モンスター男子とギャップ萌え (ゲイン・ロス効果)
さすがに、ウサギ族と走り回ったら疲れたな。
ゆっくり歩いて帰るとするか、戻ろう――
川のせせらぎの音がする、ちょっと寄っていくか。
ん? また、何者か居る。
頭には黒い角が生えている! 魔族だろうか?
今度こそヤバいか!? また震えてきた……
ちょっと、木の陰に隠れて様子を見よう。
魔族にしては禍々しさみたいなのがないな……
最近よく聞くモンスター男子という者だろうか?
ドラゴンの角にも見えてきた、ドラゴン族はこの辺にいないので冒険者だろうか。
どちらにしろ近づくのは危険そうだ……
しかし、服装観察をしたい!
モンスター族やドラゴン族は珍しいからな。
服屋の店主として恐怖より興味が勝つ。
よし、近づいて挨拶してみよう!
「こんにちは」
落ち着いた声かけとスマイル。
「こんにちは」
返事をくれた!
無表情でそっけない返事だが構わない。
後はこっちから話を進めるだけだ。
「この先にある町の服屋ユルク◊ドレスアップの店主でございます。はじめまして」
「服屋さんですか。はじめまして、ドラゴン族のオプシディアンといいます」
やっぱりドラゴン族かぁ!
大きな町にある我が店にも滅多に来ない幻の客だ。
孤高で近寄りがたいと噂にも聞くし、前来たドラゴン族のお客さんもそうだった。
オプシディアンさんにも威圧されたりするかと思ったけど、意外に雰囲気は穏やかだし何より……
話せる! 敬語だし! そっけない話し方するかと思ってたからこれは、凄まじいギャップだな。
好感度がグンと上がった!
女子が悪い男子の優しい一面見て好きになっちゃうのもわかるってな体験だ。
こちらも親しみを込めたスマイルをみせよう。
「ドラゴン族の方でしたか」
まだ若いし、格好はラフだ。
上半身は裸に近い。ま、ドラゴン族ならそうそう怪我とかしないからか。
「そのタトゥーはドラゴン族の? 凄いですね!」
「一族の者である証のドラゴンを模したタトゥーです。俺達ドラゴン族の爪でしか彫れません」
へぇー! ほぉ~とリアクションしながら近づくとよく見せてくれた。
このチャンスを逃さず全体の服装観察。
ドラゴン族の服装
一目でヤバいと思わせる凄く強そうで怖い、とても敬語を話すようには見えない姿だ。
ドラゴンが絡みついているような見事なタトゥー。
種族や民族特有の模様や彫り方のものはトライバル (部族、民族)タトゥー、トライブ (tribe、種族)タトゥー、種族紋様などという。
黒いファーつきマント。
素材はドラゴン族の特殊な黒革 (ブラックレザー)。
留め具はアシンメトリーメダリオンのボタンストラップ。
黒革のフィンガーレスグローブ。
黒革のズボン。
ベルトには飾りストラップ。サスペンダーかウエストハーネスかもしれない。
太ももにはレッグベルト。オシャレにもなりフックでバッグやホルダーなどを付けることもできる。ベルトが必要な時に外して使うこともできる。
見えないがブーツ。
説明を省いた簡単な名前はドラゴン族の服だ。
〇〇族特有の服装、種族衣装、トライバルスタイルなどともいう。
オプシディアンさんの服装は全体的に黒い。
モンスター族や獣人は服がモンスター化や獣化した時の姿形を現していることがある。彼らの服を作るとなんだかそういう特徴をとらえたデザインになるのだ。
オプシディアンさんがドラゴン化するとファーのような首飾りのある黒いドラゴンになるかもしれない。
「興味津々ですね。珍しいですか?」
声音は穏やかだが目つきが鋭くなっている。
ちょっとジロジロ見すぎたか。
素早く適切な距離に戻って、警戒心を解くスマイル。
「ドラゴン族の方は初めて見たものですから。私は服屋という職業柄、 道行く人々の服装にも興味があって見せてもらっているんですよ」
ロゴ入りバッジを指差して店の宣伝。
「そうなんですか」
ほう、という感じで頷いて納得してくれたようだ。
「お客さんがお求めになる、あらゆる服を用意していますよ。よかったら寄っていってください」
最高の接客スマイル。
これで大半の者は "寄っていこうかな" となる。
しかし、今回のお客さん候補は迷っているようだ。
「ありがたいですけど、俺は一族が作る服しか着れないかもしれません」
「形状を変える魔法の服でしょうか。ドラゴンになっても破れなかったりする」
「そうです。ドラゴンになるとき服が消えて、この姿に戻ると服も戻ります」
オプシディアンさんは距離をとるとドラゴンに変身した。
ドラゴン化した姿
想像通りブラックドラゴンだ。
髪の色と同じ銀色のメッシュとマントのファーみたいな鬣がある。
「カッコいい!! 強そう!」
ビリビリと伝わってくる強さに恐怖で声とスマイルが震えるが、負けじと接客を忘れず、しかし、興奮のままに拍手。
『普通の服だと変身したら破れるかもしれませんよね』
オプシディアンさんはそれを心配しているのか。
「大丈夫です」
安心と信頼のスマイル。
「うちの店には様々な種族のお客さんが来ます。モンスター化に対応する魔法の服もありますよ」
『そうなんですか』
驚いた様子だ。
ここでさらに服の宣伝をして興味を引こう。
「私が着ているこのローブも魔法が付与されている特殊生地でできているんですよ。最高レベルの防御魔法です。ちょっと、爪で引っ掻いてみてください」
『いいんですか? 』
「どうぞ、遠慮なく」
ちょっと怖いけど、これも服の宣伝のためだ!
