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Operation Start 2



ロシア連邦――――

ナジェージタ郊外

某所 19:05


街を見下ろせる小高い山の中腹・・・


一見何も無いように見える林の中なのだが・・・


数分前に降り始めた雪が、宙に積もり崩れ落ちた。



そこには――――



新装備(Optical Camouflage,Active camouflage<光学迷彩>)に身を包んだ21式が潜伏していたのである。



前回の戦闘でかなりのダメージを負った21式は・・・新装甲とその上面に厚さ数ミリの特殊板が取り付けられていた。



それが光学迷彩である。



各部に取り付けられたカメラがその場の景色を取り込み表示するのだが・・・積雪、被弾や接触により効力を失う等、まだまだ問題点も多いのだが、実用化に至り今回装備されていたのだ。



その機体から通信が飛ぶ。



≪ピピ!≫


「特機3から特機1。ロシア軍及びSFGの行動開始の無線を傍受・・・


 作戦開始です!」



「特機1了解。各機、無線封鎖解除!異常の有無送れ」


伊達がそう話すと各機から「異常無し」の報告が返ってくる。


「特機1、了解」


「3号機、UAVを放出し情報を収集せよ。他は現状のまま待機。各機、警戒を怠るな!」


そう話しながら伊達はモニターに目を向ける。



作戦開始と同時に情報部からもたらされたロシア軍とSFGのIFF(敵味方識別装置)が、MAP上に青と緑の光点として表示されていた。




(何事も無ければ良いが・・・)


伊達のその願いは・・・ロシア軍指揮官と同様に5分で終わる事となる。



≪ピッ!≫


「こちら3号機!ロシア軍が交戦!奇襲を受けた模様!」


「なっ!?本当か?」


「はい。無線開きます!」



工藤1曹がそう言うとすぐに彼等の無線が機内に飛び込んできた。


あまりロシア語を理解していない伊達だったがその切迫した空気は確かに伝わって来ていたのだ。


「3号機。SFGの状況は?」


「現在、施設内に潜入中、異常ありません!」


「1号了解。引き続きSFGの状況をマーク。我々の目的は彼等の護衛と援護だという事を忘れるな」



伊達はそう言いつつどんな状況にでも対応すべく思考を巡らせるのだった。


そして彼は3号機に戦況を逐次報告するように命じた。


リンクシステムによりかなりの情報は共有可能であるのだが・・・3号機の情報処理能力が小隊の中で群を抜いて優れているのは言うまでもないだろう。



そして、その3号機からすぐに戦況が飛び込んで来る。


「戦車小隊が動き出しました。1個小隊が中央ゲートへ向け前進中!もう1個小隊は第1機動エレベーター方向です」


そう言うと工藤1曹はUAVをエレベーター方向へと向け飛行させた。



そのUAVのカメラがエレベーター上の移動物を瞬時に捕捉し拡大表示した映像を彼等へと届けた。


「!」


それを見た工藤は伊達へと報告する。


「ブラックイーグル・・・ブラックイーグルが敵施設内より出現」



「ブラックイーグル?」



名前を言われその装備が何なのか判らない速水が聞き返した。



工藤はキーボードを素早く操作し、各機にその車両の写真を転送しつつ説明を始めた。


「・・・1997年にオムスク戦車工場が独自に開発し公開された戦車です。現在まで軍に配備された情報はありません。あれから姿を消したと思われていた戦車なのですが・・・」



そう言う工藤に伊達が付け加える。


「情報部から聞いた話しだが・・・ロシアは99年に国際石油価格が高騰したことやルーブル切り下げの効果により国内の輸入代替産業が復調し始めた・・・


 幸運にも国際石油価格がその後も比較的高値で維持され、エネルギー関連産業の好調が続き、2003年に入りイラク情勢などの影響で国際石油価格が再度高騰したことを背景に、現在までロシア経済は非常に好調に推移しているのだが・・・


 その半面、ロシアはエネルギー産業への依存度が高く、その基盤は未だ脆弱であり、石油や天然ガスの輸出で稼いだ資金を軍需産業に回し、新たな外貨獲得に動いているらしいのだ。


あの戦車はその産物だろう・・・元々、輸出用と噂された事もある物だからな」


伊達はそう言うと3号機にその戦車の緒元を各機に転送するように命じたのだ。


その緒元は以下の通りである――――


ブラックイーグル(チョールヌイ・オリョール)主力戦車


武装

2A46M125mm滑腔砲×1

補助武装は不明

搭載弾数 約40発

AT・11リフレックス

重量 50トン

乗員 3名

全長 7m

全幅 3.582m

全高 1.8m

最大装甲厚 推定700mm

夜間暗視装置 有

NBC装置 有


・・・・・・





「リフレクス?」


今度はデータを見た君嶋3曹が尋ねる。


「対戦車ミサイルです。ロシア軍の戦車は主砲から対戦車ミサイルが射撃可能なのです」


そう言う工藤に君嶋は納得した。




その間にもロシア軍とベンヌの戦は続いていた・・・














同時刻――――



ロシア軍

第302戦車大隊 第2小隊



作戦開始5分でマルゲロフ大佐から出撃命令が下った第2戦車小隊は、目標である第1機動エレベーターへ向け前進していた。


市街地を迂回し、西側より4両の戦車で菱形の体型を維持しつつ隊を進めていく。



スペッツナズ第4小隊の情報により機動エレベーターから新型の戦車が出て来た事は確認済みなのだが・・・まさか戦車戦になろうとは派遣された戦車小隊の隊員誰もが想像していなかったのだ。



