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異世界服屋ユルクドレスアップ〜スキル【服装図鑑】で服のお悩み解決します 〜   作者: 鏡野スガタ


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ポーション売りの個性を出す服装

 さぁ、今日も元気に開店した。


 天気もいいし、客入りも上々だ。


 私一人じゃ無理だから分身も出して、接客にレジに棚の整理にと忙しいな――


 お、お客さんがまた来た!


「いらっしいませ!」


 明るい声かけとスマイル。


「こんにちは!」


 負けないくらい明るい返事とスマイルをくれた。

 ああ、この人は客ではない商人だ――


 カゴに商品を入れている売り子さん。

 花とかパンとかお菓子とかポーションとか、売り歩きの人よく来るんだ。

 接客で店を離れられないから、店で飾る花や昼食や三時のおやつを買ったりに助かっている。

 この売り子さんは見ない顔だ、新人さんかな。


「ポーションはいかがですか? お仕事の疲れを吹き飛ばして元気になれますよ!」


 ポーションか。

 休日明けの体に元気を足しておくかな――


「いいですね、一本ください」

「ありがとうございます! 一本、2000リラになります」

「2000リラ!?」


 高い……1000リラのチュニックが2着買えるよ。


「こちらは、もっと元気が出て効果が数日続く特性ポーションで5000リラです!」


 さらに高いの勧められた! 5000リラあればチュニックにズボンやスカートまで買える!


 この何の変哲もないようで強気なお値段を提示する売り子さん、服装観察してみよう――



 ポーション売りの服装1

挿絵(By みてみん)

 買ってあげたくなるスマイルだ。

 頭には三角巾(さんかくきん) (ヘッドスカーフ、バンダナ、頭巾(ずきん)頭布(とうふ)などともいう)。

髪が商品に落ちるのを防ぎ、町中で売り歩く時の日差しよけにもなる。

 清潔な白いブラウスと腰エプロン。

 革のコルセットベスト。紐で締め上げないベルト留めだ。ベルトは飾りでボタンの場合もある。

 スカートは三角巾と同じ紫色。ポーション売りだからか魔女っぽい色使いにしているようだ。

 可愛さが垣間見える赤い靴。


 説明を省いた簡単な名前は、売り子の仕事服だ。

 売り子スタイル、行商人の仕事服、ペドラー (Peddler、行商人の意味)または ホーカー (Hawker、行商人の意味)スタイル、三角巾とエプロンのワークスタイルなどともいう。

 このような服装は売り子の定番スタイルだ。

 他の売り子さんはだいたい100マネラ〜1000マネラの商品を売っている。

 この売り子さんは2000マネラ〜5000マネラの商品を売っている。

 似たような売り子さんのなかで一人だけ高い商品を売っている印象になってしまっている。

 私のように、他の安く売ってる人から買おうとなる客がいても不思議ではない。


「あ……」


 私のスマイルを失った顔を見て、売り子さんもスマイルを消し表情を悲しげなものにした。


「やっぱり、高いですか?」

「え、ええ。ちょっとビックリしましたよ」

「そうですよね。でも、これは秘伝の調合で作った特別なポーションなんです!」


 売り子さんは手にしたポーションボトルを握り、真剣で熱意に満ちた接客スマイルをみせた。


「私の祖母から受け継いだもので、効果は保証します!」

「お祖母(ばあ)様から……そういえば、買ったことがあるような。お祖母様、黒いペンダントを着けてませんでしたか?」

「はい、そうです!」


 やはり、あのベテラン売り子さんか――


 売り子さんのおばあさん

挿絵(By みてみん)

 おばあさんには「買って飲んでみよう、いや、買って飲まなきゃいけない」と思わせる販売力があった。

 その力は、おばあさんの怪しい魅力を引き出す服装からも溢れ出している――

 紫一色で一目で魔法や神秘を連想させる仕事服。

 年季の入ったウィザードハット。幾重にも巻かれている謎のハットバンド。ツバには魔法の呪文が刻印されいる、ハットは被る以外にも使い道があるのだろう。

 フードワンピースと銀紋様のガルーントリム (縁飾り)があるオープンフロントローブ。

 おばあさんには似つかわしくないような、ワイルドな行商が垣間見えるフィンガーレスグローブ。

 アクセサリーは印象に残っていた大きな黒い宝石のペンダント。魔法石だろうか、怪しい輝きを放っていた――


「祖母は、同じ値段でも完売できたんです」


 そうでしょうねと頷いておこう。

 売り子さんは悩み顔だ。


「私だと完売できなくて……興味を持ってくれる人は多いんですけど、高いね、安くしてとか言われたり、他のポーションと何が違うの?と効果を疑われたり、上手く売れないんです……」

「お祖母様には、有無を言わせず買わせる力がありましたからねぇ」

「ですよね」


 一緒に、あははと笑う。

 しかし、売り子さんはまた悩み顔になった、

 祖母からポーションと売り子業を引き継いだのに、上手く売れないから。気の毒だ。


「私にはまだまだ、無理ですよね」

「仕方ありませんよ。まず、お祖母様とは服装がまるで違いますからね」


 服屋としては、やはりそこを焦点にしよう。


「服ですか?」


 売り子さんは自分の姿を見直した。


「ええ、あの "いかにも魔女"というお祖母様の格好と胸のペンダントは、お客に購買意欲をそそるインパクトを与えていましたよ」

「……ペンダント、私にもブローチを作ってくれたのを持ってるんです――」


 売り子さんはカゴの中から、黒く輝くブローチを出して見せた。


「お守りなんです、祖母が魔法を込めてくれて "これがあれば安心して売り歩きできるよ"って」


 魔法……売り子さんやブローチに触れたら呪われるとかだろうか?