身を差し出すように背中を向けてと。
オプシディアンさんは控えめに爪を立ててきた。
ローブの生地に爪が当たるのがわかる――
「痛くないですか?」
「はい、痛くありませんよ!」
安心と余裕のスマイル。
確認したオプシディアンさんは爪を少し動かしていく。
しかし、ローブはビリビリなどと悲劇的な音は立てない。爪が生地に食い込むのを引き裂くのを強固に防ぎ弾き返しているのがわかる。
「本当ですね、ローブが硬くて爪を立てても攻撃になりません」
オプシディアンさんはビックリしたままに爪を離した。
「凄い魔法のローブですね」
お客が商品の実演に感心したところで、
「ぜひ、店に来て他の服も見ていってください」
すかさず、声かけとスマイル。
「そうですね、ちょうどレベル上げの冒険に行くところなんです。必要な服を買っていこうかな」
「冒険に必要な装備も色々ありますよ」
「助かります」
客引き成功だ。
人間形態に戻り、お客となったオプシディアンさん。
初めて見せてくれた笑顔は期待に満ちている。
「店はこちらです」
自信を持って案内しよう!
「この森を通って色んなお客さんがいらっしゃいますよ」
リラックスしてもらうためにも雑談しながら歩く。
「さっきも、ウサギ族のお客さんに会いましてね」
「ウサギ族ですか。本当に色んなお客さんが居るんですね」
「お嬢様の服からメイドさんの制服まで、ご提供していますよ」
ほう、とお客さんは感心して信頼と期待が深まったようだ。
「俺も、ここに来るまでにも森に入ってからも色んな人とすれ違いました……」
ん? お客さんの声音と表情が曇った。
「なんだか、怖がられているみたいでした。ドラゴン族は巨大な力を持つので仕方ないかもしれませんが……」
深く悩んでいるようだな。
「この、タトゥーも怖いでしょうか?」
体のタトゥーを撫でて悲しげに見ている。
ここは、
「服屋として、お客さんの悩みには正直な意見で誠実に対応しますよ」
真剣な眼差しとスマイル。
「お願いします、遠慮なく言ってください」
「わかりました。そうですね、怖いといいますか近くで見ると美しく素晴らしいタトゥーですが、一瞬、ドキッとするといいますか。どちからというとツノもですね、魔族に見えちゃったりして」
お客さんはツノも撫でて小さな溜息をついた。
「似てますよね。ですが、このツノもタトゥーもドラゴン族の象徴であり誇りですので……」
「誇り高いタトゥーやツノのことを知らない者は、さっきの私のように一瞬見ただけで怖そうなどと決めつけてしまいますからね。第一印象が全て、見た目が九割などと言われますから。そうやって無闇に怖がられるなんて、辛いですよね」
「はい。俺は冒険の中で沢山の人と出会って仲良くなりたいと思ってます。だから、この姿で怖がられて避けられたり逃げられたりしてしまうと辛いです」
うんうんと頷いておこう。
本当に、お気の毒だ……
ドラゴン族は「我を恐れず近寄れる者だけ来てみろ」みたいな態度の強者ばかりかと思っていたが、「仲良くなりたい、怖がらないでください」って態度のこんな繊細で切実な男子がいたなんて。
ますますギャップが凄いな。
服屋として、なんとかしてあげたくなる。
「それでしたら、服でなんとか怖がられずに近寄れるようにしてみましょうか?」
「できますか?」
「やってみましょう!」
希望の眼差しに応える力強い返事とスマイル。
さぁ、我が店ユルク◊ドレスアップにもついた!
