平氏の一大イベントに遅刻した
永万元年(1165年)9月
こんにちは平重盛です。
六条天皇が即位されました。
二条上皇の子で、後白河上皇の孫にあたる。
六条天皇が即位したことで満足したのか、二条天皇はその月のうちに崩御された。生きていれば清盛パパと良い関係が築けたと思う。
平氏としても残念なことだ。
でも清盛パパは、なにやらもう動き出している。
どうやら滋子さんが産んだ子を次の帝にすべく工作しはじめているらしい。
ということを写経中の宗盛に教えてもらった。
「で、何で写経をしているのかな。宗盛くん。」
宗盛はきょとんとした顔で僕を見た。
「何って、厳島神社に平氏みんなで納めるから、1人1巻ずつ写経するようにって、父上から言われているでしょう?」
・・・すみません。初耳です。
聞けば、昨年から取組みだしたとのこと。
これって、もしかして、かの有名な平家納経?
マズいじゃないですか!
どうして僕だけ知らされてないのっ!
「兄上は越前に下向したり、蓮華王院の建設を差配したりと、何かと急がしそうだから、声をかける間がなかったのでは?」
冷静な意見をありがとう、宗盛くん。でも僕は今、平氏の一大イベントに遅刻した気分です。
「ところで宗盛、気になったことがあるんだけど。」
「何ですか?」
「どうして神社に仏教典を納めるんだい?」
「・・・神社に仏教典を納めたらおかしいですか?」
今度は怪訝な顔をされてしまった。
あれ? また何か常識からはずれたことを言ってしまいましたか。
「だって、厳島神社には多宝塔や五重塔だってあるでしょう。ご本尊に弁財天や観世音菩薩だってあるでしょう。何かおかしいですか?」
つまり、神も仏も混在しているということですか。
「じゃあ、もう1つ聞くけど。平氏って真言宗だよね。どうして法華経の写経をしているのさ?」
「・・・父上が大の法華経好きだからでしょう。」
清盛パパ・・・たぶん、信心深さで納経するんじゃないな、これ。厳島神社に好みの巫女でもいて、納経をせがまれたな。
まったく、あの人ときたら!
宗盛くんの横にどんと座って、僕も書き始める。
写経なんてもんじゃない。既にチート知識で仏教典はたいていマスターしている。何も見ずとも書くことができるのだ。
法華経なんて書いてやるもんか。般若心経でも納めてやるっ!
後日、叔父の頼盛殿から、平家納経は昨年亡くなった池禅尼の供養のためでもあると聞いた。頼盛殿は池禅尼の実の子だから、平家納経には積極的に関わっている。
そういえば納経される法華経には女性の解脱がテーマになっていたもんね。
悪いことしたかなあ。少し反省した。




