第4話 あのブラック企業が、休みを出しただと!?
くしゃみが、また一つ出た。
とりあえず、このずぶ濡れのスーツをどうにかしないといけない。俺は震えながら服を脱ぎ、熱いシャワーを浴びて、ついでにテレビをつけた。朝のニュースの時間だ。
『昨夜、沖縄本島を通過した台風は、勢力を保ったまま北上を続けており、明日には関東地方に上陸するおそれがあります。気象庁は、観測史上最大級の勢力となる可能性があるとして、厳重な警戒を呼びかけています』
画面には、昨夜この目で見たのとそっくりな、荒れ狂う海の映像が流れていた。
……おい。
まさか、俺を追いかけてきたんじゃないだろうな。
ちらりと布団を見る。相変わらず、ふかふかで、真っ青で、何も言わない。
ひとまず、今日は会社だ。俺は予備のスーツに袖を通し、鼻をすすりながら家を出た。
*
その日の夕方、事件は起きた。
鉄道各社が、明日の計画運休を発表したのだ。そして間もなく、社員全員のスマホが一斉に震えた。
『【重要】明日は台風接近のため、臨時休業とします』
オフィスが、しんと静まり返った。
「……休み?」
「うちが?」
「嘘だろ……」
あちこちから、信じられないという声が漏れる。無理もない。大雪の日も、高熱の日も、出社が当たり前だったうちの会社が、休みを出したのだ。
台風、恐るべし。いや、この場合は感謝すべきか。
部長はしばらく天井を見つめたあと、「……まあ、たまにはいいだろう」とだけ言って、誰よりも早く帰っていった。
俺はスマホの画面を見つめたまま、ぼんやりと思った。
明日は一日、家にいられる。
あの布団と、向き合うには、ちょうどいい。




