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第八章 一般家庭

数年が経った。

ロボットは、特別な存在ではなくなっていた。

企業や公共施設で使われていた機種は、少しずつ小型化され、性能を上げながら価格を下げていった。

そしてついに、個人でも購入できる価格になった。

町の電器店やホームセンターにも、様々なロボットが並ぶようになった。

店員「こちらは床掃除だけでなく、ゴミの分別まで自動で行います」

客「へえ……」

店員「AIが家の間取りを学習して、効率のいいルートを判断します。充電も自動です」

客「値段は?」

店員「以前に比べれば、かなり安くなっています」

客「……これなら買ってもいいな」

最初は掃除だった。

床を掃除する。

部屋の埃を取る。

ゴミを集める。

そして、ゴミを種類ごとに分別する。

人がやることは、ほとんどない。

やがて洗濯にも対応するようになった。

洗濯物を仕分ける。

洗濯機を動かす。

乾燥が終われば、衣類を取り出して指定された場所へ運ぶ。

料理にもAIが入り込んだ。

冷蔵庫の中身を確認し、献立を考える。

不足している食材は自動的に注文する。

調理ロボットが対応できる料理なら、人が包丁を握る必要すらない。

主婦「今日の夕飯、何にしようかしら」

AI「冷蔵庫の食材から三種類の献立を提案します」

主婦「じゃあ、それで」

それだけだった。

最初は、誰もが喜んだ。

家事の時間が減った。

自由な時間が増えた。

仕事から帰ってきても、掃除も洗濯も終わっている。

買い物まで済んでいる。

便利だった。

そして、家の中だけでは終わらなかった。

家庭用ロボットが集めたゴミは、決められた場所へ運ばれる。

翌朝。

自治体が管理する回収ロボットが、住宅街を巡回していた。

家庭用ロボットがゴミを搬出する。

回収ロボットは種類や重量を確認し、回収する。

そして、処理施設へ向かう。

そこでは別のAIとロボットが待っている。

最終的な分別。

圧縮。

焼却。

再資源化。

これらの工程まで、自動化されていった。

人がゴミを集める必要はなくなった。

人がゴミを運ぶ必要もなくなった。

人が処理する必要もなくなった。

すべてが繋がっていた。

家庭。

回収。

運搬。

処理施設。

一つの仕組みとして、AIによって管理されていた。

ある家庭では、子供が母親に尋ねた。

子供「ゴミって、どうやって捨てるの?」

母親「ロボットがやってくれるのよ」

子供「じゃあ、何もしなくていいんだ」

母親「そうね」

母親は笑った。

それが当たり前だった。

別の日。

家事ロボットが故障した。

妻「どうしよう……」

夫「修理を呼べばいいだろ」

妻「今日の夕飯は?」

夫「……」

二人は顔を見合わせた。

冷蔵庫には食材がある。

料理もできる。

洗濯もできる。

掃除もできる。

昔なら、当たり前にやっていたことだ。

しかし――

二人は、何から始めればいいのか分からなかった。

妻「AIに聞いてみる?」

夫「……そうだな」

スマートフォンを取り出す。

AIに相談する。

数秒後。

夕食の献立。

調理方法。

洗濯の手順。

掃除の方法。

必要なことが、すべて表示された。

夫「これならできそうだ」

妻「よかった」

二人は安心した。

ロボットがなくても、

AIが教えてくれる。

だから問題ない。

その夜。

二人はAIの指示通りに夕食を作った。

食事を終える。

妻「疲れた……」

夫「昔の人って、毎日これやってたのか?」

妻「大変だったんだね」

二人は笑った。

翌日。

修理された家事ロボットが戻ってきた。

二人は心から安心した。

自分たちで家事をしなくて済むことに。

社会も同じだった。

便利になった。

楽になった。

面倒なことは、ロボットがやってくれる。

判断が必要なことは、AIが教えてくれる。

人間がやることは、少しずつ減っていった。

そして誰も、そのことを問題だとは思わなかった。

むしろ、

「昔の人は大変だったんだな」

そう考えるようになっていた。

人間の生活から、

面倒なことが一つずつ消えていく。

掃除。

洗濯。

料理。

買い物。

ゴミ捨て。

そして――

いつの間にか、

「自分でやる」という行為そのものが、面倒なものになっていた。

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