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第三十八章 【言葉の芽】
その朝、リヴィアは、自分が何かを考えようとしていることに気付いた。
何についてかは、分からない。
ただ、意識の底に、ひとつの単語だけが浮かんでいた。
──外。
それが何を意味するのかは、まだ分からない。
行きたいのか、出なければならないのか、
あるいは、ただ“そこにある”と知っただけなのか。
それでも、その単語は消えなかった。
*
“リヴィア・スノウレイ伯爵が冒険者リュクス・フェンリルにより命を拾われた”という報告が上がるなり、アシェルは肺が凍るような感覚を抱いた。
書類を最後まで読むことはできなかった。
形式的な文言の途中で、指が止まる。
彼女が“戻るつもりはなかった”ことだけが、文字の裏から、はっきりと伝わってきた。
リヴィアが壊れたあの夜、私はあれ以上の言葉をかける事すらできないまま、この前線に戻ってきてしまった。
責任ある立場から、そう頻繁に席を空けるわけにはいかない。
だが……。
「アシェル卿、お行きなさい。これ以上取り返しのつかないことになる前に」
「──すまない、ゲイル」
そうだ、この迷いがいつも私を遅らせる。
もう迷わない、とは言えない。ただ、“今度こそ間に合うかもしれない”という希望は捨てられない。
アシェルはただひたすらに、王都へと馬を走らせた。
第三十八章 了




