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異世界服屋ユルク◊ドレスアップ〜スキル【服装図鑑】で定番から最新まで理想のスタイルを叶えます 〜   作者: 鏡野スガタ


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お嬢様とメイド

 我が店に帰ってきた。

 事務所で少し休んで、これからどうしようか……

 まだ、昼過ぎだし外は良い天気だし。

 私も散歩に行こうか、どこにしよう――

 さっきと違う道を歩きたい。


 そうなると、そうだ、森に行こう。

 店の前の大通りから歩いて行けるし、自然の中で木漏れ日に当たりリフレッシュしよう。

 最高の休日だなぁ〜!

 森は他の町への通り道にもなっているから、行き交う人々は様々だ。

 出会う人の服装チェックもして、見識を深めよう。

 まぁ、今日はブラブラ歩いて呑気な気持ちを優先させてだけど。



 緩やかにくねって続く道、サァサァと木の葉が風に揺れる音がする、いつ来ても心地いい森だ。

 誰に出会うかな?

 野生動物やモンスターもいるから少しは気をつけてキョロキョロしてと。

 あっ、サッて何か白黒のものが木々の間を走り抜けていった!

 なんだろう? ドキドキ……

 私が着てるローブは防御力最高レベルだから何かあっても無事でいられるだろうだけど、中身は普通の人間なんだから、未知のモンスターにでも遭遇したら終わりかもしれない。

 あれは人間っぽかったけど、それにしては速かったな……

 このまま道を歩いて距離を保ったまま、走っていったほうに行ってみるか、止めとくべきか。



「お嬢様〜」


 ん?

 さっきの白黒が走っていったほうから声がした。

 不安そうな女の子の声のような。

 ちょっと不気味だ、幽霊じゃないよね?

 昼間だし気になるし勇気を出して行ってみるか――


「お嬢様〜、どこですか〜!?」


 ああ、やっぱり。

 女の子の声が "お嬢様" を探してる。

 正体は――?


 ウサギ族だ。なんだ、怖くない種族だから安心だな。

 私までウサギみたいにビクビク怖がる必要なかったんだ。

 この近くにウサギ族の保護地があるから、彼等にとって森は庭みたいなものだし私もよく遭遇する。

 しかし、メイドさんは珍しいな。

 明るい木漏れ日の下に佇んで、返事がないかウサ耳を澄ましてる。

 私も静かにして耳を澄ましてみよう……残念ながら、お嬢様からの返事はないな……


「捕まえてみなさい! ではありませんよ。すばしっこいんですから、全く……!」


 どうやら、追いかけっこでもしているようだ。

 メイドさんは疲れたようで耳を垂らしている。

 それでも、めげずに辺りをキョロキョロしはじめた。


「あっ!」


 私に気づいた。

 ビクッとさせてしまったのは不覚だが、


「こんにちは」


 即座に安心と信頼の声かけとスマイル。


「あっ、服屋さん!?」


 メイドさんはほっとしたような笑顔を返してくれた。


「はい、服屋ユルク◊ドレスアップでございます。いつもご利用いただきありがとうございます」


 自己紹介と共に店の宣伝をしながら近づこう。

 ウサギ族は独自の服作りをしており村には服屋もあるが我が店にも服を買いに来てくれる、大事なお客さんだ。


 モンスターに見えた白黒も我が店で提供した服だ。

 お嬢様を探しているから素早く服装観察だ。



 メイドの服装

挿絵(By みてみん)

