288.フィールド内での拠点作成④拠点の選定理由と大討伐の不備発見
「大討伐って来週から始まる擬似的なスタンピードのことですよね?それなら尚更端っこじゃなくて、中央の転移ポイントが離れた場所に拠点を作るべきじゃないんですか?」
俺がリリーの発言の意図を考えていた中、ユサタクがおかしな点について質問する。
「うんうん、リーダー君の意見も正しいよ!時間と資材に余裕あれば、次の拠点作成の候補地はそういった場所になるだろうね」
「……ということは、一見正しそうな場所以上に優先すべき理由が、今回の作成予定地にはあるってことですね」
「その通り!ただ、その理由を説明する前に、問題です!」
俺たちの代表として質問役を自然と担ったユサタクが絶妙な相槌をすると、リリーは楽しそうにクイズを出してきた。
「今度の大討伐についてなんだけど……リーダー君!どうやって人工的にスタンピードを起こすのか?その方法と目的は覚えているかな?」
「えっと、確か次に解放する予定のアースの町に繋がるゲートを開放して、そこの魔素をノア大陸に流入させる。で、こっち側は流入した魔素により魔物が大量に発生してしまう代わりに、開放予定地の魔素濃度を下げる……でしたよね?」
「大正解!アースの町側の魔素濃度を下げて、強い魔物の発生率を下げる。そのついでに君たちのレベルアップや素材集めも出来るようにしてるんだけど……この方法には問題が一つあるんだよね〜」
ユサタクの返答にうんうんと頷いた後、リリーは人差し指をピンと立てて理由を話し始める。
「実は魔素濃度の濃くなる場所は、ユニーク個体が生まれやすいんだよ」
「濃度が濃い場所……ですか?」
「うん!こちらに魔素を流し込んだ時、ゲートを通じて満遍なく広がっては行くんだけど、人が少ない場所や空気の流れを阻害する場所は魔素が渋滞して濃くなっちゃうんだよね」
「空気の流れが滞る……そうか!今回の目的地は、岩山のせいで大回りしないと辿り着けないほどの僻地。魔素が溜まる要素が詰まっているんですね」
ユサタクの発言で俺もやっと意図がわかった。確かに【ノアの最果て(東)】は岩山が邪魔となり、転移ポイント開放の時は大回りの移動が大変だった思い出がある。魔素も同じような順路で広がっていき、そこに溜まっていくのだろう。
「ちなみに海に魔素が逃げるんじゃ〜って疑問に思うかもなんだけど、海上に厄介な魔物が出ないように簡易的な結界を張ってるんだよね」
「……魔素が濃くなる要素しかないですね」
海側の結界と岩山が魔素の逃げ道を阻害して、まるで掃き掃除をした時の埃が部屋の角に溜まるように魔素が溜まり続ける。結果、濃度が濃くなってユニーク個体が生まれやすくなる、という流れなのだろう。
「それと補足なのですが、魔素の流入を一気に増やした場合、濃度が急激に上がりフィールドの転移ポイントだと転移事故が起こる恐れがあります。
ですが転移ポイントと拠点が隣接している場合、2箇所分のセーフゾーンが噛み合って、安全に転移出来るようになるんです」
「補足ありがと!と、こんな理由があるから転移ポイントある僻地に拠点を作ることになったんだ!みんな納得出来たかな?」
少し長いが納得のいく説明だったので理解はできた。だが……
(えっ、しれっと大討伐中に転移出来へんかもって情報流れたんやけど……これ周知無しはあかんやろ……)
「すいません、拠点作成は納得出来たんですけど、大討伐中に転移って無理なんですか?」
それ以上に、転移不可といった完全初見の情報の方に気を取られてしまう。そんな中、同じく疑問に思ったユサタクが手を挙げて、今の発言の真偽について尋ねる。
「そうだけど……えっ、もしかして知らないの?」
「大討伐の依頼書には載ってないですね……」
「スヴェン!大至急受付に行って、依頼書をもらってきて!」
その指示とほぼ同時に部屋を飛び出るスヴェン。数分後、届いた依頼書を見たリリーは震えて声で怒りを露わにした。
「確かにどこにも載ってない……依頼課の奴、適当な仕事しやがって〜!」
「素がでてますよ、リリー。落ち着いて」
「落ち着けって、これ下手したら大討伐が失敗するかもってレベルのやらかしよ!一体なんで……」
「おそらく私たちにとっては魔素濃度が上がると転移の危険性が上がるというのは常識すぎて、書き漏れてしまったのでしょう」
「そうかも……リーダー君、指摘してくれてありがとう!その質問がなかったら大変なことが起きてたかもしれないわ」
「いえいえ、スヴェンさんが補足で説明してくれたおかげです……で、この後はどうなるんですか?」
「う〜ん、転移についての注意書きをギルドに貼り出した上で、ノア・タイムスで号外の無料配布。それから大討伐当日までに各ギルドで追加資料を配るって形になると思う」
「それと並行して、今のような思い込みで掲載してない項目がないか、依頼内容の再チェックも行うでしょう」
「うわ、大変そう……それなら俺たちの情報網に、今の情報を流していいですか?」
「えっ、いいの!?」
「もちろん。全員に伝わるかはわかりませんが、協力させてください」
「本当にありがとう……一応ギルド側の判断を仰いでからになるけど、許可が降り次第お願いするね」
「任せてください!」
感謝するリリーとスヴェンに、ユサタクは笑顔で頷いたのであった。
次回は明日か明後日の午前6時に更新予定です。
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