第5話 ギルド「タンポッポ」
翌日、牛とナコはアドラ達のギルドを訪れた。百人くらい人が入りそうな場所だが、今は他に人はいなかった。
「さて、モーくんさん、ナコちゃん、改めましてギルド「タンポッポ」へようこそ」
リサの笑顔はいつでもさわやかだ。
「よく来たな、改めてギルド長のアドラだ。」
たるんだシャツを着ているので、発達した大胸筋が見えている。
「――ギルド長!? アドラ殿はもしかしてえらい方なのですか?」
牛は前のめりになった。牛は椅子に座るとテーブルで前が見えないため、椅子に立った状態で話している。
「ん?まあそういうことだ」
「――ああいえ、アドラさんがギルド長なのは間違いありませんが、30人くらいの中規模のギルドですから、別に偉くは無いんです」
得意げになっていたアドラの話をリサが遮った。
「おいおい、リサそりゃねえだろ、タンポッポだっていいギルドだぜ。そのギルド長なんだからえらいだろうが」
「アドラさん、私たちはナコちゃんたちにお詫びしなきゃいけない立場なんですよ、変に威張らないでください。」
アドラは納得いかない様子だが、リサは気にせずナコ達への説明に戻った。
「そういう訳で、けして大規模なギルドではありませんし、あまりたくさん報酬が出せるわけでもありません。このギルドへの加入は強制ではありませんので、ナコちゃんたちはいろんなギルドを見て決めてくださいね、それまでに困ったことがあればサポートしますので」
「よく言うよ、ナコちゃんのマナ量は10年に一人の逸材ですよ(裏声)それにモーくんさんかわいいいー、うちに入ってくれるといいな!(裏声)とかなんとか昨日帰り道に言ってたじゃねーか」
「アドラさんそれ言わないでください! そりゃ私だって、ナコちゃんとモーくんさんがギルドに加入してくれたらうれしいですけど、二人の方にも選ぶ権利ってものがあるじゃないですか!」
何やらもめているギルドの二人に、ナコが小さく手を挙げて発言した。
「えーと、ちょっといいですか? どこのギルドにするかは置いといて、なんでこのギルドの名前はタンポッポなんですか?」
リサはその問いに対して、なぜかとっさに目をそらした。
「ここの看板見てから気になってるんだけど、タンポッポて、どこにでも咲いてる黄色い花ですよね? 冒険ギルドってもっとドラゴンなんちゃらとか、ブレイヴなんとかって名前のイメージなんですが」
「いーじゃねえかタンポッポ……ドラゴンなんて刺激的なもんに若いやつはすぐ食いつくけどよ。タンポッポみたいなどこにでもあるありふれた幸せを大事にしようぜ、ナコのお嬢ちゃん」
ナコはまだ納得いかない気持ちもあったが、普段おちゃらけたアドラが急に渋い声を出したので、聞いてはいけないことを聞いてしまったのかと思い、それ以上何も聞かなかった。
「ま……まあ、なんにせよギルドの事を知るためには、一度依頼を受けてみるのが一番ですよ。今のナコちゃんとモーくんさんにぴったりの依頼があるので、受けてみてはいかがですか?」
リサの提案に、二人は頷いた。




