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第二十二章【予兆】
二通の遺書を事務的に引き出しにしまい込み、書類仕事を続けるべく、ペン先を整えた。
領地の収支、治安報告、署名、日付。
すべてに目を通し、誤字を見つければ修正し、滞りなく処理を進めていく。
まるでいつも通りに過ごしている自分を見つめる使用人たちの視線に、リヴィアは気付いていた。
指先のリズム狂い、インクが数滴、机に垂れてしまった。
それを拭って署名に戻れば、今度はいつもよりも筆圧が弱いように思えた。
家名に恥じぬよう振る舞わなければ。
そう思うことで──今日を、終わらせることができた。
──悲しむ暇がない、というのは……ひどく便利な言い訳だった。
自分が何を後回しにしているのかを、考えずに済むのだから。
名を形にしたインクが乾いていく様子を暫し見つめ、リヴィアはペンを置いた。
第二十二章 了




