第15話 秘密基地でのお茶会
秋のやわらかな陽光が注ぐある日の午後。川沿いに佇む古いお屋敷の一角から、香ばしいお茶の香りが漂っていた。
「わぁ……!すごい、本当にここが私たちの新しい拠点なんだ!」
和室の縁側に座り、目の前に広がる川沿いの並木道を眺めながら、春日さんが歓声を上げる。
後輩たちも「畳の匂いが落ち着く~」「お庭もすごく綺麗」と大はしゃぎだ。
伯父様から譲り受けたこの離れは、立派な庭園と川辺の絶景を一望できる、まさに理想の『秘密基地』だった。
「みんな、お茶と団子の準備ができたわよ」
お義姉さんが台所から大きなトレーを抱えて戻ってくる。
今日はお兄ちゃんとお義姉さんもお祝いに駆けつけてくれたのだ。
私は、父から贈られた明治時代の漆塗りの猫耳かんざしで髪を小さくまとめ、いつものお気に入りのカチューシャをつけて座卓についた。
「今日はゆっくりと楽しんでいってください。それではお茶とお菓子をどうぞ」
私の開会の言葉に「ありがとうございます。いただきます」とみんなが口を合わせて答える。
お兄ちゃんが買ってきてくれたいつものお団子屋さんの、季節限定の三色団子を頬張りながら、後輩が嬉しそうに語りだす。
「会長、この前のテレビ取材を見て、新しく入会したいって子がもう5人も連絡してきたんですよ」
「本当!?嬉しいな……でも、どれだけ人が増えても、この『ゆるゆる感』だけは変わらずに大事にしていこうね」
私が笑うと、お兄ちゃんが優しく微笑み、お義姉さんも「それが詩織ちゃんたちの同好会の良さだからね」と目を細めた。
庭の木々からは心地よい秋風が吹き抜け、縁側には仲良くなった三毛猫が気持ちよさそうに丸まっている。大騒動を乗り越えて手に入れた、大切な仲間と大好きな家族、この特別な場所。
「あー……幸せだなぁ……」
ぽつりと漏らした私の言葉に、みんなが楽しそうに笑い声をあげた。
父が所有するマンションからこちらに生活の拠点を移して良かったと思う。
新しく手に入れたあたたかな居場所で、私のとびきり愛おしい『ゆるゆるな日常』は、これからも優しく、賑やかに続いていくのだった。




