289.フィールド内での拠点作成⑤西の森チームとターゲット
「いませんね〜」
「そうやな……もしかしたら、この辺にはおらんのかな?」
魔素濃度の上昇による転移制限。その重大事項の共有不備が発覚してから1時間後、俺たちは5人組のチームを4つに分けて素材集めをすることに。ちなみに俺たち【西の森チーム】は柵用の木材に加え、ある魔物のドロップ品を集めることが目的だ。
「ウロウロするだけじゃ時間が勿体無いですし、木材を集めながらターゲットを探すのはどうですか?」
「それもありやけど、俺の残りSTが300ちょいしかないからな〜。本番に残すためにも温存しときたいな」
「ああ〜、私もミーティング前に使い切りましたし、同じくらいしか残ってないですね」
「う〜ん……とりあえず目的のドロップ品をノルマ分集めてから、他の資材を確保するっす」
「手持ちのポーションにも限りがあるしな……うん、賛成や」
手動で伐採も出来なくはないのだが、農作業より大変なのは、実際にやらなくてもわかる。
俺たちはセキライの指示通り、その辺の樹木はノータッチで先へと進むことに決定した。
「それにしても、ウチらの担当場所が【ノアの森(西部)】でよかったよな」
「他の場所より歩きやすい上に、見晴らしもいいから魔物からの奇襲も起きにくいですよね」
「そうそう。でも今回のターゲットみたいに擬態してる奴もおるからな〜。大丈夫って油断せん方がええやろな」
「特に私たちは貧弱組ですからね。気を引き締めていきましょうか」
アマネと軽い雑談をしながらも、俺たちは探索を続けていく。
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それから探し続けること十数分。俺たちは【ノアの森(西部)】の奥へと歩みを進めていた。
ターゲットが見つからない焦りはあったが、道中の雑魚モンスターとの戦闘はほとんど起きず、効率よく歩き回ることができていた。そんな時……
「あ、あそこ!少し拓けた所の真ん中の木、あれ怪しくないですか?」
「え、どこどこ?……って、あれか。確かになんか違和感あるな」
突然、異変に気付いたアマネが、前方の広場を指差す。それを聞いた俺は緊張しながら、彼女の指先をよく見てみる。すると、そこには周囲の瑞々しい緑とは明らかに異なる、どこか人工的な色合いの葉をもつ樹木が鎮座していた。
周囲の木々に擬態し、何も知らない獲物を惑わせ襲う恐るべき魔物。そいつこそが今回のターゲットであるトレントだ。
「……うん、間違いない!トレント君、やっと見つけたで!」
「ようやく発見っすか……でも、これで西の森チームのノルマはクリア出来そうっすね」
「いやいや、手順通りに倒さないと目的のアイテムは落ちないですよ。戦う前に、最終確認した方がいいんじゃないですか?」
「もう一度探しまわんのダルいし賛成。念の為、確認しとこか」
「了解っす」
やっと見つけた獲物に気が緩みそうになる中、アマネは俺とセキライを抑えながら、慎重に進めるよう呼び止める。それを聞き入れた俺たちは、後退りしつつ、戦い方を復習することにした。
「みんなはトレントの攻撃パターンやレアアイテムの出し方は覚えてるっすよね?」
「相手の攻撃を斧で防ぎながら、【伐採】のアーツで枝を切り取る。そんで全部刈り取った後、今度は幹の根本に【2本切り】を放つ。で、合ってるよな?」
「大正解っす。さすがはソーイチさん、予習バッチリっす!」
「予習というか、例の形態とドロップアイテムを見つけたん俺やで?そりゃ正解するに決まってるわ」
「ははは、確かにそうっすね。それじゃあ、開始の合図はソーイチさんにお任せするっす」
「オーケー……それじゃあ手順通りで攻めまくるけど、みんないけるよな?」
「はい、タイミングを合わせます!」
「オーケー……それじゃあいくで!」
「「「「はい!!」」」」
こうして俺の号令によって、トレントとの戦いは始まった。俺たちが駆け寄るのに気付いたトレントは擬態を解き、自身の枝をムチのように繰り出してくる。
「落ち着いていけば楽勝や。ムチに斧を向かい入れる感覚で!」
「はい!って、右からきますよ!」
「ふっ!その攻撃は見えてるっす!」
だが、俺たちはトップクランのメンバーであり、相手より人数も多い。迫り来る攻撃を斧で防ぎ【伐採】のアーツで枝を切り取っていく。
その結果、あっという間に全ての枝を切り取ることに成功し、ノーマル状態からトレント(状態:ハゲ)に変形させることが出来た。
「よっしゃ、後は【2本切り】を根本に撃ちまくるだけやな」
「じゃあ戦闘チームが羽交い締めにするんで、ソーイチさんとアマネは伐採をお願いするっす」
「オーケー!じゃあ、一度にやっちゃうから掛け声お願い」
「わかりました……せ〜の!」
「「【2本切り】」」
声を合わせて、同時にアーツを放つ俺とアマネ。すると、あっさりと禿げトレントは光となり、代わりに身の丈の何倍もある特大の丸太が突如現れる。
それが、ドォォォン!と大地を揺らす轟音と共に倒れ込み、周囲に土煙が舞い上がった。
「ゲホッ!……あっ、口に土入った!」
「あらら。ソーイチさん、水持ってます?最悪ジュースかポーションでもいいですから、早く口を濯いだほうがいいですよ」
「……もったいないし、やめとくわ。はぁ〜、リアル志向といっても、こういうのは勘弁してほしいわ」
「ふふっ、でも良いじゃないですか。目的のアイテムが一度で手に入ったんですし」
「確かにノルマ分は集まったし、文句言うのは違うよな」
アマネに宥められた俺は、巨大な木材を撫でながら満足気に頷く。
こうして【建物作成】のメイン資材となる【トレントの特大丸太】を大量に入手したのだった。
tips
資材集めチーム分け
①ノア西部の森チーム
ソーイチ・セキライ・アマネ・他2名
②ノア東部の森チーム
ベイクドモチョチョ・ミコト・他3名
③ノアの大森林(入り口)チーム
ゼロ・フワフワ・他3名
④ノアの大森林(海岸側)チーム
ユサタク・メープル・他3名
次回は明日か明後日の午前6時に更新予定です。
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