7-1 帰還の報告
ヨール王二三年六月二二日(金)。
未明、八の鐘の少し前でネゲイ近くまで帰り着いた。進路をヤダ川を遡上する方へ曲げて新池を経由し、マーリン7にジェーン・ドゥの血液サンプルやモルで仕入れたガラスを含む荷物を降ろす。その後は新道で工房に到着。少し眠ってから一の鐘で門を通って領主館に帰り着いた。朝食会兼報告会の始まりだ。ネゲイの首脳陣に加えて、ネリとエンリも呼ばれている。
まずモルで「お化け」と面会したこと、そこでの話し合いの結果、オレがいつでも「お化け」と会えるようになったこと。そのあたりは「マコト殿ならそうもなるだろう」という雰囲気で進んだ。カースンでの紙にまつわる交渉もだ。権利料として紙を作った工房からの卸値に対して十二分の一。紙の視察で七月十五日頃にカースンから工務省から人が来る。これも淡々と報告だけで終わった。時系列順の報告で、次はハンナ・ナーベの件だ。経緯を聞いたネリが言った。
「断りにくい申し出だったのもわかりますけど、王女様ですか。カースンに行くことになってから可能性として考えていたことの一つではあるけど、予想が当たっても嬉しくないわね。」
エンリに向き直って言う。
「エンリ、あなた今日から頑張ったら、その王女様が一度来るっていう八月までにマコト殿の子供を産める?。」
状況と自分の立場について考えていたらしいエンリも驚いて答えた。
「八月は無理ですよ。」
「冗談よ。でもそのくらい頑張らないと、エンリの立場がちょっと弱いわね。ゴール、マコト殿、エンリをマコト殿のコビンにする話、前倒ししないとダメよ。その王女様が正式に輿入れしてくるまでに、エンリが赤ちゃんをお腹に入れてるくらいでないと。」
オレはインプラントによる能力の底上げに差を付けることでエンリの優位性を確保するつもりだったが、あまり公表もできない方法だ。それよりも子供の有無の方が誰にとってもわかりやすい。男連中、ゴールとバースはそのあたりの細かい部分は考えてはいなかった模様だが、ヨーサとドーラはネリに賛同した。
「そうね。ネリの言うとおり、急いだ方がいいわ。マコト殿、あなたの船で、足りてないものは?。まだそれほど準備はできてないんじゃないかしら?。」
「ええ。ハンナ殿のこと、『早ければ雪が降る前に』と聞いて、ちょっと焦りました。エンリが来るのがその頃かと思ってましたから。エンリの準備として、今月末の四半期決算を見てから買い足すものを決めようとか思ってましたが、今日にでも買い物に出て色々注文を出した方がいいような勢いになってしまってますね。」
部屋の中の唯一のコビンであるドーラ・ショーが言った。
「コビンの場合、他のものは夫と相談ですけどベッドだけは自分で選びます。マコト殿の船の中で置く場所の広さとかあるでしょうけど、エンリのベッドはエンリに選ばせないと。」
ベッドのことはオレも気になっていた。乗員一名ということが決まって、普通の形のベッドは備品リストから外されていたのだ。船内にはタンクしか眠る場所はない。タンクは、配管があって外す方が面倒であるという理由でそのまま残されている。だが、タンクとベッドを同じ部屋、ルームBとCにそれぞれ入れると、相当狭くならないだろうか?。
『マコト、部屋面積に余裕があるルームA以外のタンクは、使わないときに吊り上げて縦置きにできるわ。占有床面積は大体四分の一になる。使うときだけ水平にするのよ。縦のままでも使えなくもないし。知らなかった?。』
αだ。忘れていた。そうだった。吊り上げても大丈夫なように配管長に余裕があるのを、邪魔だと感じていたのに。
『ありがとう。仕様で読んでた。思い出したよ。』
それなら、常識的な大きさの物なであれば購入しても問題はなさそうだ。
「実は船には、ここで使われているような形のベッドがありません。形が違ってて、一人用です。ネゲイで、それなりのものを買わないと。」
