第8話 広がる魔法と新しい日常
「ねえ春日さん、これって……本当?」
大学の掲示板の前で、私は茫然と声を漏らした。
春日さんが投稿したあの写真がきっかけで、学内では【猫耳同好会】の噂が一気に広がり、なんと大学の学生課から正式なサークル申請の許可が降りてしまったのだ。
「ふふ、本当だよ!盗撮騒動のあと、『私も猫耳をつけて自分らしく過ごしたい』って言ってくれた女の子たちがたくさん集まったの。東条さんが会長ね!」
「ええっ、私が会長!?」
戸惑う私をよそに、【猫耳同好会】はあっという間にキャンパスの人気サークルへと成長していった。
部員たちの活動はいたって自由。お気に入りの猫耳をつけて読書したり、学食でおしゃべりしたり。私がずっと大切にしてきたゆるゆるな時間を、みんなで共有する温かな居場所ができたのだ。
そして季節はめぐり、秋。
私たちの活動はキャンパスを飛び出し、地域のイベントからもお声がかかるようになった。
「東条さん、地元商店街の秋祭りパレードと、川沿いの桜並木保護のチャリティーイベントからゲスト参加の招待が届いているよ!」
「すごい……!お兄ちゃんとお義姉さんにも教えてあげなきゃ」
イベント当日、私たちは色とりどりの和装に身を包み、それぞれの【お気に入りの猫耳】をつけてパレードに参加した。沿道からはたくさんの子どもたちや地域の人々が「可愛い!」「猫耳の女の子たちだ!」と笑顔で手を振ってくれる。
「東条さん、大人気だね」
パレードの合間、隣を歩く春日さんが微笑んでくれる。
かつての私は内気な性格で、こんなイベントとは縁遠い存在であったはず。でも今では、大好きな猫耳を通じて、こんなにもたくさんの温かな繋がりと笑顔に囲まれている。
(うん……全部、あの日踏み出した一歩から始まったんだよね)
パレードが終わり、秋風がそよぐ夕暮れ時。
私は仲間たちと一緒に、いつもの賑やかな笑い声に包まれながら歩いていく。
ほんの少し賑やかで、愛おしい、私の新しいゆるゆるな日常が、ここからずっと続いていく。




