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超戦国乙女☆イッチ ~信長の妹に転生したけど男は絶対にノーサンキュー~  作者: 浦賀やまみち


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第05話 本日晴天、蹴鞠大会




「殿っ!? 信長様、しっかりしてくださいっ!?」

「う、うーーーん……。」



 可愛いは正義。

 悪は倒され、天下に平和が戻った。


 だが、信長が居ないと、退屈はいつまで経ってもおわらない。

 二番目に偉い私は、捕虜の処遇をさくさく決めるため、空になった信長の床几に座った。



「あれ? 誰?」

「わ、私は……。」



 すると、柴田勝家が座っていたはずの隣に、見知らぬ青年がいた。

 二枚目半の純朴そうな男だ。



「恐ろしい女め! あの時もそうだった!」


「正々堂々の名乗り合いを邪魔したばかりか!

 飛び蹴りを食らわせ、私の背中を踏んで去っていった!」


「戦は男たちが作り上げる究極の芸術だ!

 お前のようなヒヒ女が来ていい場所ではない! 痴れ者が!」



 しかし、信じがたい罵声を矢継ぎ早に浴びせられた。


 思わず正面に向き直ると、切れ長の目の優男がいた。

 腕と腰は縄で縛られ、両肩を二人の足軽に押さえつけられて跪かされている。



 いかにも、女の子を泣かせている感がある。

 打ち首獄門で、いいんじゃないだろうか。



「へーーー……。」



 私はゆらりと床几から立ち上がった。



「お、お市様、お平らに! お平らに!」



 柴田勝家が両手を広げ、すぐさま私の前に立ちはだかった。



「誰の胸が平らだって!」

「あひんっ!」



 スナップを効かせたビンタを一閃。

 柴田勝家はコマのようにぐるぐると回り、地に伏した。



「……で、お前、誰だよ?」

「わ、私を知らぬのか!」



 私は優男を真上から、感情を取り払った顔で覗き込んだ。

 優男を押さえつけていた足軽二人が、左右に二歩、三歩と後ずさる。


 職務放棄、減点は百。

 あとで、信長に言いつけてやろう。



「今川家の嫡子。今川氏真殿です」



 木下藤吉郎が耳元で囁く。


 その私の願いを聞き届ける素早さ、加点は二。

 あとで、可愛いお市ちゃんの足拭き雑巾を下賜してあげよう。


 今川氏真は桶狭間の戦いには参戦せず、駿河で留守を守っていた。

 そんな歴史知識を私は持っている。


 だが、所詮はマイナー武将。記憶違いなのかもしれない。

 


「あっ!? 蹴鞠の名手って評判の?」

「ふん! どうやら知っているようだな」



 私はパンと拍手を打ち、ニッコリと微笑んだ。



「じゃあ、私と蹴鞠で、勝負しませんか?

 氏真様が勝ったら、解放しますよ? 私が勝ったら……。」



 そして、提案を持ちかけた。



「くっくっ……。あり得んな。

 だが、そうだな。

 たまには珍味を味わうのもよかろう。

 お前を抱いてやろう」



 氏真は肩を震わせて笑う。

 万死どころか、億死を越え、超死に値するいいざまだが、私は寛大な心で今は許してやる。



「わあっ! 一生の自慢になるかも!

 氏真様はそのままで良いですよね? 蹴鞠、上手なんだもん!」

「ふっ……。当然だ」



 左右に目配せし、足軽が慌てて氏真を立ち上がらせた次の瞬間。



「じゃあ、お前が鞠な!」

「あがっ!?」



 私は氏真を股間を思いっきり蹴り上げた。


 氏真は目と口をこれでもかと開き、身体をくの字に曲げた。

 さらに膝を折り、両手で股間を押さえながら、尻を高々とあげて地に伏した。


 しかし、私の気はまだ済まない。

 横から氏真の腹に容赦ない蹴りを何度も浴びせる。



「おらおら、誰がヒヒ女だって! もう一度、言ってみろよ!」

「や、やめっ!?」

「お市ちゃんは天下一可愛いだろうが!」

「ぐぐっ、ぐうっ!?」

「へいへぇ~い! この鞠、跳ねなくてつまんねーぞ!」

「……ゆ、許してくれ!」

「くれ、だぁ~? ください、の間違いだよな?」



 またしても、私の無敗記録が積み上がってしまった。

 私が負ける日が来るなんて、想像ができなくて辛い。



「……お、お前は、鬼か」



 撲殺音だけが響く中、信長の呟き声が届いた。


 やっと復活したらしい。

 顔は完全に引きつっていた。



「えーー、酷くない?」

「ない!」

「それに、こんな可愛い鬼がいたら、地獄が極楽になっちゃうよ?」

「なるか!」



 実の兄なのに、なんと酷い言いざまか。

 私は氏真の撲殺を止め、その場でシャドーボクシングを行い、アップを始める。



「人心を乱すようなことを言わないほうがいいんじゃない?

 比叡山から誅伐を受けちゃうよ?」

「や、止めろ!」



 信長は慌てて拳をしっかりと握った両腕を立て、顔をガードした。


 馬鹿め、足下が完全にお留守だ。


 タックルは腰から下。

 倒したら、そのままジャイアントスイングを決めてやろうと思った、その時だった。



「こ、これが……。き、吉法師殿の妹?」



 二枚目半の純朴そうな男がポツリと呟いた。

 一旦は飲み込んだ疑問が再び湧き、私は首を傾げる。



「そう言えば、誰?」

「松平元康様です」



 木下藤吉郎が耳元で囁く。


 その打てば響く対応、加点は三。

 あとで、可愛いお市ちゃんの書き損じた反省文を下賜してあげよう。


 最近、母親がなにかと小うるさいのだ。



「……えっ!?」



 だが、今はそれ以上に大事なことがあった。


 私は目を見開き、慌てて松平元康から背を向ける。

 両の人差し指を口に含み、目元を濡らす。


 これで準備完了。

 くるりと回って、正面を向く。


 両手を胸の前で握り、顎を引きつつ上目遣い。

 あとは弱々しく訴えれば、松平元康は間違いなくメロメロだ。



「お市、怖かった!」



 何が起きたのだろうか。

 私は感じなかったが、局地的な地震でも起きたのか。


 この場にいる全員が、一斉にカクンと片膝を折った。




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