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奥州騒乱(2)

 

 承安5年(1175年)5月 陸奥国


 北上川に沿って平泉を目指し、南下を始めたあたりで妙な一団と遭遇した。

 身分のありそうな者が乗った幾つかの輿を300ほどの手勢が護衛しており、その後には荷車が続いている。


「捕らえるぞ。」


 城資永が騎馬の武士団を率いて飛び出していく。


 こちらの存在に気付いたのか、対する一団に動揺が見られた。逃走しようとする者がいる一方で、急いで貴人の周りを固めようとする者もいる。その中の50騎ほどが小柄な騎馬武者に率いられて、こちらに向かって動き出した。


 城資永の手勢とその一団がぶつかったとき、信じられないことが起こった。兵数の差もありひと当たりして撃破できるかと思っていたところ、半数ほどは一撃で崩れたが、もう半分はどこを抜けたのか、するすると資永勢の騎馬をかいくぐり、先頭を駆ける小柄な騎馬武者が資永に近づいたと思うと、すれ違いざまに資永の騎馬に飛び移り、資永を斬りすてた。


 資永勢に一瞬の動揺がはしったが、直ちに敵を包囲し、次々と討ち取っていくが、肝心の小柄な騎馬武者はその包囲すらくぐり抜け、こちらに馬首を向けて疾駆して迫った。


槍衾やりぶすま!」


 すぐさま騎馬武者の進路に槍衾を展開。しかし、騎馬武者は槍衾の直前で馬を踏み台にして跳び、槍衾を越え、遂に僕の眼前に迫り、太刀を振るった。


 対する僕は、相手が太刀を振るう直前に幽世かくりょに移動。背後をとって槍を突き刺す。

 振り向いた相手が物凄い形相でこちらをにらむが、そこに突破された長槍隊が駆けつけ、次々と槍を突き刺した時点で遂に力尽き倒れた。


 「資永はっ!」


 僕に問われた武者が無念そうな表情で首を横に振る。ゆくゆくは軍団長を任せる将になる男だったのに・・・。


 資永を斬った騎馬武者の遺体を見ると年端もいかない若武者だった。


 後に投降した者に確認させたところ、源義経だと判明した。今回が初陣だったらしいがとんでもない実力だった。

 だがこれで平氏の懸案事項の1つが解消した。


 その後は、大した抵抗もなく一団の者を捕らえ、身元を確認すると何と藤原秀衡とその近臣、家族とのこと。

 縄を打って、当初の予定通り平泉を目指した。



 -平泉


「・・・焼け野原だな。」


 平泉に着くと、一面焼け野原になっていた。ちょうど基盛と知盛も到着しており、後始末を開始している。

 僕の隣ではすっかり変わってしまった平泉の様相を見た秀衡が膝をついて崩れ落ちている。


「そなたが逃亡する際に火を放ったのではないのか?」


 僕が問うと秀衡はかぶりを振った。


「どうも藤原泰衡が火を放ったようだぜ。」


 僕の到着に気付いた知盛がやって来て、平泉焼失の犯人を告げた。

 余計なことをしてくれたものだ。この経済的損失は大きい。これで秀衡と泰衡を赦免するという選択肢がなくなった。


「で、泰衡はどうした?」


 聞くと、泰衡は既に捕らえているとのこと。平泉焼失を見て戦意を喪失した家臣が泰衡を捕らえ、差し出してきたらしい。


 思わぬ損失に頭が痛いが、とりあえず奥州討伐は終了した。


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― 新着の感想 ―
[一言] 貴重な東北ホトケーランドが… 覚悟はしてたけどやっぱつれえわ…
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