283.伐採ツアーと【2本切り】
読書を励み新しい書庫への入室権を手に入れようと決意はしたものの、残念ながら今はスケジュールがカツカツで手を付けられそうにない。
俺はユサタクとの会話を切り上げ、ノア・タイムスの作業部屋へ飛び込み要約新聞を量産。それが終わるとアマネを呼び出し納品を済ませた時には、次の予定であるモーニング伐採ツアーの集合時間が迫っていた。
「……これでよし。露店はバイトの子たちに任せたので、伐採に行きましょうか」
「ああ。集合場所は第二ホームでよかったよな?」
「ええ。時間も押してるので急ぎましょう」
「今日はいつも以上にスケジュールがタイトやもんな。ちゃちゃっと転移しよか」
俺はそう言いながら転移クリスタルを掲げて第二ホームへと飛び立った。
「開門10分前になりました!モーニング伐採ツアーに参加するメンバーは、予め決めておいたパーティーのリーダーの元へそれぞれ集まってください!」
ホームへ転移後、ジョブを伐採特化用に変更した俺たちは、声を張り上げ誘導するモチョの指示通りに移動する。
「うちらのパーティーリーダーはユサタクやったよな」
「ええ。それとマロンに加えて、サポートチームの2人がメンバーですね」
「そうやったな……って、ユサタクがこっち見て手振ってんで」
「ええ。他のメンバー揃ってますし急ぎましょう!」
既に準備万端のユサタクたちを見つけた俺たちは走って彼らの元へと向かった。
「お待たせ。遅くなってすまん」
「開門まで時間あるし問題ない。それより……これで全員揃ったな」
俺の謝罪をサラッと流したユサタクは、周りを見渡しメンバーが集結したのを確認すると、おもむろに話し始めた。
「今回俺たちが向かうのは、西の森。他の森に比べて障害物も少なく比較的安全な場所だな」
「おお〜、他のパーティーには申し訳ないけど、楽なとこ担当でマジで助かるわ」
「こっちはリーダーとマロン以外は生産メインですしね。役得だと思っておきましょう」
「ストップ!油断はダメですよ!」
難易度の低い地域割り振られた喜びを貧弱組で共有していると、マロンが俺らの肩を叩きながら釘をさす。
「難易度以外にも注意しなきゃダメな点は多いんです。楽だからって油断してたら9時からのクランクエストに間に合わないかもですし、油断は禁物ですよ」
「マロンの言う通りだ。数日掛かりでやっと掴んだ特別な依頼だ。転移先を間違ったり、移動中に隊列を崩したらタイムロスに繋がるから気をつけてくれ。わかったな、ソーイチ」
「なんで俺を名指しやねん!」
「だって時々抜けてるところがあるからな。違う場所に転移とか、普通にやりそうで怖いんだよ」
「ぐぬぬ……」
自分でも心当たりがあるので、言葉に詰まってしまう。そんな俺たちのやりとりを見ていた他のメンバーは笑いながら見ていた。
「7時になりました!皆さん、9時からの依頼に間に合うように余裕を持って行動してください!」
「「「「「了解!」」」」」
その後も色々と話していたのだが、タイムキーパー兼号令役をこなしていたモチョが声を張り上げ開始時間が来たと宣言する。威勢よく彼女の合図に応えた俺たちは、一斉に転移クリスタルを上に掲げた。
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無事に西の森へと転移した俺たちは、隊列を整えながら目に入る樹木に片っ端からアーツを放っていく。
「【2本切り】……【2本切り】。睡眠ボーナスのおかげで、一足早くレベル3のアーツ使えるから、もりもり木材が手に入るな」
「ええ。しかも【オモイカネ】から聞いた話では、【伐採】スキルって切り取った木材の本数でレベルが上がるらしいですよ」
「マジで!?最高やん!」
アマネからの朗報を聞いた俺は、さらに気をよくしてアーツを連発していく。
ースキル【伐採】のレベルが3に上がりました。これによりアーツ【2本切り】を習得致しましたー
「レベル3来たああああ!これでノルマ達成や!」
気前よくアーツを連発していたおかげで、【伐採】のスキルレベルは3にアップ。なんとか【開拓者】の依頼が始まる前に推奨技能に到達することができた。
「ズ、ズルいです。こっちはまだなのに……」
「まだツアーは始まったばっかりやし、アマネも急げばいけるって!」
「うう……【2本切り】、【2本切り】……これは下手したらポーション使わなきゃですね……」
未だスキルレベルが2で停滞しているアマネが、自分のSTに気を配りつつ愚痴混じりにアーツを連発していく。俺は彼女の様子に肩を竦めつつ、同じくアーツを放ち続けた。
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ー木こりのレベルが6に上がりましたー
ー開拓者のレベルが5に上がりましたー
「【2本切り】……ふう、これでおしまい。レベルも上がったし、最高やな!」
俺のSTが空っぽになるまでアーツを連打した結果、なんとジョブのレベルが2つも上がり、集まった木材は100本を超えた。
俺はステータス開きながら木に寄りかかり休んでいると、同じく作業を終えたユサタクが歩み寄ってきた。
「お疲れさま。ソーイチもSTを使い切ったみたいだな」
「ああ、もうすっからかんや。でもジョブにスキルとレベルアップの連続で成果ありってかんじやな」
「それはいいニュースだ。アマネや他のメンバーも【伐採】のレベルが3に到達したようだし、いつでも開拓者の依頼に挑めるな」
「せやな。ところで昨日と今日の2日分の木材が溜まってるんやけど、これって依頼に使えるんかね?」
「一応、お目付け役のギルド職員に納品できるらしいが、ポイント目的なら木こりギルドへの納品の方がいいんじゃないかな?」
「確かにそうやな。そろそろ生産職ランクを上げたいし、木こりギルドに納品するわ」
そう俺が発言すると、いつの間にか近づいていたアマネも「私も今回はギルド優先にしようかな」と顎に手を当てて考えている。
そんな俺たちの様子を見て、ユサタクが何かを思い出したようにポンと手を叩いた。
「そういえばソーイチのBGPやCGPって、どれくらい溜まってるんだ?ランク上がってそこそこ経つだろ」
「そうやな……滅多にポイント確認してへんから記憶があやふやなんやけど……っと、あった。今はこんな感じやな」
俺はインベントリからギルドカードを取り出し、ユサタクに差し出した。
次回は明日か明後日の午前6時に更新予定です。
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