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第7話 みんなの魔法

喫茶【桜結び】の重い木製ドアを開けると、カウベルの優しい音が響き、香ばしい珈琲と甘い焼き菓子の香りが私を包んだ。


「詩織ちゃん、おいで!」


お義姉さんが温かな笑顔で手を振ってくれた。そこにはお兄ちゃんはもちろん、連絡を受けて駆けつけてくれた大学の友達・春日さんの姿もあった。


「春日さんまで……なんで?」


驚く私に、春日さんは少し照れくさそうに笑った。「東条さんが困ってるって聞いて、居ても立ってもいられなくて。それに……私、あの写真の東条さん、すごく素敵だと思ってたから」


お兄ちゃんが温かい紅茶を私の前に置き、静かに語りかけた。


「勝手に写真を撮られて拡散されたのは、すごく怖かったよね。でもね、ネットの好奇心なんかに、詩織ちゃんの思い出や大切な日常を奪わせる必要はないんだよ」


お義姉さんが鞄からゴソゴソと何かを取り出した。それは、私とお揃いのピンクの猫耳カチューシャ。お姉さんの大人っぽい猫耳、そして……春日さんとお兄ちゃんの分まで用意された、色違いの猫耳カチューシャだった。


「お義姉さん、これ……?」


「勝手にバズらされたなら、今度は私たちの意思で、最高に楽しそうな写真を上書きしちゃおうよ!」


お義姉さんはいたずらっぽく微笑むと、自分の頭にポンとカチューシャを乗せた。春日さんも「私、一回つけてみたかったんだ!」と嬉しそうに黒い猫耳をつけ、照れくさそうにするお兄ちゃんの頭にも茶色の猫耳が乗せられた。


そして、みんなで私を取り囲む。


「さあ、詩織ちゃんも!」


カチューシャを頭に乗せると、いつもの温かな魔法がじんわりと心に広がるのが分かった。もう怖くなかった。見せかけのバズなんかより、目の前にいる大切な人たちの笑顔のほうが、ずっとリアルで温かい。


「はい、チーズ!」


春日さんのスマホのシヤッター音むが響く。写真の中の私たちは、みんなで猫耳をつけて、弾けるような笑顔を浮かべていた。


その日の夜、春日さんのアカウントから一言を添えて写真が投稿された。


【私の自慢のお友達!ネットの盗撮より、みんなでつける猫耳のほうが100倍可愛いよ⭐#猫耳同好会】


写真はあっという間に拡散されたけれど、今度のコメント欄には「楽しそう!」「素敵な仲間だね」「盗撮に負けないで!」という温かな応援メッセージであふれていた。


世間の勝手な好奇心は、私たちの本物の絆と笑顔の前に、あっけなく吹き飛んでいった。


翌日の大学のキャンパス。私はいつものように【見えない猫耳】を頭に乗せ、春日さんと並び堂々と廊下を歩く。


好奇の視線はもう気にならない。

だって私には、いつでも味方でいてくれる最高の魔法使いたちがついている。私のゆるゆるな日常は、前よりもずっと賑やかで愛おしいものになったのだから。

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