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騎士ホルスタイン  作者: コジュ
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第38話 空耳

町に帰ってきたナコ達は帝国騎士団南支部に泊まることになった。数日の間監禁されていたナコを帝国騎士団の保護下で療養するためだ。


ナコはベッドで体を起こしてテーブルに置かれた昼食をとっている


しかし、元気そうでよかった。


牛はバランスのとれた病院食を山のようにおかわりしているナコの隣でそう思った。

しばらくナコの食べっぷりを見ていると、ドアが開いてフーシが入ってきた。


「おいおい、病み上がりでもうそんなに食べてるのか」

牛のとなりに座る。

ナコは箸をおき、口に含んでいた食べものを急いで咀嚼して飲み込んでから隣の二人に向き直った。


「改めて、二人ともすまなかった。連れ去られて迷惑かけた。」

真剣なまなざしを向けて頭を下げた。

「ナコ、私はいいのです。とにかくナコが無事でよかった。それに攫われたのはナコのせいではありませんよ」


「もーくんの言う通りだよ、ナコは悪くない…‥‥‥‥それに今回の件で、いろいろと吹っ切れたところもあるから…」

フーシは少しだけナコから目線をそらした。


「まあでも、うん、その様子だとすぐに回復するだろ」

フーシは立ち上がる


「もう行くのですか?」


「ああ、少しやってみたいことができたから、その準備にな」


フーシがいなくなった後、またナコは食事を再開した。

そして口にものが入ったまま話始めた。

「あ、そういえばリサさんたちはどうしてるんだ」

先ほど一度箸をおいたのは、謝るときの彼女なりの礼儀だったようだ。もうそれはすんだことと考えているのか、箸を止める気配はない。


「リサさんもアドラさんも樹海に行ってますよ、昨日の探索の続きをしているようです」

オクールが倒れたせいか、樹海全体に張っていた霧は晴れ、帝国騎士団の一般兵も入れるようになった。この日は小屋の地下も含め樹海全体を人海戦術で探索し、不明瞭な部分が多すぎた今回の敵を調べるのだという。


「そうか、でももう他に敵はいないような気がするけどな」


「なぜですか?」


「あたしが捕まっている間、オクール以外にほとんど見なかったからだよ、後はあの背丈の小さな人形と似たような形のぬいぐるみ、オクールが話しているところだってあのマザーに奥の部屋で話しかけてるのがうっすら聞こえたのくらいしかなかった。まあ、それも死体に話しかけてたんだろうけど…。とにかく奴らは自我をもった人形兵はあの数体しか持ってなかったと思うよ」


「そうですか、あれだけの技術力をもっていたわりに、組織規模は小さかったのですね。でもそれならそれでいいじゃないですか、これで余計なことに気をつかわずに冒険できますし」


「…ああ、そうだな」

ナコの返事にどこか覇気がないような気がした。昨日まで監禁されていたのだから当然だが、まだ本調子ではないのかもしれない。


ナコはふとベッドの横に立てかけてある自分の杖に手を伸ばしてみた。少しだけ手の長さが足りず届かなかった。


そのとき空のお椀が床に落ちた

「っと」

よそ見していたせいか、肘をあててしまったのだ。


「大丈夫ですよ、私が拾いますから」

椅子から降りて、床に落ちたお椀に手をかける。かがむとベッドの下の埃が少しだけ見えた。




──────────ゆ──い、───せ




「あれ?ナコ?今何か言いましたか?」


「は?何も言ってないけど」

下からのぞき上げるナコの顔は嘘をついているようにはみえない。しかし、今誰かに話しかけられたような気がした。


お椀をナコに渡しもう一度椅子に座る。焼き魚の最後の切れ端をおいしそうに食べるナコをみつめていると本当に幸せな気分になった。この子がこれからも幸せに育っていく姿をずっと見守り続けていきたい。そんなことを考えているうちに、空耳が聞こえたことなどすぐに忘れてしまった。














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