「そのブローチは、着けないんですか?」

「……やっぱり、祖母と同じ格好をしてブローチを着けたほうが良いですよね!?」


 売り子さんは揺れる瞳を向けてきた。


「本当は、そうしようと思って来たんです。その前に今の私でポーションを買ってもらえるか試してみて、やっぱりダメで……」

「そうだったんですか」


 最初から服装を変えるつもりで来たのか。


「それでは、お祖母様のような服装をしてみますか?」

「はっ、はい!」


 売り子さんは決意に満ちたスマイルをくれた。

 ではさっそく、魔法服コーナーへご案内。


「お祖母様に見た目を似せていくのは良い販売戦略ですよ。他の売り子さんとの違いを一瞬で見せることができますからね、ちょっとお高いポーションでも買おうと思わせる服装をしましょう!」

「お願いします!」

「――これなどはどうですか?」

「着てみて、ちょっと試しにポーションを店主さんに勧めてみますね!」



 ポーション売りの服装2

挿絵(By みてみん)

 おばあさんに寄せた服装だ。

 ウィザードハットは魔女のトレードマーク。

 ケープネックとウィザードスリーブでさらに魔女の雰囲気を出し、売り子さんのスタイルの良さも見せるタイトなローブ。銅色の紋様のガルーントリムは銀とは印象のことなる明るさがある。

 ロングスカートにはスリットがあり歩きやすい。

 シックな黒いレースのロンググローブとレザーブーツ。

 腰の銀のベルトにはシャトレーンという複数のチェーンやフックの付いた留め具を装着しており、ポーションと銀剣の飾りを()げている。ポーションはディスプレイにもなり、カゴに全部入れないことで重さを分散もできる。自然な感じでオシャレアイテムにもなっている。

 胸元にはお守りのブローチ。神秘的な雰囲気を醸し出している。


「お似合いですよ! 全体的にエレガントで高級感のある服装で、秘伝の調合をしそうな魔女感が出ていて、お高めのポーションでも買おうと思えるようになっています!」


 自信と信頼のスマイル。


「ありがとうございますっ、私がこんな格好をするなんて……!」


 お客さんはまだ不安でドキドキしているようだ。


「いきなり、おばあさんに寄せすぎましたか――さっきの服でも、興味を持ってくれる人は多いとおっしゃっていましたね」


 怪しい雰囲気でちょっと近寄り難かった、おばあさんには無い "力"だ。


「あの感じで、売り子さんの近寄りやすい雰囲気を出す服も着てみますか?」

「はいっ、お願いします!」



 ポーション売りの服装3

挿絵(By みてみん)

 売り子さんの良さと魔女の良さを混ぜた服装だ。

 可愛いミニウィザードハット。斜めに被るのがポイント。落ちないようにハットピンで髪に留めたり、魔法で装着したりする。

 ハットに合わせた可愛いパフスリーブのニーレングス (膝丈)ワンピース。

 胸元のリボンにはお守りブローチ。神秘的でこちらの服装ではちょっと怪しげな輝きにも見える。

 金糸刺繍のされた美しい薄紫の腰エプロンは魔女らしさと売り子らしさが出ている。

 シックでアクティブな黒い編み上げブーツ。


「こちらもお似合いですよ! 全体的に紫と黒でまとめて他の売り子さんとの違いを見せつつ、親しみやすい雰囲気が出ていて買いやすさがありますよ!」


 自信と絶賛のスマイル。


「ありがとうございます! こっちも良いですね……どっちにしようかな!?」


 お客さんは大変迷っているようだ。

 こういう時は、どっちも買ってもらうように勧めるのみだ!


「どちらも着てみて、お客さんの反応を見て決めてはいかがですか?」

「そうですね!」


 よし、フククッ


「歩きやすさや、着心地も確かめられて、他の格好も選んでもいいですし」


 さらに買ってもらう方向にも勧めておこう。


「そうですね。一度、これとこれを着て売り歩いてみます!」


 無事、お買い上げ!

 この二種類の服装をよく覚えておこう。これからまた個性を出したい人が来たときに、お勧めする服装が被らないようにしないといけないからな。


 自分だけの新しい仕事服を手に入れた売り子さん、胸元のブローチに手を当てて嬉しそうだ。


「ありがとうございました。これで、売り上手だった祖母に近づけそうです。これ、お礼にどうぞ!」


 おおっ、2000リラのポーションをタダで貰えた!


「ありがとうございます!」

「5000リラのほうは、今度買ってください」


 すかさず契約を持ちかけるスマイル。

 さっそく、売り子さんの商人魂に火がついたようだ。


「そ、そうですね、店が忙しくて元気がほしい時に」

「町中も歩いてますから、いつでも買いに来てください!」

「はい! お客さんもまたいらしてください」

「はい!」


 お互い上々の成り行きにスマイルを交わす。


「それでは、また!」

「完売しますように祈っていますよ!」


 商人仲間として――

 さぁ、私もこの調子でもっともっと服を売らないとな!


補足です。


売り子さんの三種類の服装、一番目はファンタジーの町によくいますね。二番目が一番ファンタジーっぽくて三番目は少し現代風でもあるような気がします。


売り子さんやファンタジーの娘がよく被っている三角巾ですが、三角巾が一番伝わりやすい気がしますが現代風すぎますかね。頭巾だと赤ずきんちゃんの大きなフードを想像してしまうでしょうか。こういう些細な部分もやはり考えだすと悩みますね。


異世界服屋の世界のお金の単位を初めてだしました。

服の値段ではなくポーションの値段でになってしまいましたね。

リラは円、2000リラ=2000円です。元気を出す栄養ドリンクにしては高いですね。

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