表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/118

6-10 海

 ヨール王二三年六月二十日(水)。


 〇一〇〇Mを過ぎてαに起こされた。インプラント経由の強制覚醒なので「まだ眠い」というような感覚はない。


『ネゲイ館に侵入者。虫で監視中。目標不明。おそらく、バギーね。警報器は待機中。変な触り方をしたら音が出るわ。』


 「ベッドで眠る」というポーズだけはしていたアンも既に動き始めている音がする。すぐに、アンが携帯用の照明を灯した。窓から光が漏れない程度の小さなものだ。オレの視覚には建物の見取り図と侵入者の位置が表示されている。敷地内に赤い点が二つ。外にも、赤い点が二つ。この時間帯、門は閉まっているから塀を乗り越えてきたか。狙いがバギーなら内側から門を開くはず。狙いがオレやバース達なら侵入者はこちらに来るだろう。バギーが馬車置き場というのは予想できても、オレ達がいる客室の位置は知られていないと思う。


 オレも音を立てないよう身支度を急ぐ。アンはオレの背嚢からオートマチックを取り出している。オレの装備、山刀、OK、リボルバー、OK。「虫」が一匹飛んで来てオレの肩にとまった。これで距離と方向を正確に測れるから、暗くてもFCSが機能する。アンは自分の山刀も腰に用意して静かに部屋を出た。オレもその後に続く。


 侵入者はやはりバギーに向かっているようだ。赤い光点は馬車置き場と門に向かっている。敷地外の赤い点も、門に向かっているようだ。


『あちらの人数とこちら装弾数からみて、マコトはバギーに行くべきよ。』

『わかった。』


 途中でアンとは別れてオレは馬車置き場へ近づく。「虫」の補助があるので暗くても状況はわかる。侵入者がバギーに乗ろうとして片足をステップにかける。体重がバギーにかかったところで大きな警報音が鳴り響いた。驚いてバギーから離れた侵入者に駆け寄る。警報音のおかげでオレの足音は聞こえていない。山刀の峰で侵入者を背後から打ち据えて倒し、倒れた男の片腕を踏みつけてオレの手の届くところ、もう一本の腕にも山刀の峰を打ち付けた。ここまでやればどこかの骨は折れて動きは悪くなっているはず。オレは侵入者から目を離さずにバギーに歩み寄って警報を止める。


 アンも、警報音で振り向いた侵入者を相手にほぼ同じことをしていたようだ。峰で打って、倒して、関節を捻り上げている、と、αが教えてくれた。


 大きな音がしたのでネゲイ館だけでなく近所の建物の中でも人の動く気配がある。状況がわからなくても、あんな音が出るものはこの数日ネゲイ館に置かれている変な「馬車」しかないだろう。


 果たして、ネゲイ館の住人であるテトとバクスが眠そうな顔のまま様子を見に来た。オレはバギーの前照灯を灯して状況がわかるようにする。


「賊ですか!。」


 バクスが大声で言う。近所の建物にも聞かせるためだろう。オレも大声で返す。


「そのようだ!。取り押さえたが、ちょっと手伝いが欲しい!。」

「そのまま押さえてて!。ロープでもっと縛ります!。」


 バクスは普通の声でオレに言う。


「ロープを探しますので少々お待ち下さい。一人ですかね?。」

「イヤ、多分、門の近くでもアンが同じようにもう一人を押さえていると思う。外にもいるかもしれないが、この音だ。もう逃げてるかも。」

「テト、見に行ってくれ。」

「門の近く。アン殿もすごいね。」


 テトはで厩舎の壁に掛かっていたロープを見つけ出し、門の方向へ小走りに去る。バクスもロープを持ってこちらに歩いてきた。オレが押さえつけている男の傍にしゃがみ込み、両手を後ろ手に縛りながら聞いてくる。


