第25話 残された二人
俺はいったい何やってんだろう。
会議の翌日の昼間、フーシは草原の中、ウマメンと二人座っていた。アドラとリサそれに騎士団員たちは早朝に仰々しい隊列を作って出発してしまった。
昨日の会議の後、早速準備に取り掛かるリサに声をかけた。
「俺も連れてってくれ。」
「フーシ君、それはできません。さっきセヴァートさんが言っていたように今回はかなり危険です。命の保証もできません、ナコちゃんは私とアドラさんが必ず助けますからギルドで待っていてください。」
リサはナコを連れていかれた悲しみと怒りを抑えて、フーシにやさしく語りかけた。
「頼むよ、あの時…俺も近くにいたのに…気づきもせず呑気に‥‥」
フーシのナコに対する思いは、リサとも牛とも違った特別なものがある。
「気持ちはわかるけど、ごめんね」
普段はあんなに上手な愛想笑いが見る影もなく、リサの余裕のない精神状態が感じられて、それ以上何も言えなかった。
「きっともっさんもナコちゃんも無事さ、そんな気を落とすなよ」
「ああ」
生返事を返す。
「なあ、言いたくねえけど、こんな仕事なんだ、できるだけ安全な依頼を選んでるうちでも、行方不明になったり命を落とすこともある。あんまり思いつめるなよ」
フーシは命を落とすと聞いて、あの戦いを思い出し始めた。
「それでもアドラさんは生きてる限り見捨てないで助けようとしてくれる、自分の危険も顧みずにな、だからこそ俺らはあの場に行っちゃいけない。俺やお前、他のギルドメンバーだってただの足手まといだ。」
フーシはウマメンの声を聞いてはいたが、内容は入ってきていなかった。
死にかけて、ナコと共に生きられないことを覚悟したあの戦闘。
不思議とあそこで死ぬことはそんなに嫌なことではなかった気がした。
「こんな命…」
フーシはぼそりとつぶやいて立ち上がり、尻についた草を払うと、歩き始めた。
「あ?なんだって?・・・おいどこへいくんだよ」
馬も立ち上がってフーシの後を追う、
「まさか南の樹海に向かうつもりじゃないだろうな、おい!聞いてんのか」
フーシが歩きながら首を馬に向けた。
「行くわけないだろ、今無駄死にするよりも役に立てる時のために帰って修行すんだよ。」
「ああ、それがいい、じゃあ俺も他のみんなみたいに依頼をこなしてくるかな、アドラさんとリサさんが帰ってきたときにギルドがなくなってちゃそれこそ顔向けできん」
二人は一度ギルドに戻り、ウマメンはフーシが部屋で魔法書を読み始めたのを見ると依頼をこなしに出かけた。
その日の夕方、ウマメンがギルドに戻ると、フーシの姿はなく、彼のナイフや小道具も無くなっていた。
「あいつまさか…」
ウマメンはギルドを勢いよく飛び出た。




