第32話 自殺しに行く理由
「また幻覚にかかってるやつがいるじゃねえか」
幼女はその姿には見合わない年老いた声をだした。
「おこの隊長!!正気に戻ったんですね!」
「うるせぇな、ライス、あたしはいつも正気だよ」
おこのは耳に指をあてている。
「これくらいの幻覚お前が解けるようになれよ」
呆れるようにした。
「はい…でも、このレベルは無理ですよ‥」
おこのはアドラたちのけがの状態を一瞥して、今の状況を把握した。
それからフーシにかかった幻術を解こうと彼の頭に手を当て、目をつぶる。
「はっ!!」
フーシが起きた。
「ここは…?、みんな傷だらけじゃないか!、あっナコは?」
「…一度全員で情報の整理をした方がいいだろう、俺たちは─────」
マーが自分たちの戦った敵、敵はナコを使うことで無尽蔵に兵を生み出せること。それによりナコが疲弊しているであろうことを伝えた。
「そんなことに‥‥本部からの応援はまだなのか‥」
「いや、時がたてばまた敵は増える。本部を待ってないでまた向かうべきだろう」
アドラは上半身をおこした。
「俺も行く」
フーシが声を上げた。
「フーシやめとけって、足手まといになるだけだ。」
後ろから馬がなだめる
「ウマメンさんの言う通りです。それに、敵につくまでには必ず霧にかかります。そこで幻術にかかったらどうするんですか」
「その時は置いて行ってくれ」
フーシは奮い立っている。
「はっはっはっはっはっはっは、いいじゃないか、若いうちはこうじゃなきゃね、連れてってやりなよ」
「隊長‥」
「よし、あたしがついてってやろう、そうすりゃ、幻術になんざかからん、なに小僧ひとりに幻術耐性術かけるくらい、なんともないさ」
「本当か‥‥ありがとうおこのちゃん!!!」
フーシはおこのの手を握ってよろこんだ、このときは声が完全に老婆のそれなのだが、フーシには以前バク転をして遊んだ時の記憶がつよい。
「わかった。ただし‥‥死んだらおいていくからな。よしみんな支度だ」
アドラが膝を叩いて立ち上がる
「アドラさん…」
リサは困惑したような声を出した。
皆が着替えたり、装備を整え始めたとき、おこのがフーシに耳打ちした。
「ただし、一つだけ言っておくよ…、今あんたの記憶が少し流れてきてしまったが、自殺しにいく理由にされた人はたまったもんじゃないだろうね」
「え、」
フーシはナイフをそろえる手が止まる。
「死ぬまで死ぬんじゃないよ、そしたらあんたは初めて生きる。」
フーシは見下ろすような身長差のある相手に言われた言葉が、なぜだか胸にささり、何も言えなくなった。




