国境要塞宿所 ★
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要塞の通路には一定距離毎にオイルランプが灯されていた。
ドーム型の天井と連なる壁面は白色の漆喰で分厚く塗られている。
石材の露出した主洞は夜ともあって暗鬱な印象だったが建物内部は十分明るい。
「此方でお休みください」
暫く通路を進むと案内の警備兵が扉の一つを開けてそう告げた。
六畳間程の部屋に寝台が一つ。
窓は無いがベッドサイドにスタンドが灯っている。
蚕棚の様な寝台が連なる兵舎の如き多人数用の部屋ではない。
豪奢でこそないが立派な個室だ。
外来宿舎としては上等な部類なのかもしれない。
( 自身で泊まった事は無いが FQ世界の宿屋は相部屋が一般的だ )
「どうも有難う。 良い部屋ですね」
部屋に入った私は兵士に感謝の言葉を述べた。
「近衛の方々も泊まられたお部屋ですよ」
警備兵が答える。
皇女を護衛していた四人の誰かが昨夜は此処に泊ったのか。
如何にもエリート然とした騎士達の面々が脳裏に蘇る。
彼等と同じ部屋に泊まるなど中々に贅沢な体験だと言えるのではなかろうか。
そう言えば入室前に通路の突き当りに一際豪勢な扉が見えたが
あれは皇族達専用のエリアへ通じる物だったのかもしれない。
「ではどうぞごゆっくり!」
警備兵が敬礼して退室して行った。
私は剣帯を外してハンガーに掛けると綺麗に整えられた寝台に腰掛けてみた。
ホテルのベッドのような柔らかさは無いものの適度な弾力性が感じられる。
軍事施設の宿泊室としては上々だ。 ・・これなら良く眠れる事だろう。
「 ! 」
そこで我に返った。
一日の旅程を終えて床に就く旅人のような心持になってしまっていた。
実際の私は病室のベッドで臥床したまま人工呼吸器に繋がれているというのに。
それらを忘れ完全に "デルモニアの旅人" に成り切っている自分がいた。
「・・・・・」
枕の上に頭を投げ載せるのを止めてもう一度部屋を見渡してみる。
寝台の他には蝋燭灯のスタンドと木製のハンガーポールがあるだけだ。
( FQ世界では人は排泄と無縁なのでバスユニットの類は無い )
この簡素な空間にリアルな日常を感じ没入していたのだ。
・・だとしたら。
( 私達の様な人々が暮らすのに膨大なリソースは不要なのかもしれない )
私はブーツを脱ぎ装備を外してハンガーに掛けた。
寝台に横たわり毛布を被る。 このような就寝シークエンスは受傷後初めてだ。
( こういう事が大事だったのだな )
人間に戻れた感じがする。
『HP・MPが回復します。此処で再ログイン出来ます。ログアウトしますか?』
目を閉じると私の脳裏にシステムアナウンスがそう告げて来た。
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