ギルド選び
ナコは所属するギルドを探すために一人街に出かけていた。ドラゴンブレスとでかでかと書かれた看板を掲げている建物に入っていく。受付らしき人を見かけたので声をかけた。
「あの、このギルドに入るためにはどうすればいいんですか」
「入隊志願者の方ですか、それではまずはお名前と年齢、それから出身学校を教えてください」
眼鏡をかけた男は決まり文句のように淡々と話した。
「名前はナコです。14歳、学校には…行ったことが無いです」
「14歳!?まだマナ解したばっかのガキじゃねえか!うちのギルドにはいらねーよ、帰った帰った」
受付は手のひらを返したように対応が悪くなった。
マナ解とは14歳になってマナが解放され、魔法が使えるようになった事を示す言葉だ。マナ解すればダンジョンに入ることが可能とは聞いていたが、好きなギルドに入れるというわけではないらしい。
ナコは縮こまってギルドを出た。それから少し歩いて、今度はもっとこじんまりとしたギルドを見つけた。
入り口を覗いてみると受付から声をかけられた。今度の受付はずいぶんとラフな格好をした金髪青年だ。
「ギルド加入希望者ですか?」
「は…はい」
先ほど門前払いされただけに、ナコは萎縮した。
「では、お名前と年齢、経歴などをこちらにご記入ください」
言われるがまま、差し出された紙に書き込み、受付に渡す。
「はい、ナコさん、14歳、学歴なし…と、ではおかけになっておまちくださ~い」
「あの、あたし初等学校も出てないんですけど、いいんですか?」
「はい、とくに問題ありませんよ、僕も出てませんし」
ナコの顔はパッと明るくなった。
「あの! ちなみにどんな仕事があるのか聞いてもいいですか?」
「えーと…薪割り、掃除、洗濯、いぬの散歩、家事全般、それから受付の仕事なんかも────」
「────すいません、やっぱりやめておきます。」
ナコは記入した紙を持って、その場を去った。
街中で、ナコは大きくため息をついた。
魔法を習う学校があるということは知っていたが、それらの学校を出ていないと冒険者ギルドで門前払いにされるということは知らなかった。
ということは、ナコや牛にもできる依頼を紹介してくれて、さらに魔法を教えてくれるタンポッポは破格の厚待遇だったらしい。
ナコは、アドラたちと出会えた事に感謝しつつ、ひとまずタンポッポのお世話になって、魔法を学ぶことに決めた。
ナコはギルドタンポッポの扉を開けた。今日はギルドで宴会をしているようだ。
「あら、ナコちゃんおかえりなさい。」
片手に肉料理を持ったリサが笑顔で迎えてくれた。
「おお! 君が噂のナコちゃんか、お帰りーーー」
中にはたくさんの冒険者たちが、酒を飲んで料理を食べていた。そして入ってきたナコを出迎えた。
さらにその中には混じって酒を飲んでいる牛のぬいぐるみがいた。
「ナコもこっちへ来るのです! ウマメン殿の宴会芸はおもしろいですぞお」
牛の声は陽気になっている。
「モーくんお酒飲んでるの? ていうか飲めるの?」
「あったりまえですよおお、お酒くらい飲めるに決まってます!」
牛が陽気にそう言って酒を口に運んだ。しかし、口元から注いだ酒は口からしみ込んで、首の辺りから滴り出している。やはり、飲むことはできないようだ。吸収できないのに酔っぱらっているのは、気分で酔っているのだろうか。
「おいおい、大丈夫かよモッさん、それくらいにしといた方がいいんじゃねぇか?」
馬面の男、というよりかは完全に顔が馬の男がなだめている。牛の呼び方からして、既に打ち解けているらしい。以前アドラが言っていた変わり者ばかりのギルドというのは本当のようだ。
「まあナコの嬢ちゃんも座って呑めよ」
アドラはすでに飲み干したのであろう大ジョッキが数本あるが、普段と変わらない様子だ
「あたしはお酒は…。それよりアドラさん、あたしを正式にこのギルドで雇ってほしいです」
ナコがそう言った瞬間ギルドの至る所から歓迎する声が聞こえた。
「ナコちゃん、決めてくれたんですね!」
リサはナコの両手をとって喜んだ。
「リサさん、よろしくお願いします」
アドラはラッパ飲みしていた酒瓶を置いて立ち上がる。
「おおっしお前ら、よく聞けえ!今新入団員が二人増えた!」
アドラは壁を叩き、ギルドいっぱいに声を響かせた、それまでガヤガヤと各々で盛り上がっていた冒険者達はその騒がしさをひとところに向ける。
「まずはさっきから騒いでる、ぬいぐるみのモっさんと、魔導士志望のナコちゃんだ。みんな仲良くしてやってくれ」
ナコと牛が挨拶をすると、ギルドのメンバーは温かく迎えてくれた。