「今日は、休みなんですね」
「お気になさらずに、さぁどうぞ、いらっしゃいませ」
魔法服コーナーにご案内。
「色んな服がありますね」
品揃えに驚いてくれたようだ。
「まずは、タトゥーを隠す服装にしてみますか?」
「はいっ……」
お客さんは緊張して、少しためらっている。
ドラゴン族の象徴であり誇りであるものを隠すことに抵抗があるようだ。
ならば、
「タトゥーが見えなくても、ドラゴン族とわかる服装にしてみましょう」
「できますか?」
「やってみましょう!」
しかし、ドラゴン族用の服はあまり店に出してなかったな。
冒険用の鎧や装備も在庫用のクロークから出そう。
次々出てくるドラゴン族用の商品にも、お客さんは驚いてくれている。
「凄いですね、この店は」
安心して身を任せてくれる気になったようだ。
「試着室の景色は町中にしました。溶け込めているかがよくわかりますよ」
着替えた姿
タトゥーの代わりにドラゴンをモチーフにした鎧。
彼の特徴であるファーとドラゴンスケイル (ドラゴンの鱗を模したプレート)の肩当て (ショルダーアーマー)。
自然と野性を感じさせる緑のマント。肩当てに紐やベルトで固定されていて取り外しできる。
留め具は銀細工のドラゴンの装飾があるフィブラ。
ドラゴンスケイルで腹部を護り飾る、襟付きレザーブレストアーマー。
上腕用の腕当て (リブレース)。
カービング (彫金装飾、銀のプレート部分)が施されたガントレット (手袋型防具)。
ベルトはウエストバッグや剣の鞘付きのタクティカルベルトになった。
腿当てと見えないが膝当てとブーツ。一体型はロングアーマーブーツという。
説明を省いた簡単な名前はファーマントとドラゴンスケイルアーマーだ。
「お似合いですよ」
心からのスマイル。
「ありがとうございます」
お客さんは自分の服装を見下ろして確認した。
タトゥーが隠れているのを気にしている。
種族を象徴するトライバルタトゥー、やはり見せておきたいのかな。
こちらを向いた顔に……不満はないようだ。
「上手く隠せてますね、凄いです。それでいてドラゴン族だとわかる。ありがとうございます」
「お気に召されたようでよかったです」
信頼と実績のスマイル。
「さっきより、町に溶け込めている気がします」
うんうんとスマイル。
さっきの服装では確かに行き交う人々に一瞬ビックリした目で見られたり怖がられて少し避けられたりしてたからな。
そうだ、
「ツノを隠すフードもありますよ」
お客さんはツノに触れた。
「フードも、お願いします」
では、さっそく。
フードマントを紹介しよう。
「こちらはスタンダードなフードマントで、ツノや獣耳のお客向けに大きめのフードになっております」
ドラゴン族の立派なツノも――
被ってもらうと、上手く隠せた。
「いかかですか? 防水性ですので雨具にもなりますよ」
「そうですね……」
お客さんは鏡の中の姿をじっと見ている。
「怪しい者に見えませんか?」
それが気になるのか……
「そうですね、大きめのフードは魔法使いや時に闇に属する者が被っていたり、目元まで隠れてしまったりして少し怪しく見えてしまうこともあります」
お客さんは悩みだした。
今は、自分がどう思われるかに敏感になっているし、怖がられる存在にはなりたくない思いが強い。
それなら、
「こちらはいかかですか? 耳付きフードでして、耳の部分にツノを隠すことができます」
「耳付きですか……?」
耳付きフードを被った姿
クマ耳のフードだ。
とても可愛いクマみたいになった。
怖がられるドラゴン族のモンスター男子がこんな……これぞ究極のギャップだな!
「いかがですか? ぬいぐるみみたい!と子供達にも人気で、クマ耳が可愛いといって被るお客さんも多いです。怪しまれたり怖がられる心配がありませんよ」
「そうですね……!?」
お客さんは鏡の中の姿にちょっと困惑している。
「俺が被ったら、クマ族に間違われませんか?」
それが気になるのか。
「そうですね、このフードマントはクマ族用に作られたものですので、お客さんのように強そうな方が被るとクマ族にも見えますね」
クマ族と思ったら実はドラゴン族だったとか。
さらに恐怖を与えてしまうか?
