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第三十六章 【風の残像】
それまではただ空虚に浮いていた視線が、数刻ののち、わずかに揺れた。
寒さに身震いするようなそれは、ほんの小さな生存本能のかけらだった。
リヴィアの瞳は、ほんの一瞬だけ、確かに蝋燭の揺らぎを追った。
毛布の毛足を引っ掻いた指先でさえも気付いていないその変化は、リヴィアが“まだ生きている”ことに気付いた瞬間の証そのものだった。
目蓋を下ろしても、薄い皮膚越しの炎の影は力強い。
ふと、青い冒険者のしなやかな風が、髪を揺らした気がした。
──これ以上は、俺の仕事じゃねえさな──
誰が、何をすべきなのだろうか。
これ以上は考える気も起きない。
けれど、風の残像が、いつまで消えなかった。
第三十六章 了