マーリン7が谷から池に移動したときの様子を見ていたゴールが言った。
「あんな揺れ方をするなら、外国へ行く船で使ってるようなヤツ、吊した網、ええと、ハンモックというのか。あんなのが基本なんだろうな。」
正解ではないが、百パーセントの間違いでもない。タンクの形状は、慣性制禦の不調で船が酷い揺れ方をしても大丈夫なように、という意図も込められている。もっと小型の宇宙船でも使える汎用型だ。ネリとエンリは実際にタンクに入ったことがあるが、「船の中のことは話さない」という規則に忠実で「話したい」という表情も浮かべていない。ゴールは続ける。
「ベッドはそのつもりで準備はしていた。エンリは全額を出すつもりだったようだが、十二分の一にさせたよ。期間の短い養女でも、ここで全額をエンリに出させたら儂の面目がないし、少しはいいものが買えるからな。それと、マコト殿がさっき言ってた『四半期決算の後で』だが、決算に関係なく、七月頃には準備を始めないとダメだなとは思ってたんだ。今日は、マコト殿はまだ疲れているだろうし旅の荷物の片付けもあるだろうから、明日にでも店を回れるように、時間を空けておこうか?。イヤ、儂が結婚するんじゃないな。エンリとマコト殿と……ダールに声を掛けておくか。三人で動けるようにしよう。」
「もしダールがダメだったら、私が行きますよ。コビンですからね。マコト殿、明日はそういうつもりで用意しておいて下さいね。ええと、ゴール、少し前倒しよ。七月中にエンリをコビンとして送り出せるようにしたいわ。いい?。」
「七月中だな。わかった。そのつもりで準備しよう。」
話の最後に、ネリとエンリ用のお土産として買ってきたネックレスも渡した。二人とも、新しいコビンのこともあってか複雑な表情だ。エンリに関するスケジュールは三~四ヶ月ほど前倒しとすることになった。今エンリがやっている、やりかけている仕事のうち漁業との関連が小さいものは新規に追加しないこと、そのあたりが片付いたらエンリは漁業関連に専従することも決められた。
マーリン7に戻ったのは一一〇〇M。ネリとエンリも午前の予定をキャンセルして一緒に付いてきた。首元には、一応、二人とも新しいネックレスを着けてくれている。二人は、部屋の中に運び込む私物を決めるため、部屋の中の寸法を測っておきたいという。オレは風呂と、少し寝たい。アンも、マーリン7を離れていた期間が長かったから、あちこち検査が必要だろう。未明に預けていた「お土産」の仕分けはもう終わっており、渡す相手ごとに名前を書いた紙片が貼られていた。海で採取したサンプルの分析も半分ほど終わっている。今のところ、「塩」とか「鉄」というような誰にでも思いつくものから、量は少ないが稀土類や重水までも含めて、意図したものが検出できていた。これはいいニュースだ。ジェーン・ドゥの血液サンプルの分析結果はまだ出ていない。ジェーン・ドゥから預かったキューブの内容は先ほど単純なコピーを終えて分析を始めたところ。内容の整理分類にはまだ時間がかかる。
ネリ達の目的は伝えてあったので、小ニムエ達はルームBとルームCの見取り図を用意していた。設計図の写しだ。ルームAの左右に配置されたBとCの構造は線対称になっている。メートル法で寸法が記載されているが、ここでの長さの単位である「クーイ」による表記はない。以前の測量の時に作った「クーイ」でも測れる巻尺も出してくるよう頼んでおいたから、二人で一時間ほどは楽しめるだろう。タンクは水平と縦の両方で、寸法を測っておいてもらおう。オレは風呂と睡眠が欲しい。
一三三〇M。目覚めた。二時間ほど眠っていたか。だいぶ疲れも取れている気がする。ネリとエンリはベティの運転でネゲイに送り返されていた。カースンで話をしてきた紙製造の視察の予定とか、工房でノルンに伝えておかなければならない。留守中の工房の様子は一応聞いてはいたが、ノルンからも話したいことがあるかもしれないし。工房でノルンに会おう。時間が余れば、市内でほかに帰還の挨拶をして回ってもいい。市内は明日も買い物で回るし、そのあたりは時間次第だ。
