東部国境要塞
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東部国境に到達したのは夜半過ぎだった。
"疾駆" で走り続けなければ夜が明けても辿り着くことは出来なかったろう。
( とは言ってもFQ世界の一日は48分に過ぎないのだが )
国境要塞は二つの山の間を塞ぐ形で屹立していた。
巨大なダムのような壁面の彼方此方に大小の窓があり明りを灯している。
堅固な要塞門は閉じられており脇の通用口に帝国の警備兵が二人立っている。
警備兵達は私が近付くと恭しく帝国式敬礼をして迎えてくれた。
「ゲラーデンのジョー殿でありますか?」
一人が丁寧に尋ねて来た。
原則ノーチェックであるこの種のゲートでは珍しい事だ。
「いかにも。私はジョーですが?」
そう答えると二人の警備兵は再び敬礼をして来た。
「マルグリッド殿下より伝霊がありお待ち申し上げておりました」
「東部国境要塞へようこそ!」
「当要塞の宿泊施設を御自由に御利用下さい、とのことです」
警備兵達が代わる代わる口上を述べる。
( どうやら皇女殿下には伝書鳩の様な交信手段がおありのようだ )
当然私の到着は彼女に報告されるのだろう。
"疾駆" による私の移動速度も把握される。
( スキルの習熟度は初期段階に過ぎないが )
皇女様もただのんびりと過ごしているだけではないという事か。
「ありがとう。お疲れ様」
警備兵に礼を述べ 開けて貰った通用口を入ると広大な空間が広がっていた。
主門と通用口の並ぶ要塞壁の内側は巨大なアーチ状になっている。
同様な主門と通用口を備える反対側の壁までは五十メートル程の距離がある。
内側から見れば巨大なトンネルのようであるとも言えるが違う。
要塞自体が谷に掛かるアーチ橋のような構造になっているのだ。
中々壮大な眺めである。
「ジョー殿、宿泊所へ御案内させて頂きます」
要塞内にいた警備兵が声を掛けて来た。
構内通路の両側にやはり一つづつ大小の扉が設けられているのだが、
入口から見て右(南)側の小扉の方へと私を誘おうとしている。
( これは稀有な機会かもしれない )
勿論FQにも "宿屋" というものは存在する。
有償で回復やログイン・アウトを行えるのだが私は利用した事が無い。
ログイン・アウトはこれまで全て無償のマウンドで行って来ている。
果たして帝国要塞の宿泊所にプレイヤーが泊まれるものなのか?
私には分からなかった。
「あの・・ 宜しいのでしょうか?」
先導する警備兵に半ば恐る恐る私は尋ねてみた。
「それはもう殿下の仰せですから!」
若い警備兵はにこやかに答えた。
「日没のスベニールから馬も無しに御自分の脚で走り夜明け前に着くのなら
それは偉業である。 宿を供して差し上げろ、と」
巨大な洞窟状の主通路側壁の扉を開けながらそう語る。
「・・・恐縮です」
広い主洞から館内通路へ入った私はそれだけしか言えなかった。
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