264.挨拶回りと雑談三昧
ノア・タイムスを後にした俺は、アマネに数日分の要約新聞を手渡した後、司書ギルドへ向かい、シーラに挨拶しつつ本を上限いっぱいまで借りた。
「最近のソーイチさんは読書量が増えてきてますね」
「色々と軌道に乗ってきたから、ゆったり読書する時間増えたんよ」
「なるほど。では、そんなソーイチさんに朗報です!」
「おっ、次の段階に行けるかんじ?」
「ええ。今借りた5冊の本を全て読み切ったら、新しい書庫へ入場する権利を開放します」
「マジで!?やったあー!」
「コラっ!嬉しいのはわかりますけど、図書館ではお静かに」
「す、すいません」
新しい書庫の開放はゲーム内の歴史や風習、ジョブ情報など、ネタ探しの鉱山が増えるのと同じ価値がある。その事実に思わずガッツポーズをとったが、声が大きいと注意されてしまった。
「でも新しい書庫かぁ〜。今日明日と忙しいけど、絶対早めに読み切るんで、そん時はよろしくお願いします」
「ええ。ソーイチさんのまたのご来訪、心よりお待ちしておりますね」
そう言ってシーラは軽く微笑んだ。
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「あっ。ソーイチさん!おはようございます!」
「おはよう、アレン。戻ってきたから挨拶に寄らせてもらったわ」
「あら、ご丁寧にありがとうございます。って、それよりアース米の反響スゴいですね!【ユーザータクティクス】さんがお披露目して以来、情報を求める渡り人さんが、毎日ひっきりなしに押し寄せてきますよ!」
「それはそれは……その割には人少ないな?」
司書ギルドの後に訪れた農業ギルド。そこで馴染みの受付嬢さんに挨拶をしたところ、目をカッと開いてここ数日間の忙しさを吐き出していく。俺自身がその元凶なので少しの罪悪感を覚えたのだが、それはさておき、今のギルド内の落ちつきぶりについて尋ねてみた。
「いや〜、あまりにアース米についての質問が押し寄せてきたんで、種取得までの試練をクエストとして大々的に提示しちゃったんですよ」
「なるほど。欲しい人全員にゲットの条件が知れ渡ったから、今は依頼報告とかの利用者しかおらんってわけやな」
「ええ、ソーイチさんが提示した試練参加条件を緩めちゃって、ごめんなさい」
「いやいや、頭上げて!ウチが大々的に売り出した時点で、半分無効みたいなもんやし、逆に俺らが元凶の修羅場に不意打ち気味で巻き込んでごめんな」
ぺこりと謝罪するアレンを慌てて押し留めて、こっちの方が悪いと頭を下げる。
「いえ、ユサタクさんのおかげで、バッチリ準備した上で対応できたので大丈夫ですよ」
「うん?リーダーがなんかしたん?」
「実はアース米のおにぎり……ですか?その販売を開始する前日にわざわざ伝えに来てくれたんですよ。しかも、いざ渡り人の集団が押し寄せてきた際には、アース米取得の依頼書作成まで引き受けてくれたんですよ!?」
「マジで!?……って、そういうところは真面目に筋を通す奴やったな」
「ええ、律儀ですよね……」
一瞬、その細やかな気遣いに驚いたが、よくよく考えたら俺もユサタクのマメさには助けられているので、すぐに納得できた。
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それからアース米以外の近況などの雑談を少し交わしてから、農業ギルドを後にした俺。そのまま付与ギルドや木こりギルドにも挨拶に行き、そこでいくつかの依頼を受注。
こうして所属する全てのジョブギルドを回りきった俺は、本命となる冒険者ギルドへと転移した。
既に開門時間が過ぎているせいか、ギルドの中にはプレイヤーの姿はほとんど見かけない。これは挨拶に加えて情報収集のチャンスだと、早足でフレンの元へと急いだ。
「おはよう、フレン」
「あっ、ソーイチさん。帰ってきてたんですね」
「うん、日が変わった直後くらいに戻ってきたわ。それより、久しぶりにお話ししようや」
「あら、ソーイチさんからのお誘いなら受けるしかないですね。少しの間ですが、お相手いたします」
「おお、忙しい中ありがとう!そのお礼じゃないけど……」
忙しいと事前に聞いていたので断られると思っていたのに、あっさりオーケーするフレン。俺は彼女の善意に応えるべく、こっそりとモチョ特製のお菓子をフレンに手渡した。
「まぁっ!?……ありがとうございます。それではソーイチさん主導で始まった、アース米の顛末から話しましょうか」
「よろしくお願いします」
そのプレゼントが効いたのかはわからないが、アース米についての騒動から始まり、新しい図鑑作成が遅れていること。さらには俺たちの農地で行われている木馬軍団についての笑い話など、既に知っていた情報含めて、俺のいない間の出来事について色々と教えてもらった。
「いやぁ〜。たった数日離れてただけやのに、色んなイベントが起きてたんやな」
「……半分くらいはソーイチや【ユーザータクティクス】が関わっていますけどね」
「あはは……確かにそうやな……って、そういえば明日からスタートとしか聞いてなかったな。具体的なスケジュールって、もう決まってるん?」
ジト目で見つめるフレンから逃れるように、話をビジネス方向へガラッと舵を切る。それが功を奏したのか、彼女も背筋を伸ばして受付嬢モードに切り替わった。
「ええ。準備は調整ありきとはいえ、1週間もお待たせしてしまったんですもん。かなりビシッと決めてますよ」
「そりゃそうか。じゃあ折角やし、どんな内容か教えてもらえる?」
「ふふふ、そう言われると思って、事前に準備してますよ。色々と注意点も多いので、依頼書を見ながら説明しましょう」
フレンはそう言って、2枚の依頼書を俺の前に差し出すのであった。
次回は明日か明後日の午前6時に更新予定です。
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