工房では干しエビの大袋を渡し、ノルンにフショップの視察の予定を伝え、不在中の出来事について聞く。概要は既に知っているが初めて聞く話のように振る舞う。ノルンの話でも、留守中に特に困るような話はなかった。
「マリスから石鹸の触媒の注文がありましたよ。」
「早いな。もう少し先かと思ってた。」
「ヨークの店で使い始めて、どこかの隊商がそれを使ってみて、気に入ってマリスのところの在庫を買い占めて行ったらしいです。」
「わかった。いつ行こうかな。遅くとも明後日頃までには届けるよ。」
隊商とは、以前に会ったニーモイだろうか?。あの時に聞いた彼等の今後の予定でも、その頃にネゲイに戻っていても不思議はない。別の隊商も動いているだろうし。ノルンの話は続く。
「そろそろ四半期決算の時期ですけど、この前巡察の時に計算してたのがあるから計算仕事は半分以下ですよ。マコト殿のところのお嬢さん方は揃いも揃って計算が早いですし、助かってます。」
「一応は、プラスなんだろうね?。収支が上を向いてないと新しいことに手を出しにくいからね。」
「大丈夫ですよ。『紙』用の道具類も増やせます。職人が足りてないのは相変わらずですけど。」
「最小限度の道具をもう一組用意しておいて、『製造用』『試作用』にするとか、追加分を視察団に売ってもいいかもな。」
「そのあたりはお任せしますよ。何しろ、資金に多少の余裕はありそうです。工房としても、私やマコト殿の取り分としても。」
「資金に余裕があるのは嬉しいね。私も嫁取りの準備で本格的に物入りになってくるし。」
「六月決算を見てから色々決めたいとか、言ってましたもんね。」
「ああ。余裕があるなら、あちこちに『金欠でして』とか謝りに回らずに済む。」
ベンジーでもエビの大袋を渡す。
「弟とは会えましたか?。」
「ああ。同じ顔、って本当にそうだったね。ノーグ殿の紹介で『お化け』にも会えた。興味深い人だったよ。『お化け』といつでも会える通行証も出してもらってる。」
「なかなかそれは、さすがですね。最初から認められるのは珍しいと思いますよ。」
「グレン殿が紹介状や事前の連絡で私を高評価していてくれたお陰だと思うよ。」
高評価してくれていた本人にそう伝える。
「役に立ててよかったですよ。通行証があるということは、これから時々モルまで行かれるようになりますか?。」
「モルだけでなくカースンもね。機会は増えるだろうな。バギーなら街道経由でカースンまで二晩だということは確かめたけど、川を使ったらもっと早いかもしれない。今度試してみるよ。」
「ああ、バギーですか。浅くなるのと流れが速くなるのでモルより上流では川舟はあまり使われてないですけど、エビ網とかの仕掛けがあちこちにあったりしますから壊さないようにして下さいよ。」
「そういうのもあるのか。新池で見たけど浮きとか小旗とか付けてるヤツのことかな?。」
「そうです。モルより下流じゃあ船で人や物を運んでますからそういう網は岸近くにしかないですけど、船が通りにくくなる上流だと川の真ん中近くにまで仕掛けを入れていたりしますよ。流れの早すぎるところは避けてますけど。」
「ぶつけて叱られないようにしないといけないな。教えてくれてありがとう。」
バギーの斥力場がエビの用の仕掛けを壊すかどうか、テンギに頼んで壊れてもいいダミーの仕掛けを用意してもらおうか。αが情報を送ってきた。
『衛星画像じゃ判別できないわね。水面からの反射とかもあるし場所も時々変わるでしょうし。バギーの前方監視では水面より突き出ているものは大体検知できるようにしてるから、その仕掛けの近くで前方監視系統がうまく仕掛けを見つけられるかどうかの確認をしておいた方がいいでしょうね。』
『わかった。今日か明日にでも。明るいときと、夜も、試してみよう。』
