第38話 お義姉さんの涙
「ねえ、琴音さん……今週末、お義姉さんの誕生日なんだ」
離れの秘密基地。私は、カレンダーの小さな赤丸を愛おしそうに見つめながらポツリと切り出した。
東条家に嫁いできてから、いつだって自分の人見知りを温かく包み込み、アンティークの着物や手作りの猫耳カチューシャで自分を素敵に彩ってくれたお義姉さん。彼女がいてくれたからこそ、詩織は『前を向く魔法』を手に入れることが出来たのだ。
「いつも私を可愛くコーディネートしてくれるお義姉さんに、今度は私からの最高のサプライズプレゼントがしたいの!」
私のその一言に、離れの仲間たちかが一斉に立ち上がった。
「賛成!お姉さんにはいつもお世話になってるし、とびきり盛大にやろう!」と琴音さん。「西園寺家のコネクションを全開にして、最高の食材と料理人を手配いたします!」と目を輝かせる西園寺 蓮。「セキュリティと演出用の照明制御システムは僕に任せて」と頼もしく笑うお兄ちゃん。
さらには噂を聞きつけた麗華さんや紫苑様までが加わり、東条家をあげた『お義姉さんバースデーサプライズ作戦』が秘密裏にスタートした。
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誕生日当日。(お姉さん視点)
「詩織ちゃん、今日はお出かけだって聞いていたけど……しばらく離れで待ってて、何かしら?」
夕暮れ時の離れの庭に足を向けたそのとき、普段の静寂な和風の雰囲気とは一変し、樹のプログラミングによる柔らかなイルミネーションが庭の木々を幻想的に照らし出した。
「お義姉さん、お誕生日おめでとう!」
ドレスアップした詩織ちゃんが、少し緊張した面持ちで歩み出てきた。その手に抱えられていたのは、彼女がこの日のために夜通しで手作りしたという特製の『猫耳ドレスハット』だった。
「いつもお義姉さんが私をお見立てしてくれたでしょ。だから今日は、私がお義姉さんを一番素敵にドレスアップしてあげたくて……!」
詩織ちゃんの手で優しく髪に飾られたドレスハットは、エレガントなレースとシルクで形作られた、私の大好きなクラシカルで洗練された猫耳モチーフ。
「……詩織ちゃん」
鏡で自分自身を確認した私は、思わず両手で口元を覆った。
「すごく……すごく素敵!まるで私が魔法にかかったみたい……!」
「ふふっ、お義姉さんはずっと『魔法使い』でいてくれたお礼だよ」
詩織ちゃんが合図を送ると、庭のライトアップが一斉に輝き、テラスのテーブルには豪華なご馳走が並べられた。琴音さん特製の『猫耳バーステーケーキ』に、紫苑様が用意した最高級の紅茶。さらには麗華さんが手配したフラワーアレンジメントが華を添える。
「あらあら、樹さんも……西園寺様や紫苑様まで!」
「雪乃、いつも詩織を支えてくれてありがとう。……君が一番の立役者だ」
樹さんが少し照れくさそうに大きな花束を差し出すと、おもわず目からぽろぽろと感動の涙が零れ落ちた。
「私……東条家に嫁いできて、詩織ちゃんのお姉さんになれて、本当に幸せよ!」
風鈴がチリンと鳴り、温かな笑い声と「おめでとう」の歓声が夜空に響き渡る。
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いつもは誰かを輝かせる側だったお義姉さんが、今日は主人公として一番の笑顔を見せている。頭の上に輝く猫耳ハットを愛おしそうに撫でるお義姉さんを見つめながら、私は自分の頭の上の猫耳にそっと触れ、心の中で優しく呟いた。
(お義姉さん、これからもずっと……私の一番大好きな『お姉さん』でいてね)
温かな絆に包まれた秘密基地の夜は、どこまでも優しく、溶けていくのだった。
第38話にしてようやくお義姉さんの名前を公表できました。




