第10話 最高の一着を求めて
「和文化フェスティバル用の衣装制作……もちろん、喜んで協力するわ!」
和装デザイナーでもあるお義姉さんは、目を輝かせて二つ返事で引き受けてくれた。
お兄ちゃんも「みんなの晴れの舞台だからね」と、デザインのスケッチブックとペンをテーブルに広げて提案をまとめてくれる。
そこから、同好会メンバーとお兄ちゃん夫妻を交えた『衣装プロジェクト』が始まった。
お義姉さんの仕立ての技術とセンスは流石の一言だった。留学生にも親しみやすく、かつ日本の伝統美を感じてもらえるよう、アンティーク着物の帯をリメイクしたモダンな振袖風アウターや、レースをあしらった和洋折衷のデザインが次々と生み出されていく。
「詩織ちゃんの衣装は、やっぱりこのピンクと薄紫のグラデーションね。あの日、桜の下で出会った時のイメージそのままにしたいの」
お義姉さんが愛おしそうに布地を私の身体にあてがう。その手つきの優しさに、幼い頃に泣きじゃくる私を抱きしめてくれた時の温もりが蘇った。
一方、お兄ちゃんは猫耳カチューシャの改良に取り組んでいた。
「ステージでライトが当たったときに綺麗に見えるよう、帯留めと同じ細工で小さな鈴と桜飾りに見立てた天然石をつけてみたんだ。これなら、遠くからでもちゃんと映えるよ」
手渡されたカチューシャは、伝統工芸品のように繊細で、それでいて温かなぬくもりに溢れていた。
部室での作業日、お義姉さんに裁縫の手ほどきを受けながら、春日さんや後輩たちが楽しそうに針を動かす。お兄ちゃんが差し入れてくれた焼きたてのみたらし団子を頬張りながら、みんなで「留学生のみなさんに喜んでもらえるかな」「絶対に成功させようね!」と笑いあう。
手作りの衣装に、ひとりひとりの想いと魔法が縫い込まれていく。
「詩織ちゃん、ちょっと羽織ってみて」
仕上がり間近の着物を羽織り、鏡の前に立つ。そこには、幼い頃に泣いていた気弱な女の子ではなく、大好きな人たちの愛情に包まれて、誇らしげに胸を張る自分が映っていた。
頭の上の特別な猫耳が、鏡の中で誇らしげにピコンと揺れた気がした。
本番まであと少し。みんなで作った最高の衣装と魔法を胸に、私たちは新しい舞台に踏み出す準備を整えていく。