夜にはジェーン・ドゥの血液分析の結果が出ていた。
「色々面白い抗体の痕跡を見つけたわ。多分ターク4のものもあるわね。」
「テロメアは?。」
「ターク4でのやり方なのかジェーン・ドゥの体質なのかはわからないけど、検査で見つけた数字から身長が伸び続けてるっていう理由の仮説は考えたわ。多分、テロメア改造を受けた時期が早すぎたの。成長期終了直前の頃、まだ成長が完全に終わってない時期にテロメアに手を入れて状態を固定して、まだ骨の構造が子供のままじゃないかと思う。」
オレは自分がテロメア改造を受けたときのことを思い出す。確か年齢制限が十八歳以上で、何度か診察を受けて自分の細胞からテロメアを再編集するベクターを作って注射する。オレは二十歳で処置を受けた。初診から注射まで半年ほどかかった気がする。診察のたびに身長と体重を測っていたな。あれは成長が終わっていることを確認するためだったと記憶している。
「子供はダメとか、多分テロメア処置関係の基礎研究の段階でわかってるはずのことだろうに、そんな失敗もあるんだな。」
「ターク式なのかもね。そのあたり、まだ仮説よ。彼女が何歳で処置を受けたかも確認してないし。状況証拠から原因を推定してる段階。彼女をタンクに入れて体内スキャンしてみたいけど、むつかしいわよね。」
「あの身長だと……医療室のタンクがあるか。でも『デージョーの敷地から出るには手続きが』とか言ってたな。」
「次に会う機会で、仮説のことは話してもいいと思う。でも、この仮説が正しいとわからないうちは、変な薬は使いたくないわ。でも根本的治療には、彼女をここに連れてくる必要があると思う。あと、次に行くときは、もう一度血液を採るのと、口腔細胞も採って、冷蔵か冷凍コンテナで持って帰るべきよ。常温でバギーまで運んでる間に、やっぱり何かれてたみたいだったから。温度管理ができてなかったわ。」
「テロメアの件は、そうだな。仮説を話す。再検査用の献体を採る。できればジェーン・ドゥ本人をここに連れてくる方法を考える。うん。外に出るための手続きはデージョーで聞かないとな。」
「ええ。その『手続き』については情報なしよ。グレンなら知ってるかもしれないけど、そういう検討をしていること自体、あまり知らせたくないわ。」
「そうだろうな。本人に聞くのが一番いい。それも、英語でね。」
テロメアの話題は今日はこれ以上進められないようなので話題を変える。
「預かったキューブの記録と、昨日撮影した木簡とかの内容解析はどんな感じ?。」
「キューブの中は彼女がここに来てからの日誌だったわ。『第一日、私は死んだも同然だから、今日からジェーン・ドゥを名乗ることにする。』って始まってる。それ以前の情報はほとんどゼロ。時々『こんな時に何があったら便利なのに』とか言ってる程度。カプセルで海に着水して、帆を建てて海岸に移動して、最初の何年かはロビンソン・クルーソーね。」
「千日分の食料で放り出された、とか言ってたな。」
「ええ。上陸して住むところを作って食べられるものを探して、多分359-1で穫れたものを食べるようになって半年ぐらいで『ウーダベー』に気付いてる。その後は道具作りが捗って、自給自足体制の構築が一気に早くなってるわ。それから何年かして難破した漁船を助けて、船の修理を手伝って、文明世界にデビューよ。オーキョーって言うのは、最初に助けた漁師達が住んでた村の名前みたいね。意思疎通は、最初は身振り手振りだったみたい。」
「そのカプセルはまだ残ってるのかな?。どこだろう?。」
「日誌によると、満潮時に帆を揚げて、できるだけ海岸奥に乗り上げさせて、帆を畳んでしばらくはそのまま倉庫兼住居としてたらしいんだけど、持ち出せるものはもっと内陸の高いところに作った自分の小屋に移動させてたみたいね。そしてとある嵐の夜が明けてみると、というお話よ。」
