第18話 母へのお茶会
「お母さん、ただいま!」
本家からの帰り道、私は、離れで待つお母さんのもとに走って向かった。
そこには、ずっとハラハラしながら吉報を待っていたお母さんが、湯気の立つお茶を用意して待っていてくれたのだ。
「おかえり、詩織!……で、どうだったの?」
心配そうに身を乗り出すお母さんに、私とお兄ちゃん、お義姉さんは顔を見合わせてニッコリと微笑んだ。
「大丈夫だったよ、景子。兄上は手紙を読んで……『なかなか似合っておる』って詩織の猫耳をほめてくださったよ」
お父さんが誇らしげに言うと、お母さんは「まあ……!」と両手を口元に当て、ポロポロと涙をこぼした。
「よかった……本当に良かったわ……。テレビの騒動から本家からのお怒りまで、詩織が傷ついていないか、ずっと心配で心配で……」
「お母さん、ごめんね、心配をかけて」
私はお母さんの隣に座り、その手をとった。
(幼い頃から人前に出るのが苦手で、すぐに私の後ろに隠れていた娘が、今では自分の大切なものを守り、頑固だった本家までも動かしてしまったのだ。ここ最近の詩織の成長をうれしく思います)
お母さんは涙をぬぐいながら、愛おしそうに私の猫耳カチューシャを撫でてくれた。
「詩織は本当に強くなったわね。そのカチューシャが、こんなに素敵な縁や温かい気持ちを運んできてくれたんだものね」
「ううん。私ひとりじゃなくて、お兄ちゃんもお義姉さんもお父さんもお母さんも……みんながわたしの『魔法』を信じて守ってくれたからだよ」
お母さんが入れてくれたお茶の温かさが、すーっと胸に沁み渡っていく。
縁側からは心地よい秋風が吹き抜け、庭の木々がサラサラと音を立てていた。
「さあ、お母さん!今度は同好会のみんなと一緒に、お母さんのためだけの特別なお茶会を開くからね」
「ふふっ楽しみにしているわね、私の小さな可愛い猫ちゃん」
みんなの笑い声が、やわらかな日差しが差し込む離れに響き渡る。
ご先祖さまから受け継いだ温かな想いと、私を一番近くで見守ってくれた家族の愛。それらに包まれながら、私の『ゆるゆるで幸せな日常』は、これからもずっと続いていくのだ。