そこにスペッツナズ第4小隊から無線が入る。



「増援の戦車小隊か?」


「こちら第2戦車小隊。支援に来たぞ。後は任せろ」


戦車小隊がそう答えるとすぐに無線が返ってくる。


「馬鹿野郎!先頭車両、前に出るな!狙われているぞ!」


その通信が入った瞬間、発砲音と共に先頭を走るT-90が被弾したのだ。



車体に一瞬、火花が散る。


APFSDS弾はタングステン合金の弾芯が装甲板を貫徹すると、侵徹体と装甲板の高温溶融物と侵徹体の残余、装甲板内側の破砕片が装甲板内部空間に飛散する。


装甲板の厚みに関わり無く、侵徹孔を中心とした約60度の範囲に飛散し。その飛散物によって人員を殺傷するのだ。


被弾した先頭車両は更に運悪く、それによって生じた高温の破片が砲弾に当たり全ての砲弾を誘爆させ、その爆圧により砲塔を車体から引き剥がし爆発したのである。



それを見た残りの戦車が一斉に停車し後進をかける。


ロシア軍自慢のERA(Explosive Reactive Armour:爆発反応装甲)もその新型戦車の砲弾の前では・・・その意味を成さなかったのである。


「全車に告ぐ。敵戦車は我々と同じ125mm砲にあらず!恐らくは新開発の140mmか152mm砲が搭載されて模様・・・各車、散開。これより反撃に出る」


戦車小隊長はそう言うと本部に連絡し、ヘリの支援を要請したのである。


「こちら3号機。ロシア軍の戦車が1両撃破されました」


そう告げながら工藤はHUDに映し出される様々な情報を目で追っていた。



撃破された戦車を大きく迂回し反撃に出る戦車小隊。


そこに、北西より接近する航空機がレーダーに映し出された。


要請により支援に向かうKa-50ホーカム2である。


旧式化したクリモフTV3-117VMAエンジンを改良した機体で、旧AH-64の1.9倍の出力を持ち、攻撃ヘリ初の二重反転ローターをもつ機体として有名であると共に・・・


 乗員が1名の攻撃ヘリで、それを補う為、ディスプレイ上の捜索したい箇所にフレームをかぶせると自動的に捜索を行い、発見した目標を自動的にロックオンし、事前設定により攻撃開始距離に達すると、自動的に攻撃を開始するシステムを有していた。


その2つの光点が第1機動エレベーターへと接近していく。



エレベーター周辺に展開しているブラックイーグルは5両であり、全車両がロシア軍第2戦車小隊を殲滅すべく行動していた。



その側面を突く形でホーカム2は攻撃を開始したのである。


ホバーリングで林の上へと上昇したホーカムは瞬時にIFFの信号を出していないブラックイーグルを捕捉する。


そして、一番近くのブラックイーグルに対し9A4172ヴィキール対戦車ミサイルを発射した。



発射された成形炸薬弾頭の対戦車ミサイルは900mmの装甲板を貫通する能力を持ち、初速400m/sで撃ち出され、最大マッハ1.8まで加速し目標へと向かっていく。



が、目標が近かった為ミサイルがそこまで加速する前にブラックイーグルに装備されたアクティブ防護システムのドロズド2APS(対戦車ミサイル防衛システム)が反応し、散弾をミサイルに向け発射した。


その散弾はミサイルの弾頭を見事に捉え、戦車直前、約30m手前で爆発する。



だが、そのシステムよりホーカムのパイロットの方が一枚上手だった。


ロシア軍のT-90にもブラックイーグル同様にアレナシステムという対戦車ミサイル防衛システムが搭載されており、その対応策として間隔を開けもう1発のミサイルを発射していたのであった。


正面装甲700mmを誇るブラックイーグルだが、先も記した通り900mmの装甲を貫通可能な対戦車ミサイルが、上面装甲に突き刺さる。


ミサイルを受けた戦車は轟音と共に爆発炎上し沈黙した。















それから数分――――



雪原を舞う黒い鮫。


ロシアではチェルナヤ・アクラ(ブラックシャーク)と呼ばれるホーカム攻撃ヘリ。



その牙が鷲に襲い掛かる。



T-90より攻撃力・防御力共に優れる新型ブラックイーグル。


現代の戦車は対ヘリ攻撃も可能であるのだが・・・急襲を受け、ましてや天敵と言われる攻撃ヘリの前では余りにも無力であった。



瞬く間に展開していた5両のうち3両の戦車が撃破され、殺られまいと建物の陰へとその身を潜めるのだが・・・


反撃に出た第2戦車小隊はそれを見逃さなかったのである。


仲間の仇と125mm砲4門が2両のブラックイーグルへ・・・その照準を定めると一斉にその砲口から砲弾を吐き出した。


まるで巨大なフラッシュが焚かれたかのように雪原を明るく照らし出し、その砲弾はブラックイーグルへと突き刺さる。


始めに大破したT-90同様、APFSDS弾はその効力を発揮しブラックイーグルを無力化したのだ。



そして、それを見ていたスペッツナズ第4小隊から通信が入る。


「敵戦車の無力化を確認。これより施設内に突入する。支援感謝する」



そう言うと彼等はエレベーター脇の階段を施設内部へ向け突入して行った。



時を同じく――――第2機動エレベーターから出現した敵戦車もスーパーハインドにより制圧され、正面ゲートで暴れていたブラックイーグルも第1戦車小隊が制圧し、不意急襲を受けかなりの犠牲を出したロシア軍であったが兵力で上回る彼等が形勢を取り戻して来たのである。



最も被害が大きかったスペッツナズ第1小隊にも第5小隊が無事合流し負傷者を後方へ搬送すると共に、施設内への突入を再開する。



第3小隊も第2機動エレベーターより突入を開始していた。



これで要約、計画されていた日露合同作戦の本来の幕が開いたと言って過言では無いのだろう・・・







だが、本当にその幕はまだ開いたばかりなのだ・・・




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