「その近辺の海底に沈んでるか、もっと流されて遠くに行ってしまってるか、そういうことか。」
「そうでしょうね。」
「オーキョーというのはこの近く、というか、カースンの中なのかな?。」
「日誌には簡単な地図も残されてる。出てくる地名と距離からまた地理情報を補足したけど、オーキョーはヨーベの近くのようね。多分、カースンの中。ハマサックに近い場所よ。ジェーン・ドゥのカプセルが沈んでるかもしれない海岸は、もしかするとハマサックかもしれない。その場所の写真も残ってるけど、衛星画像で似た地形を照合すると、多分ハマサックかな?、というあたりよ。国境もはっきりは確認してないし。その近くには今も人家とかの気配はないわ。行ってみたいでしょ?。」
「そうだな。海中探査をしようと思ったら、バギーかデルタにそういう装備を加えて、とかになるんだろうな。」
「何年か先のToDoに足しておくわ。優先順位は、厳密に審査するわよ。」
「わかってるよ。それで、文明と接触したジェーン・ドゥのその後は?。」
「多分今の私達と似た感じね。でもライブラリとか、それなりの道具類がないから進歩は遅いわよ。それでもだんだんと『オーキョーに知恵者あり』って噂は広がって会う人も増えてて、彼女の墜落から十九年でキューブの記録は終わってる。」
「バッテリーかな?。」
「光電池を使ってたみたいだけど、そんな話、給電系でしょうね。キューブに空き容量はあったわ。」
「キューブと、キューブ以降でウーダベー関連を含む博物学的な記録はあったかな?。」
「彼女も、播種説にたどり着いてるようね。最初に会ったときに『生物相がおかしい』って言ってたこと、憶えてる?。」
「話の途中でノーグが戻ってきて、色々聞きそびれた時だな。」
「そうよ。ジェーン・ドゥも脊椎動物が陸上にしか棲んでいないことを気にしてるわ。理由の仮説を三つ挙げていて、『病気か何かで水棲の脊椎動物は接滅』『脊椎動物は地球のような星から持ち込まれた』『陸上と水中では別々に進化が発生してる』って書いてる。
「『別々』は信じがたいな。血液は、海水に満ちた環境を再現するためのものだろ?。」
「私もそう思うわ。多分ジェーン・ドゥも、思いつくことを書いただけで信じてないんじゃないかしら。」
「仮説はできるだけ沢山挙げておいた方が正解にたどり着きやすいし、そんな感じだろうな。ウーダベーについては?。」
「ロビンソン・クルーソー時代にアルミの柱とかを作って小屋を補強してる。鍬とか、鉄器も作れるようになって喜んでるわ。体系的な実験もしたかったみたいだけど、発動回数の制限とかもあって今まで見た記録の中ではあまり科学的な成果という感じにはなってないわね。生き延びるための実用目的の実験がメインになるものね。それから、オーキョーを出てからあちこち動き回って今はモルに落ち着いてるけど、モルにある五角形の塔、あれも彼女が監督したみたいね。彼女の弟子と言うのかしら。ウーダベーの人形遣いがいたみたい。百年以上前だから、もう死んでるでしょうけど。」
「トヨンに娘がいて『器用な技を使う』とも言ってたな。そんな才能の持ち主が時々いて、ある程度科学的なステップを踏んで思考ができるジェーン・ドゥが教育したら新しい技が作られるのかもしれない。まだ見ていない記録の中にもそういう話は混ざってるだろうな。」
「ええ。私達を落とした犯人だとも言ってたし、質問リストとか要望リストを作って話をしに行った方がいいと思うわ。」
「賛成だな。その『犯人』が同じことをやらないと約束してくれたらデルタをもっと使えるようになるかもしれない。」
「そういう能力があるのが一人だけだとすれば、そうね。期待はしないけど交渉はしましょう。それから、ジェーン・ドゥのテロメアの話に戻るけど……。」
眠くなるまでジェーン・ドゥへの対応について案を出しながら夜は更けていった。「替え玉を用意して本人を連れ出す」?。面白いが準備に時間がかかりそうだ。