 清潔さと簡素さのある白と黒で統一されている。

 白いフリルのカチューシャはブリム。メイドだと一目でわかるアイテムだ。

 襟とカフスの色が白で服全体の色は黒。このような配色のシャツやワンピースはクレリックという。こちらはスカートにフリルがあしらわれている。

 白いフリルエプロンはピナフォアともいう。

 白いホーザリー (タイツ)。

 アンクルストラップの黒い靴。足首 (アンクル)にしっかり留めているのでウサギのように飛んだり跳ねたりしても脱げる心配がない。

 全体的に可愛くも無駄のない実用的な服装だ。

 説明を省いた簡単な名前はメイド服。


 肩に乗っているのは "エアリーラビット" 可愛いウサギモンスターだ。

 メイドさんのラビットはミニフワという名前だったかな。

 いいなぁ、私の肩にも乗ってほしいが。

 エアリーラビットは警戒心が強いので難しいだろうし。

 我が店に来た時は「ペットは店内をウロウロできません」と肩から降ろさせてケージの中なんかで待たせてるからな、意地悪な店主と思われて嫌われてるかも……

 今回は仲良くなるのは諦めよう。

 それより、


「お嬢様を探していらっしゃるんですか?」


 そっちが重要だ。

 メイドさんは不安そうな顔のままうなずいた。


「はい、お散歩していたら急に走り出して "捕まえてみなさい" と行ってしまったんです」

「一緒に探しますよ」


 もう一度、安心と信頼のスマイル。


「ありがとうございます!」


 メイドさんはパッと笑顔になってくれた。

 ミニフワも嬉しそうに私を見ている 「良い店主ピョン!」と見直してもらえたかな。


 それじゃあ、さっそく、私もお嬢様を探して森を歩いてみよう。

 ウサギ族のメイドさんのスピードで探し回って見つからないのに、私が歩き回って見つかるかわからないが。

 どこか、お嬢様が居そうなところに行ってみるか。

 大きな道から小道に入ってと。

 この先には可愛い花が沢山咲いてる広場があるし――


「あっ、お嬢様居た!」


 間違いない、ウサ耳だし。


 着ている服も我が店でオーダーメイドされたものだ。

 しっかりと確認のために服装観察。



 ウサギ族のお嬢様の服装

挿絵(By みてみん)

 お嬢様の前に、エアリーラビット! 名前はモフピョンだったか。これは自分は飛べると信じてるから飛べるやつだ。太めで、かなり甘やかされてるみたいだなぁ……肩に乗れないね。

 さぁ、甘い御主人であるお嬢様の服装をチェック。

 横髪にチャームの付いたヘアピン。

 服はピンク生地と赤白生地の切り返し (縫い合わせ、ドッキングともいう)の可愛いワンピースだ。

 フリルネック。赤い別布で縁取りがあるのはパイピングフリルという。フリルだけのフワッとした印象がパイピングの色によって明るい落ち着いているなどくっきりした印象になる。

 胸元は白い布地になっている、このような服の特徴はヨーク (胸元や肩や背中で生地が切り替わっていること)、ビブ (よだれかけの意味)などという。

 フリルが付いたものはフリルヨーク、ビブフリル。

 お嬢様はまだ幼いのでビブの呼び方が似合うな。

 ビブには赤いリボンや花の刺繍やピンブローチなど色々着けてさらに可愛くしている。このように服を飾る物やことをエンベリッシュメント、デコラティブ、盛るなどという。お嬢様に似合うのはデコるだろうか。