どうせ怖がられる可能性があるならいっそ、
「いっそ、ツノを出すフードを被ってはいかがですか?」
「ツノを出すですか?」
「はい。お客さんならツノが出ていても大丈夫ですよ」
「そうですか……?」
期待と不安の瞳に自信のスマイルで応えよう。
「お客さんは確かに一目見た印象は強そうで怖いですが、近づける穏やかな雰囲気がありますし、お話してみると丁寧で思いやりがあるのがわかります。ドラゴン族の孤高で近寄りがたい印象を覆すギャップがあるといいますか」
「ギャップですか?」
「ええ、良い意味での意外性といいますか、ギャップでとても親しみやすいですよ。お客さんがこうして種族の誇りであるタトゥーを隠してまで服装を気にして、私達人間や多くの種族のことを考えてくださるところなど感動します。お客さんが「ドラゴン族」として皆と仲良くなろうとするのを見せるほうがいいと思いますよ」
「俺がドラゴン族として……」
「ドラゴン族の象徴であるツノを堂々と見せておきましょう」
お客さんは心が固まったようだ。
「そうします」
迷いのなくなった、力強い瞳を向けてくれた。
さっそく、それに応えよう!
ツノ出しフードを被った姿
角穴、耳穴ともいうスリット (切れ込み)がありツノや耳を出せるフードだ。
防水魔法を付与しているのでスリットから水が入る心配もなく雨具になり日除けや顔を隠すのにもいい。
他にも魔法を付与したものは防具などにもなる。
お客さんは笑みをみせている、やはりツノを出すほうが良いようだ。
「これにします」
満足そうに歩きだした。
レジで会計を済ませて、着たまま出発だ。
「もう、誰の目も気にせず町を歩けそうです」
ドラゴン族として自信を持ち喜んでくれている。
「冒険のお手伝いができて嬉しいですよ」
服屋をやっててよかったと思う瞬間だ。
「色々な服やマントをありがとうございました、助かりました。また来ます」
「ありがとうございます」
こちらも喜びのスマイル。
「それじゃあ、行ってきます」
「いってらっしゃいませ!」
冒険の旅に出る後ろ姿を見送ろう。
「またのお越しをお待ちしていますよ」
新しい服に着替えて嬉しそうなお客さん――
何度見てもいいものだ。
しかし、ドラゴン男子は珍しかった。
あらゆる客に対応できた時の満足感は特別だな。
「この調子で我が店の名を広めていきたいものだ」
お客さんが仲良くなった者を連れてきてくれるかもしれないし。
服のタブには店のロゴもある。
それを見た者が店に来て客になるというわけだ。
いずれこの小さな店ではおさまらない人気店になりやがては――
ユルク◊ドレスアップをブランド展開するのだ!
国中、いや、世界中に!
フクッ、ドラゴンのように知らぬ者のいない存在になるぞ……
「フクフクフクッ」
ハッ、何者かの気配!
さっきのお客さんでもない。
今度は誰――!?
補足です。
ドラゴン族のようなモンスター男子は孤高で近寄りがたい態度とそっけない言葉遣いが魅力ですが、ユルクは接客業なので丁寧な態度や言葉遣いを返してもらえると感動して好感度上がるようになっています。
トライバルとトライブの大まかな使い分け
トライバル (民族、部族の意味)→広く知られている、わかりやすい表現。タトゥーの模様や服装のデザインやアクセサリーなどファッションに使われる。
トライブ (部族、種族の意味)→多分あまり知られていない、特定の表現。一族や種族の証となる模様や象徴に使われる。ドラゴン族だとドラゴントライブタトゥーとなる。
どちらを使うかはニュアンスで作品によるでしょう。
ファンタジー種族のことはレース (Race)ともいわれますが服のレースと混同するのでファッションでは使えないですね。
クマ耳のフードは普通の大きなフードでは面白くないしなんとかならないかと思いついて紹介してみました。
ギャップがほしいキャラや子供キャラが被ると可愛いと思います。いかがでしょうか? クマ耳の他にも猫耳やウサ耳など動物耳フードマント、オススメです。
尻尾穴も紹介したかったですが忘れてました。
ローライズまたは腰パンならズボンの上から出せるでしょうか。尻尾は尾てい骨から生えてるので微妙な位置ですね。
尻尾でブチ抜いたら穴があき尻尾を抜いたら穴は消える魔法の服が一番ですね。
着替えてから剣どっから出てきたと思ったかもしれませんが魔法で出現させたってことでお願いします。
ガントレットは手袋に銀のプレートが付いてるものと手袋に銀のプレートをベルトで装着するのと二種類ありそうですね。
見えない部分のロングアーマーブーツはまた別ページで紹介する予定です。




