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間章<ある後輩が語る東条会長>

「あの、猫耳同好会って……ここですか?」


私が初めてあの川沿いの離れーー『秘密基地』のドアを叩いたとき、出迎えてくれたのは、想像していたよりもずっと小柄で、華奢(きゃしゃ)な先輩でした。


それが東条会長との出会いです。


テレビで話題になっていたし、由緒ある東条家のお嬢様だと聞いていたから、もっと高飛車で高貴な人を想像していました。でも、目の前にいた会長は、私が声をかけると「ひゃい!?」と猫みたいに驚いて、顔を真っ赤にしていました。


会長は、根っからの超・インドア派で人見知りなのが、その時すぐに理解出来てしまいました。


だけど、離れの縁側でお茶をたててくれる時の横顔や、お気に入りの猫耳カチューシャをそっと触る手つきには、どこか凛とした温かさがあります。


ある日、私が大学の課題と将来のことで落ち込んでいたとき、会長は私の隣にちょこんと座って、自分の温かいお茶の湯飲みを私の手に握らせてくれました。私の手が震えていたことに気付いてくれたのです。


「あのね……私は、ちょっと前まで人の目が怖くて、ずっと下ばかり向いて歩いていたの。でもね、この猫耳をつけると、ほんのちょっとだけ『大丈夫』って思えるんだ」


会長は照れくさそうに笑いながら、頭の上の猫耳をそっと撫ででいました。


「だからね、ここにく来るみんなにも、自分らしくいられる『小さな魔法』を持ち帰ってほしいの。焦らなくてもいいんだよ。ゆるゆるいこうね」


その優しさに、私は思わず泣いてしまいました。


後日、先輩たちから聞かされたんだけど、会長は今まで何度も大きなピンチを乗り越えてきたらしいです。ネットの炎上も、凄腕のお兄さんたちの助けを借りつつ真っ直ぐに向き合い、厳格な本家の伯父様までも、その誠実さで味方にしてしまったそうです。


春日先輩のご実家の和菓子屋さんのピンチの時にも力を発揮して、友達の大切な場所を守ったんだって、みんなが誇らしげに言ってました。


普段はおどおどしていて、お兄さんやお姉さんに甘えている可愛らしい姿をちょくちょく見かけます。

だけど、大切な仲間や場所を守るためなら、誰よりも勇気を振り絞ることが出来る人なんです。


そんな東条会長のことがみんな大好きなんです!


「会長ー!今日は私のお気に入りのお菓子を持ってきました」


私が呼びかけると、縁側でひなたぼっこをしていた会長が「あ、開けるの待って~!」とバタバタ走ってきます。慌てすぎたのか躓(つまづ)きそうになるのを、春日先輩が苦笑いしながら支えています。


やっぱり、頼もしいんだか危なっかしいんだかよく分かりません。


でも私たちは知っています。

東条会長が無類の甘党であることを決して認めないことを。

ふふっ冗談です。

この小さな会長が頭に付けた『魔法の耳』が、たくさんの温かな笑顔を広げていることをです。


「会長、今日もゆるゆるいきましょうね!」


「うん!……でも、その前に持ってきてくれたお団子を食べましょう!」


眩しい秋空の下、私たちは大好きな会長の笑顔に癒されながら、最高に愛おしい時間を過ごしています。

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