 ピンクのパフと赤いパイピングフリル。

 手首には白いフリルに赤いパイピングの付けカフスをしている。ワンピースとセットのアイテムだ。

 付けカフスの用途は特になく、オシャレ目的と長袖でなくともカフスを付けたい時やカチッと整った印象を与えたい時などに装着する。

 ピンクの裾の形は花びら (フラワーヘム)。花びらが何層にも重なっている場合は花びらティアードスカートという。

 赤いパイピングフリルのアンダースカート。似たようなスカートにはペチコート、パニエがある。

 お花を()したレイヤード (重ね)で見た目通り花やかで可愛い。

 白いホーザリー。

 アンクルストラップの赤い靴。

 説明を省いた簡単な名前はフリルビブとフラワーヘムのワンピース、花びらとフリルのレイヤードワンピースなど、どこの特徴を押し出すかで名前は変わる。


「お嬢様、ごきげんよう」


 怖がらせないように優しいスマイル。


「あっ……」


 ビクッとさせてしまった。

 モフピョンも。

 ウサギ族とエアリーラビットに近づくのは本当に難しい。


「大丈夫ですよ。私です、町の服屋ユルク◊ドレスアップです」


 最大限の優しいスマイル。


「あ、ほんとだ、服屋ドレスアップさんだ!」


 お嬢様は弾ける笑顔になってくれた。

 ふぅ、よかった。

  "ドレスアップ"という部分、製靴ギルドマスターもそうだけど、お嬢様も気に入ってくれているのか覚えていてくれた。


「私もドレスアップしたの!」


 スカートを広げて飛び跳ねている。

 このワンピースは裾の花びらが動くと小さな花びらが現れては舞い散る魔法がかけられている、まさに花の妖精のようになれる服だ。

 その仕様がさらに飛び跳ねたくさせるのか、ピョンピョンとリズムに乗ってる。

 可愛い可愛いと拍手とスマイル。


「ドレスアップさん、さっきも、私のお洋服を見てたでしょ? どんなお洋服かチェックしてるみたいに」


 なんと、知られていたか。

 さすが、ウサギ族は相手の目線や気配を敏感に察する。

 私のスキル【服装図鑑】の一瞬ともいえる高速チェックにも気づくとは。

 素直に認めて畏敬のスマイルを贈ろう。


「そうなんですよ、我が店で(あつらえ)えたワンピースを着て頂けて光栄だなと。とてもお似合いですよ」

「えへへっ、可愛いでしょ!」


 お嬢様はスカートを摘んでピョンと跳ねた。


「とても可愛らしいです!」


 大絶賛の声かけとスマイル!

 ご機嫌も取れたようだし、忘れずに本題に入ろう。


「お嬢様、メイドさんが探していましたよ」


 丁度、呼び声が聞こえてきた。


「ほら」


 木々の向こうから姿も見えてきた。


「こっちこっち!」

「こっちよ!」


 お嬢様と一緒に笑顔で手招き。


「お嬢様! 探しましたよ!」


 メイドさんは無事、お嬢様と再会できた。


「突然走り出すなんて、いけません」


 ウサ耳をピンと立てて安堵と怒りで泣きそうになっている。


「えへへ、ごめんね」


 お嬢様はちょっとウサ耳を伏せて反省したように笑っている。


「モフピョンをね」


 なんの問題もなく飛んでいるエアリーラビットを両手に抱いて見せた。


「ダイエットさせようと思いついたの。みんながダイエットしたほうがいいって言うから、色んなところを一緒にウロウロしてたの」

「そうでしたか」


 メイドさんと一緒に納得。

 ちゃんと、モフピョンが太めなこと考えてたんだ。

 偉いお嬢様だな……


「それは素晴らしいですが、お嬢様」


 メイドさんは意見があるらしい。


「翼を使って飛んでいては体は痩せないのでは? 走ったり跳ねたりさせないと」


 そう言われるとそうだな。

 翼ばかり痩せて細くなって、体重を浮かせきれずに飛べなくなるかも。

 お嬢様もうんうんとうなずいて、モフピョンを地面に降ろした。


「モフピョン、ダイエットよ!」


 お嬢様の掛け声に――


 モフピョンはうなずくと飛び跳ねて前進しはじめた。

 ピョンピョンというよりドスンドスンって擬音がつきそうな迫力のある走行だが。

 ダイエットを頑張る姿、応援しよう!


「頑張れー! モフピョン!」


 お嬢様とメイドさんと一緒に応援の声かけとスマイル!