「賊が入って来たのを、どうやってわかったんですか?。」

「説明しにくくてね。変な時間帯に接近者があればわかる、というしかないな。」

「それもマコト殿の知恵の一つですか?。」

「ああ。詳しい説明はしないよ。この男にも聞こえてるから。」


 バースもやってきた。燭台を持っている。バースはバクスの仕事がやりやすいよう、明かりをバクスに近づけた。


「ミナルはあっちでアン殿が押さえた賊を縛るのを手伝ってるよ。こんな時間に、迷惑だね。警邏に渡すか。呼びに行かないと。迷惑だね。賊を押さえたマコト殿達は、警邏でも聞き取りがあるよ。朝までかかるかもしれない。迷惑だね。」


 バクスは様子を見に来ていた使用人の一人に警邏を呼びに行くよう命じた。オレ達は賊の男を立たせ、アン達と合流するため門の方へ移動する。ネゲイのような田舎では軍と警察は一つの組織になっていて、所属する人間はどちらの職務も行う。一方で、人口の多いカースンのような都会では、この役割が「警邏」と「近衛」に分離していた。ネゲイでは、最初に「兵士」だと分類してしまっていたのでαも「兵士」と翻訳していたが、ネゲイのような軍と警察が混ざった組織の名称を、最近のαは「領衛」と翻訳するようになっている。あまりこの言葉を使う機会はないが。


「何をしに来たか、それは誰かに頼まれたか、そんなことは聞かないとダメだよね。」

「聞くのは別々にやったほうがいいでしょう。」

「そうだね。今聞くか。」


 バースは折られた男の肘を握って揺さぶった。


「おとなしくしゃべってくれると、みんなで幸せになれるよ。」


 燭台一つではわかりにくいが、男は呻り、顔には苦悶の表情が浮かぶ。バースは男の肘から手を離さずに続ける。


「みんなで幸せになろうよ。儂はこういうこと素人だから下手だけど、警邏にはもっと上手に話を聞ける人もいるらしいよ。」


 男は答えない。バースは燭台で男の顔を照らした。


「見覚えは、ないねえ。バクスは?。」

「残念ながらわかりませんね。」

「警邏なら、知ってるかもね。」

「もう少し肘で責めてみるよ。ねえ。悪党君。幸せになれる方法を、儂はさっき教えたよね。実践してみる気分になって欲しいな。」


 そんなことをしているうちに、門の近くで押さえた賊を連れたアン、ミナル、テトがやってくる。異常があればαが教えてくれているはずだが、他の連中に聞かせるためにもオレはアンに声をかける。


「アン、怪我とかは大丈夫だった?。」

「私は大丈夫ですよ。マコトは?」

「こっちも大丈夫だ。そっちの賊は何かしゃべった?。」

「いいえ。まだです。脳震盪で気絶してたみたいで、目を開いたから連れてきました。」


「ノーシント?」


 バースが不思議そうに呟く。翻訳できていなかったようだ。


「頭を何かに強くぶつけて身体を動かせなくなることですよ。」

「アン殿の体術も、びっくりするねえ。アン殿、どうやって『ノーシント』させたんだい?。」

「峰打ちですよ。で、最初の一撃は肋か腕に当てるつもりで振り抜きました。で、賊は壁に頭をぶつけて倒れました。倒れたところで片腕の骨を踏み折って、そこで相手が気絶してることに気付きました。」

