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第22話 魔法のおすそ分け

「……ええっ!?私が、和装雑誌の表紙モデル……!?」


秋風が心地よい離れの縁側で、詩織の悲鳴のような声が響き渡った。


ことの発端は、以前『秘密基地』を訪れたTVプロデューサーからの1本の電話だった。彼が持ち込んだ企画がきっかけで、歴史ある有名和装専門誌『きものと暮らす』の編集長が、私に熱烈なオファーを出してきたという。


特集のテーマは『現代に息づく、新しい和装のカタチ』。


「絶対に無理です!私なんかがモデルなんて……人の前に立つだけでも足が震えるのに!」


頭の猫耳カチューシャをぴこぴこと激しく揺らしながら、顔を真っ赤にして辞退しようと必死に抵抗する私。だが、周りの反応は違っていた。


「素敵じゃない、詩織ちゃん!伝統的なお着物と詩織ちゃんの雰囲気が合わされば、絶対に素晴らしい表紙になるわ!」


お義姉さんが目を輝かせて賛成し、お兄ちゃんも「僕も現場に付き添うし、セキュリティや契約の面でも完璧にサポートするよ」と頼もしく微笑む。


さらに、あの厳格だった本家の伯父様までが、この噂を聞きつけて密かに後押しをしてきたのだ。


「東条の伝統ある着物を着て、ご先祖から受け継いだ『お守り』の心を世に伝えるのだ。……詩織、堂々と行ってまいりなさい」


「伯父様まで……」


逃げ場をなくした私は、不安そうに隣の琴音さんを見つめた。琴音さんは優しく私の手を包み込み、眩しい笑顔を見せる。


「詩織さん、あの『猫耳』は、詩織さんが前を向くための魔法でしょ。今度はその魔法で、たくさんの人に『自分らしくていいんだ』って勇気を届けてあげてよ」


「琴音さん……」


仲間や家族の温かい言葉に背中を押さえ、私はぎゅっと拳を握りしめた。


「……はい!私、頑張ってみます!」


撮影当日。格式ある日本庭園を備えたスタジオには、伝統的な高級振袖に身を包み、そこに洗練された和柄の『猫耳カチューシャ』を頭に乗せた私の姿があった。


最初は緊張でガチガチだった様子を見せていたが、頭の猫耳にそっと触れると、すっと背筋が伸びた。カメラのレンズの向こうにいる、自分と同じように人知れず悩んだり、自信をもてずにいる誰かの姿を思い浮かべながら、優しく微笑む。


「はい、カット!素晴らしい……!伝統の気品と、現代の新しい優しさが完全に調和しています!」


撮影スタッフから大きな拍手が沸き起こった。カメラマンのファインダーに納められたのは、おどおどした少女の姿ではなく、己の誇りを静かに纏った美しい『現代の和装モデル』の姿だった。


数週間後。


全国の書店に並んだ『きものと暮らす』の表紙には、柔らかく微笑む詩織の姿があった。噂では初版分がすぐに売り切れて、業界専門雑誌としては異例の増刷対応が取られたとのこと。


「東条会長、すっごく可愛いです!大学の売店でも完売していましたよ!」と喜ぶ後輩たち。「また詩織ちゃんのファンが増えちゃうね」と嬉しそうなお義姉さん。


本家からは『我が家の至宝である』と力強く書かれた額縁入りの雑誌が届き、私は思わず苦笑いしてしまったが、胸の奥には確かな温かさが広がっていた。


「私の小さな魔法が、誰かの笑顔に繋がるといいな」


秘密基地の離れで、愛おしい仲間たちとお茶を楽しみながら、今日も変わらない、ゆるやかで誇らしい日常を紡いでいくのだった。

https://53016.mitemin.net/i1283680/

こちらのイラストが和装雑誌の表紙を飾った詩織さんです

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