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眠るたび異世界の少女と入れ替わる服飾学生は、滅びかけた都を繕う  作者: 魔法使いアリッサ
第三章 眠りの先の魔法用具店

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⑤ 幼馴染

中の人の理想の恋人のペルソナの勇気くん(なげえよが登場です。


暖かく見守ってやってください


翌日、蒼が何気ない顔で言った。


「今日さ、幼馴染が来る」


「幼馴染?」


「うん。勇気。こっちに用事があるらしくて、少し寄るって」


勇気。


その名前を聞いた瞬間、花凛の胸の奥で何かが引っかかった。理由は分からない。でも確かに、何かが反応した。アリッサの店のルカを思い出した。静かな目。遠い場所を見ているような視線。


「どんな人?」


「いい奴だよ。静かで、変に鋭い。植物とか虫とか、そういうの好きでさ」


「へえ」


「あと、妙にモテる」


「蒼くんが言うと説得力あるのかないのか分かんない」


「あるだろ」


蒼が笑う。そのとき、チャイムが鳴った。

玄関に立っていたのは、背の高い青年だった。

金色の髪を後ろで軽く束ねている。


整った顔立ち。けれど、派手さよりも静けさの方が先に来る人だった。


「久しぶり、蒼」


「おう。入れよ」


勇気は花凛を見ると、柔らかく会釈した。


「はじめまして。勇気です」


「花凛です」


声を聞いた瞬間、花凛は少しだけ眉を寄せそうになった。どこかで聞いたことがある。

いや、違う。似ているのは声ではない。

間の取り方。視線の置き方。相手との距離。


ルカ。


その名前が胸に浮かんで、すぐに消えた。


まさか、と思う。

勇気は穏やかに話した。

蒼とは古い付き合いらしい。

昔の話をしているときの二人は、

少しだけ幼く見えた。


けれど会話の途中で、勇気の目がふと遠くなる瞬間があった。一瞬だけ、ここではないどこかを見ている。花凛は何度かそれを見た。


「最近、探してる人がいるんだ」


勇気が、何でもないことのように言った。


「まだ探してるのか」


「うん」


「名前、なんだっけ」


勇気は少しだけ沈黙した。


「愛菜」


その名前が落ちた瞬間、

花凛の胸の奥がかすかに鳴った。


愛菜。アリッサ。似ているわけじゃない。

でも、遠くで同じ鐘が鳴った気がした。


「大事な人?」


「うん。たぶん、僕が思っているよりずっと。出会ったときから、そうだったんだと思う。でも気づくのが遅かった。気づいたときには、もうどこかへ行ってしまっていた」


その言い方が静かすぎて、

花凛はそれ以上聞けなかった。


勇気の視線が、ふと花凛の右手に落ちる。

「それ」 


「指輪。少し、変わってるね」


「あ、これは……お守りみたいなものです」


「綺麗だね。瓶みたいだ」


「はい」


「中に、何か入ってる?」


勇気の声は穏やかだった。


でも、観察する目だった。


植物の葉脈を見るような目。 


花凛は指輪を見下ろす。

淡い紫色の光が、小さく揺れた気がした。 


「……たぶん、願いです」 


けれど勇気は笑わなかった。


「いいね」 


ただ、そう言った。

本当にそう思っている声だった。



勇気が「そろそろ」と立ち上がった。


蒼が「送ってく」と玄関へ向かう。

花凛もつられて立ち上がった。


玄関で靴を履きながら、

勇気は花凛の方をちらりと見た。 


「その指輪、なんか……」


少しだけ首を傾げる。


「いや、なんでもない。気のせいかな」


そう言って、小さく笑った。

それ以上は何も言わなかった。


蒼と勇気が外へ出る。

花凛は玄関口で二人を見送った。


夜の空気が、少しだけ冷たかった。

しばらくして蒼が戻ってくる足音がする。花凛はそのまま玄関に立って、暗い外をぼんやり見ていた。

なんでもない、と言った。


でもあの一瞬、

勇気の目は気のせいの顔をしていなかった。


その言葉が、胸に刺さったまま抜けなかった。


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