 広場まで頑張って走ったモフピョンは、ハァハァと荒い息をしている。

 お嬢様が抱っこして優しく撫でた。


「頑張ったね、モフピョン」

「後は、ニンジンをはじめとした野菜ダイエットをしましょう」


 メイドさんは容赦なく提案した。

 ウサギ族の作る野菜は町に流通していて、私も有り難く頂いている。とても美味しく健康に良いし栄養もある。ダイエットにぴったり。


「お菓子は禁止ですよ」

「ちょっと、かわいそうだけどわかりましたわ」

「お嬢様も最近食べ過ぎですので、一緒に我慢してください」

「そんなっ」


 お嬢様とモフピョンは一緒にショックを受けた顔になった。

 ウサ耳もビクリッとさせてフルフル震えだしている。

 かわいそうで、守ってあげたくなるな。


「ブーブーですわ!」

『ブーブー!』


 あれ、結構強い感じで威嚇している。

 モフピョンまで抗議するように鳴きだしてるし。


「……仕方ないですね」


 メイドさんも成す術もなくウサ耳をさげた。


「それなら完全に禁止はいたしません。適度な量をご用意しますからね。その他のお菓子を私に隠れて、こっそり食べたりしてはいけませんよ? 食べてしまったらその時は痩せるまで一切禁止にしますからね?」


 妥協しつつも厳しい条件をつけた。

 若いのにしっかりしているメイドさんだ。

 お嬢様のことは任せて見守ろう――


「わかりましたわぁ〜……」


 お嬢様は耳を垂らして応じた。


「モフピョン、いいですわね? 一緒に我慢しましょう?」

『プスプス』


 まだ少し不満げだが納得したようだ。


「モフピョン、服屋も応援していますよ」


 お嬢様の肩に乗れるくらいにはなるかな?

 ダイエット成功したら、お祝いに服を作ってあげたいが。

 エアリーラビットは服を着るのを嫌がるからな。

 もふもふの毛がデリケートなモンスターだ。

 そんなことを考えながら、お嬢様とメイドさんを保護区の近くまで送っていった。


「それでは、私はこれで」

「服屋さん、ありがとうございました」

「ありがとう! ドレスアップさん!」


 メイドさんとお嬢様に最高のスマイルを返そう。


「今度はぜひ、服屋ユルク◊ドレスアップへご来店ください。お待ちしていますよ」


 ウサギ族用の獣耳や尻尾があっても着やすい服を用意してね。

 我が店は全種族に対応していますよ、フククク――



補足です。


ブリムはメイドの帽子 (フリルがある柔らかい布で髪を包むモブキャップ)を簡略化したものだそうです。

髪型を見せられるのでファンタジーではブリムのほうが使われていますね。

オシャレとメイドの証を融合させたアイテムですね。


付けカフスはメイドも装着していたりしますね。

本当に意味や用途は定かではないんですが、なんだかカッコイイようなオシャレなアイテムだなと思います。


クレリックは聖職者、牧師などの意味です。

クレリックワンピースはメイドだけでなくシスターやお嬢様も着ていますね。


服の装飾のエンベリッシュメントは略すとエンベリでしょうか。デコるのほうがわかりやすいですね。

お嬢様の服装のように特徴や装飾が沢山あるファッションはマキシマリズムともいうそうです。ミニマリズム ( 装飾や無駄を削ぎ落とした最小限主義)の対義語でマキシマリズムは多いほど良いという意味だそうです。雑然としてるようで「お花可愛い」のようなテーマやイメージもあったりするのでしょうか。

ファンタジーはマキシマリズムな服装が定番ですね、


花びらのようなスカートは凄くファンタジー感があってとても可愛いですが、特定の名前がないようでして、レイヤードとかティアードとか色々紹介しましたが「花びらのようなスカート」と表現するのが一番わかりやすいですね。後は、花びらが何段も重なっているのか、裾が花びらの形なのかの書き分けですね。

お嬢様のワンピースのように特徴が沢山あると説明文もですが服の名前も長くなってしまいます。


フリルヘムのようなアンダースカートはスカートをフワッとさせてチラッのぞくのが可愛いですね。

少女漫画とかの服に花びらが舞ってる演出?も可愛いし綺麗ですよね。


「自分は飛べると信じてるから飛べる」というのはクマバチの話にもあります。クマバチもモフピョンと同じように丸い体に対して羽が小さすぎて飛べてるのが不思議だ信じる力で飛んでるんだと長年言われていました。

今では空気の粘度を利用している飛行法だと解明されていますが、思い込みとは時に凄い力を発揮しますから信じるだけで飛べるのもありかもしれないですね。


獣耳はケモノミミではなくケモミミで予測変換にでてきました。ファンタジー用語は凄いなと思います。

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