「マコト殿も腕の骨を狙ったよね。そういう流派なのかな?。」

「やりかたは色々ありますけどね。賊が目覚めて聞いてますから、詳しい話は、今はやりません。」

「それもそうだな。賊には、『ネゲイのマコト・ナガキ・ヤムーグに手を出したら痛い目に遭う』とだけ覚えておいてもらえばいいか。警邏、まだかな?。」


 バースが警邏に不満を漏らしている横でアンが言った。


「どうせ私とマコトは警邏に状況の話とかしないといけないでしょうから、一度部屋に戻って書けるだけのことを書いておいていいですか?。」


 バースが答える。


「そうだね。二人は一度戻っていいよ。警邏が来たら呼ぶから。それまで、儂らは賊二人の肘をつついて何かしゃべるか、試してみよう。」



 オレとアンは客室に戻った。アンの口を借りてαが言う。


「賊に気付いた経緯は、もう『マコト殿の知恵』『詳しい方法は秘密』で押し通すしかないわね。」

「そうだろうな。『虫』で状況観察をしていることは明かせないし、仮にそれを明かしたところで今のヤーラ359-1で同じような仕掛けは作れないし運用もできない。」

「じゃあ、その部分だけは少しぼかして、二人分、経緯を紙に書いておくわ。」


 アンは紙にボールペンで経緯を記し始める。時系列箇条書きだ。一分ほどで紙の半ばまで書いて、二枚目に入る。一枚目は、オレとアンが部屋を出るまで、二枚目は、オレの筆跡でオレのところにバクス達が到着するまで、アンはすぐに三枚目に入った。オレと別れてからの状況だ。これは一枚目と同じ筆跡に戻してある。短時間に急いでまとめた備忘録としてはこれで十分だろう。外では警邏が到着したような声も聞こえてきた。



 書き上がったメモを持ってバース達のところに戻る。


「マコト殿。警邏が来たから今までの経緯だけ話してもう寝ようよ。何か書いてきたんだろ?。内容次第で、それを預かったら警邏も賊を連れて引き上げるってさ。」

「あれから何かわかりました?。」

「儂には拷問の才能がないことがわかったかな。ええ、こちら、警邏の、今日の班長さんだ。書いてきたものを渡してやってくれ。」


 呼ばれた警邏は五人いた。賊二人の連行だから、そんなものか。オレは「班長」と紹介された男に紙を渡す。


「内容が足りなかったら聞いてくれ。でも我々は明日の夕方、イヤ今日の夕方?。なにしろ出発の予定で、明日の今頃にはここにいないから。」


 紙を受け取った「班長」はバースが差し出す燭台を頼りにして内容に目を通す。


「簡潔で、わかりやすいですね。こういう書き方は、見習わないと。ええと、最初に気付いたのはどうやったんです?。そこは書かれてませんが。」

「賊が聞いている横でその話はしないよ。方法がわかったら、裏をかく方法を考えるヤツがでてくるだろ?。同じ理由で、申し訳ないが、話す相手が警邏の方々だけであっても、話すつもりはないよ。」

「確かにそうですね。我々も町の中を歩き回る時間は毎日変えてますし、そこはネゲイ館のやりかたで見つけた、ということにしておきましょう。あなたがマコト殿、で、こちらがアン殿ですか?。」


 アンが一歩前に出る。


「アン・ニムエです。」

「体も小さいのによくこんなことができましたね。」

「それなりにこういう場合の動き方の練習もしてましたし、運がよかったんですよ。」

「ネゲイには使える人がいますね。羨ましい。まあ、とにかく我々は引き上げます。ネゲイ館に賊が入ってきたが何か盗られる前に取り押さえた、と。賊の身元とかわかれば、ネゲイ館にもお知らせします。」


 そろそろ〇二〇〇M。一時間ほども賊につきあわされてしまった。オレはインプラントで強制睡眠できるが、バース達は寝にくいだろうな。



 〇六三〇M。カルラが用意してくれた朝食を摂る。彼女も昨晩の捕り物の現場に顔を出していたから眠そうだ。


「マコト殿はお元気ですね。若くて羨ましい。」

「今日の予定もありますから、全力で寝てましたよ。」

「今日の予定のことを考えて、バース様は昼過ぎまで寝てるつもりだって言ってました。午後は少し市内で買い物をするとか。それにしても、全力で寝るって、なんか疲れそうな眠り方ですね。」


 軽口はいつも気楽だ。今日は、午前中は徒歩で市内を回る。午後、バギーを持ち出して海へ行く。バギーに乗せておけばアンの充電もできる。そして夕方に出発だ。出発前にはハンナも来るかもしれない。彼女が近づいてくれば、ネゲイ館の「虫」でわかるだろう。


