表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
眠るたび異世界の少女と入れ替わる服飾学生は、滅びかけた都を繕う  作者: 魔法使いアリッサ
第4章 魔法の図書館と調律鏡

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/46

⑤レイナの記憶


 鐘の音がした。

 遠くで、何度も。

 重く、濁った音だった。

 花凛は目を開けた。

 

 そこは館だった。

 けれど、今まで見た館とは少し違う。

 壁の色が暗い。廊下が長い。窓が高い。

 すべてが少しずつ歪んでいる。

 

 自分の足が、細い靴を履いているのが見えた。

 これは、私の足じゃない。

 そう思った途端、胸の奥に知らない感情が流れ込んできた。

 

 怖い。

 悔しい。

 逃げたい。

 

 でも、逃げたら終わりだ。

 花凛は息を詰めた。

 

 これは、レイナの記憶だ。

 廊下の先に、人影がある。

 誰かが話している。

 

 声は水の中から聞こえるみたいにぼやけていた。

 

「……あの子が……」

 

「境界が……」

 

「アリッサ様の……」

 

 言葉の端だけが耳に残る。

 レイナは、壁際に立っていた。

 いや、花凛が立っているのではない。

 

 これはレイナの目だ。

 レイナの身体だ。

 レイナの記憶だ。

 

 誰かが近づいてくる。

 顔は見えない。

 

 ただ、胸元のブローチだけが見えた。

 黒い花の形をしている。

 

「あなたは、何も知らなくていい」

 

 その声が言った。

 レイナの手が震えた。

 

「知らないままでいれば、守られます」

 

 守られる。

 その言葉に、レイナの中で何かがきしんだ。

 違う。

 これは守るじゃない。

 閉じ込めるだ。

 

「私は……」

 

 レイナの声がした。

 花凛の声ではない。

 少し硬く、細く、それでも折れない声。

 

「私は、知らないままでいるのは嫌です」

 

 次の瞬間、鐘の音が大きくなった。

 廊下が崩れる。

 壁が遠ざかる。

 本のページがめくれるように、景色が変わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