第20話 青い魔石
「感動しているところに水を差すようで悪いが、なぜそのぬいぐるみが起きたのか、今後のためにも聞きたい、リサにはわかっているんだろう?」
マーはこんな言葉を使っていたが、実の所牛が起きてからここまで十分に待っていた。あらぬ疑いをかけたことに責任を感じていたのだ。
リサが語り始めた。
「うん、ああでも、何から話せばいいのか…、まず敵の人形、オクール・タクタキシヴィリと名乗る彼は、人のマナを吸い取る力を持っていました。」
「!?、それは本当か」
「そんな技術聞いたことありませんわ!」
マーやアリス達が驚きの声を上げた。
「はい、私も驚きましたが…、そしてここに来た時、もーくんさんからマナを感じない状態になっていました。もーくんさんにも外部からのマナを吸収するしくみがあるかもしれない、と考えてマナを込めてみたのですが、当たっていたようですね」
「マナを吸収するシステムか…」
マーがうつむいて険しい表情をした。
「なぁ、ちょっといいか?俺らの敵だったやつは首を切っても動いてたけど、そこにいるやつは動かないのはどういうことだ?」
フーシが訪ねた
「そいつは多分これだろうな」
アドラが手元にあったぬいぐるみの首の断面図を見せた。未だに目をギョロギョロ動かしているそいつは、中に青い石が入っていた。
「!?」
リサが驚いた。それが牛の中に入っていたものとかなり近いものだったからだ。魔石というのは高価ではあるが世間で流通しているものだ。しかし、石の加工の仕方が酷似していた。それはつまり牛が敵との関係者であることの何よりの証拠なのだ。
「詳しい原理はわからねぇが、この魔石がこいつの動く重要なパーツには違いない、だからこの石から離れた胴体部分は動かないんだろ」
「じゃあ俺らの相手したやつは胴体にその石があったってことか」
「多分な…だが、これは俺らには関係ない話だ」
その言葉の意図を図りかねたギルドメンバーが注目する
「あの敵は強すぎる。今回は大事には至らなかったが、死んでいてもおかしくなかった。ここから先は俺らの仕事じゃない」
「ちょっ、あんだけいいようにやられて…」
ナコの反発に聞く耳を持たず続ける
「それとだ、うちのぬいぐるみ、牛っころの体を調べることを帝国騎士団に許す」
「ちょっとアドラさん!!それはいくら何でも…」
「リサお前の気持ちはわかるが、お前もこの状況がどれだけ危険かわかっているだろう」
アドラにはリサが隠そうとした牛と敵によく似た魔石があることは、見抜かれていた。
「その代わりだ、ナコちゃんを帝国騎士団に保護してもらう、いいな、マー坊」
「もとよりその少女はこちらで保護するつもりだったが、その条件でいいのか?」
「おいちょっと待ておっさん!あたしは保護されるほど弱くないし、その代わりに牛を実験体として差し出すだと…それじゃ今なんのために戦ってたんだよ」
少し声が大きくなる
「まず今回のは失策だった。敵の力がここまで大きいのは完全に想定外だったからな。だが今は状況が違う、敵の力がわかっている以上、ギルドの長として負けると分かっている戦闘を仕掛けてメンバーを死なすわけにはいかない。」
「質問の答えになってねぇ!何で牛を差し出して、あたしを保護する?!」
「これはもう俺らだけの問題じゃない、敵は人のマナを吸い出す力を持っている。さらにマナ量が多い魔道士を狙っているんだぞ。さっきの奴らを量産する技術があるとするなら、ナコちゃんが攫われた日には……国が終わる」
「だからって…」
自分が今日生きる生活を必死にこなしてきたナコにとって、国という話はスケールが大き過ぎて実感がわかなかった
「いいのです、ナコ、私も…このままではナコのそばにいられない」
牛がいだいた自分の未知への不安は大きくなっていた
「とはいえ、牛っころはうちのギルドの仲間だ。こいつの検査は無理のない範囲でかつ、俺がいるときにしてもらう。似たような実験体がもう2つあるんだ、それでいいだろ?」
アドラの意見に、皆少なからず不満は抱えていたが、もう異論が出ることはなく、まずは町に戻ることになった。その道中、アドラとマーは、二人で少し離れて歩いた。
「それでマー坊、他のギルドメンバーは無事だろうな」
マーは強く歯ぎしりした。
「先日取り乱したことを反省して、平静を保っているが、今の貴様にそう呼ばれるとはらわたが煮えくる思いなのだがな…………すぅ、はあ……………問題無い、尋問はホワイトにやらせた。」
「おこのさんのところの部下か、あいつならひどい事にはなってないか、よかった」
アドラは大声を出して前を歩く馬たちにギルドメンバーの無事を伝えた。彼らがホッとしている様子がここからでもわかった。
「アドラ…貴様は帝国がどれだけ危険な状況か分かっているんだな、
それでも貴様はその力を国のために働かせる気持ちは無いのか?」
アドラは前方に見える彼らが、仲間の無事の報告に一抹の安心を得ている様子を見つめながら返答した。
「ああ…今の俺には、いや最初っから俺には逃げることしかできないみたいだ」