「アン。今日は蚤の市からだったな。」

「ええ、出発しましょうか。」



 午後に予定している海はウーダベーのこともあるからジンの案内なしで行く必要があるが、午前中は蚤の市から普通の商店が目的地だ。ある程度事前情報も欲しい。αはそのあたりも準備していていた。昨日の午前中、オレ達が礼儀作法の練習をしていた頃に蚤の市から普通の商業地域にかけてを「虫」で撮影していたらしい。ほぼ真上に近い角度なので日除けなどあると並べられているものの全部を見ることはできないが、食料品の店なのか道具屋なのかはわかる。ネリとエンリへの「お土産」はショー一家のお勧めもあってちょっと高級な装身具店で探すつもり。大体の場所は聞いてある。あと、ネゲイで親しくなっている職人達へは食べ物か酒でいいだろう。まず、時間帯からして蚤の市からだ。


 蚤の市ではお土産の他にも携行食や何かの材料に使えそうなものも探す。海が近いので生きたエビなどもあったが、ネゲイに持ち帰るまでには悪くなってしまう。バギーで冷蔵や冷凍も可能だが、そこまでする必要もないか。ここで作られるものとしては珍しくもない乾燥させたエビは、軽いが嵩張る。外骨格生物だ。乾燥させても体積はあまり変わらない。見たことがない種類の樹木の薪も買ってみた。これも嵩張る。一時間と経たずに、一旦ネゲイ眼に戻って荷物を降ろすことになった。


 蚤の市で買ってきたものを客室に置いて再び町へ出る。次はショー一家に勧められた装身具店だ。丁度手が空いていたカルラが同行してくれることになった。ネリとエンリのための買い物以外の店も案内できるという。


「マコト殿達がどんなものに興味をお持ちなのか、そこに興味がありますから。」

「昨晩の騒ぎで眠くはないの?。」

「午後には少し休みますよ。大体いつもそうしてます。」

「ネリ・ショー殿達のための買い物が終わったら、三の鐘までには帰ってこれるぐらいで、ここに戻る道筋の店だけで気になるものを探すよ。午後も出たいからね。」

「わかりました。行きましょう。」



 「高級な装身具の店」では窓にガラスも使われていた。モルや王城で見たのよりは少し小さい二十センチ程の正方形を組み合わせたものだが、このあたりの基準で見ればお高い作りだ。中で店員やカルラの話も聞きながら品物を見る。ネリには金鎖、エンリに銀鎖のネックレスが選ばれた。ペンダントトップとして、αの助言も入れようと思ったのだが、店員とカルラの推薦で、それぞれ改鋳前の古い金貨と銀貨を付けることになった。金鎖には銀貨、銀鎖には金貨だ。「お金に困ることがないように」という縁起物になるらしい。何処の社会でもありがちなものだ。無難と言えば無難だな。


 ネゲイ館までの帰路では道具屋なども覗いてみる。石鹸も買ってみた。オレが作ったもの、ネゲイで今まで作っていたものとも比べてみたい。工具類も幾つか。材料の強度や成分分析でネゲイとカースンの技術力の違いがわかるかもしれない。中古品が多い蚤の市ではわからなかったが、こういう店で買えば生産者が誰なのかもわかった。流通の仲介業というものがあまり発達していないので、店から職人個人か職人組合に発注することが多いためだ。気に入った品物があれば、その職人との直接取引も考えよう。


 またネゲイ館で荷物を整理して、やっとこれで海に行ける。まず、これからの実験に備えて「謎物質」の錠剤を一錠飲んでおこう。



 一昨日にジンの案内でも来ている浜辺に到着。小舟を貸している店で一艘のを調達し、バギーで曳航しながら水上へ出た。曳航中は推進用の尾部斥力場が使えないので側面斥力場を偏向させて推進する。スピードは出ない。それほどスピードを出すつもりもなかったが。


 バギーにアン、小舟にオレだ。朝から、イヤ、夜が明ける前から色々あって、既に一日分をたっぷり働いた気分になりかけているが、実ままだ今日の第一目標の仕事をこれから始めるところだ。手順の確認からだな。まず沖に数キロほど出て水深を測る。ネゲイにいた頃に作ったガラス繊維の巻尺に錘を付けて伸ばす。五〇メートル超。OK。巻尺を引き上げて用意していたチェックリストに従って海水からの成分抽出を始めた。リストの一番は、単純に塩化ナトリウムから始まっている。オレが小舟に乗っているのは、間違ってバギーから成分抽出をしないようにするためだ。小舟はバギーから三十メートル程離れている。オレは指向性をできるだけ後方、対象を海水だけに限定するよう意識しながらリストを埋めて、中身の入ったサンプラーを貯めてゆく。バギーは直径数キロの大きな円でゆっくりとオレが乗る小舟を曳きながら進む。


