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第24話 秘密の誓約

「お義姉さん、この帯の結び方……これで合ってるのかな?」


離れの畳の間で、少し首をかしげながら鏡を見つめる詩織ちゃん。その首元をそっと整えてあげると、彼女は「ふふっありがとう」と照れくさそうに目を細めた。


詩織ちゃんとの出会いは、樹さんとの許嫁が決められた高校生の頃だった。樹さんと私と詩織ちゃんの三人で、大人が難しい話をしている間、この離れでよく遊んだ記憶が残っている。


次に出会ったのは、結納式の頃。詩織ちゃんは私にお兄ちゃんが取られるって思って、桜並木の下で泣いていた。その時に彼女と約束したのだった。『私が、詩織ちゃんのお義姉ちゃんになって、もっと楽しい魔法をいっぱいかけてあげる』と。


これは詩織ちゃんだけでなく、彼女をこれまで大切に守ってきた樹さんへの誓いでもあった。結婚するにあたって、特に条件らしい条件はなかった。これからも和装デザイナーとして働き続けることに対しても理解があった。


ただ樹さんが求めたのは、『妹を泣かせたら許さない』。


これは絶対の誓約…… 詩織ちゃんにも内緒。


夫と結婚してこの東条家に嫁いできた日、私の前にいた詩織ちゃんは、まるで傷つきやすい小鳥のように見えた。小さい頃からの人見知りは改善していなく、人の視線に少し怯えていて、自分に自信が持てない様子で。


でも私には分かっていたの。

詩織ちゃんが持ってる、誰よりも繊細で、誰よりも優しい感性に。


「詩織ちゃん、絶対にこの着物が似合うわ」


私がアンティークの着物を提案して、詩織ちゃんが手作りの『猫耳カチューシャ』を頭に乗せた日のことを、今でもはっきりと覚えている。


鏡の中に映った自分の姿を見た瞬間、詩織ちゃんの瞳に小さな灯りがともった。

ただのお洒落じゃない。自分を好きになるための、前を向くための『お守り』。その魔法がかかった瞬間の詩織ちゃんの顔は、私まで胸がキュンとするくらい可愛いかった。


大学で『お守り』がつけられなくて困っていると相談され、見えない『お守り』をつけているイメージしてってアドバイスしたわ。


それからの詩織ちゃんの活躍は、まるで素敵な物語をめくっているみたい。


SNSの騒動を乗り越え、春日さんのご実家の和菓子をデザインで手伝い、ついには伝統ある和装雑誌の表紙まで飾ってしまうなんて!撮影現場で堂々と佇(たたず)む姿を見た時は、カメラの後ろで思わず感動の涙を流してしまったほど。


でもね、どれだけ有名になっても、詩織ちゃんはちっとも変わらないの。


「お義姉さん、今日のお着物もすごく素敵!私、お義姉さんにお見立てしてもらう時間が一番好きなの」


そう言って、秘密基地の縁側で嬉しそうにお茶を飲む詩織ちゃん。頑固だった本家の伯父様までメロメロにしてしまうその愛らしさは、まさに我が家のお姫様であり、大切な妹。


「詩織ちゃん、次はどんな着物と猫耳をコーディネートしようかしら?年始のご挨拶用の新作、もう考えてあるのよ」


「わあ、本当! お義姉さん、今すぐに見たいわ」


目を輝かせる詩織ちゃんの頭の上で、小さな猫耳が嬉しそうに揺れている。


夫が陰から見守り、仲間たちが支え、そして私がとびきりのコーディネートで彼女を彩る。


これからも一番近くで、世界一可愛い妹の『魔法のドレスアップ』をお手伝いさせてもらうわね。

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