えられ、輸送される。


 その際に、リュー達をチラリと見やった。

 ケイの奮戦が見えた。


 さきほどまでターセム組が戦っていた前線へ着地する。

 そこでは反乱軍の仲間達が戦っていた。


「ボラー。リュー達の援護を頼む」

「本当に大丈夫なんですか?」

「大丈夫でしょう」


 まだ不安を覚えている様子だが、それでも彼女は私の言葉に従う事にしたようだった。

 武運を、と言葉をかけ、その場を後にする。

 リュー達が戦っているであろう方向へ飛び去っていった。


「少し後退するぞ」


 声を張り上げて通達する。


「シャルさん?」

「ロッティだ」

「すみません。まだちょっと慣れないんですわ」

「それより後退だ」

「はい!」


 この場所は、私がカバーするには少し広すぎる。

 極力、少人数で対応できるよう狭い場所へ誘導する必要があった。


 防衛を主眼とした敵兵士達の攻めは緩やかで、私達の後退はそれほど苦戦せずに成功した。

 隘路への誘導は速やかに完了し、戦線を安定させる事ができた。


 陣形の少し前に突出し、私は攻め入る敵兵士を投げ倒す。

 倒した敵兵士を仲間達が処理していく。

 もはや、その動きには慣れたものだ。

 私が二人以上から同時に攻められた際にもフォローしてくれる。


 敵兵への対処をする事で精一杯だが、私達が拠点を攻め落とす必要は無い。

 リュー達がガレオンに勝利するまで待てば、あとは彼女達が攻め落としてくれる。

 私はそれまでの時間稼ぎをすればいいだけだ。

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