 一時間ほどで、二十本ほどのサンプラーを満たした。今日は何が採れるかを確認することが目的なので、サンプル一種類あたり百秒を目安にしている。塩化ナトリウムから始まって鉄と金銀銅、その他の使えそうな金属、稀土類、ガラスや鏡の話もあるのでリストには錫と水銀も加えた。途中で「微量成分」も補充したが、限界に近い。「微量成分」或いは「謎物質」も服用してすぐに血流に入るわけではない。点滴は大袈裟すぎる。アンがバギーを小舟に寄せてくれたのでにサンプラーが入った布袋を渡し、オレも移乗する。揺れもあるし足下も怪しいので少し危なかったが、まあ、なんとかはなった。アンの口でαが言う。


「休んだ方がいいわ。ちょっときついかもと思った数のサンプルを取ってるから。ボートの返却とか、全部こっちでやっておくからネゲイ館に戻るまではそのまま寝てていいわよ。」

「そうさせてもらおう。ネゲイ館に着いても、出発まで部屋で寝るよ。もう、夜中の賊騒ぎから、疲れた。夕方までに復活したい。」



 ネゲイ館に戻ると昨晩の続報が届いていた。昼過ぎに警邏から一人来て報告していったらしい。捕まった賊は兄弟で、前科あり。昨日カースンの町中でバギーを見ていたとのこと。敷地の外で待機していて逃げた仲間の名前もわかった。とはいえ、市外に出てしまっていれば追うのはむつかしく、捕縛の望みは薄い。捕まった二人は、初犯なら鞭とかになるのだが、再犯なので鉱山だろうと聞いた。腕が折れているが、そのあたりをどうするかは知らない。単純な窃盗未遂だったということで、事後のことを丸投げできるのもいい。フショップがネゲイに来るのが七月十五日頃との連絡も入っていた。それほど日を置いていないから材料サンプルを送ることは不要との添え書きもある。途中で入れ違いになる可能性を考えたのだろう。報告も聞いたから、しばらく寝よう。まだ二時間ほど休めるはず。



 一七〇〇M。強制睡眠で体はだいぶ楽になっている。荷物の片付けと点検はアンがほぼ終わらせてくれている。こんな単純作業でアンが間違えることは心配していないが、オレも一応目視で確認した。バギーにはバース達の荷物も積み終えている。出発を予定していた五の鐘まで、軽食と別れの挨拶だ。緯度が高く夏至も近いので、五の鐘も地球的に考えると二〇時近い。ハンナも商務省を出てこちらの方向に移動を始めたとαが教えてくれた。


 ネゲイ館に到着したハンナと挨拶を交わす。彼女も「夜中に移動すると聞いて用意しました。これを食べると眠気が覚めます。」と何かの果物を干したものを持ってきてくれていた。礼を言って受け取る。あと、頼み忘れていた案件がある。


「ハンナ殿を迎える前に、一度セバヤンで挨拶しておいた方がいいと思ってるんだ。一緒に行くか、紹介状を作ってもらって私一人で行くか、決めかねてるけど、紹介状を用意しておいてもらってもいいかな?。」

「いいですよ。一緒に行けば要らないものでしょうけど、これから二人とも忙しくなるでしょうからね。」


 ドリーとバクスは「連絡はネゲイ館とネゲイの間の定期便に入れれば……」などと今後の事務的な話しもしている。近いうちに一度ハンナがネゲイに来ることは決定事項だ。別れの挨拶と一緒に、日程が固まったら知らせてくれるように頼んでバギーに乗り込んだ。丁度五の鐘が鳴る。オレ達は出発した。あたりが暗くなるとカースンにばらまいていた「虫」達が順次帰ってくる。「虫」の回収を終えると、アンはスピードを上げた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