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デビル・アビリティ  作者: ゴミAIに投げるだけのなにか
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2/4

影①

 

 朝、目を覚ますと、デビルくんが部屋の隅にいた。


 黒い翼。


 曲がった角。


 人間とは思えない顔。


 いつもの姿だ。


「……また来たのか」


 デビルくんは答えない。


 右手を上げる。


 その手のひらに、黒いものが浮かんでいた。


 煙のようにも見える。


 アズマがそれを見る。


 すると、頭の中に、ぼんやりとした感覚が広がった。


 影。


 それだけは、なぜか分かった。


 自分の影を、動かせる。


 伸ばせる。


 形を変えられる。


 どこまでできるかは分からない。


 けれど、少なくとも普通の影ではない。


「……影を使う能力?」


 デビルくんは何も言わない。


 黒いものが消える。


「使え」


 それだけ。


 デビルくんの姿も消えた。


「相変わらず説明しないな……」


 アズマはベッドから起き上がった。


 窓から朝日が差し込んでいる。


 床に、自分の影が落ちている。


 アズマは右手を動かした。


 影も動く。


「じゃあ……」


 手を止める。


 影だけを動かす。


 ぐにゃり。


 影の腕が横へ伸びた。


「おお」


 もう少し伸ばす。


 伸びる。


 壁まで届いた。


「結構伸びるな」


 指を動かす。


 影の指も動く。


 握る。


 開く。


「……これ、何か掴めるのか?」


 近くにあったペンを置く。


 影の手を伸ばす。


 ペンを握る。


 持ち上げる。


「おお……」


 ペンが床から浮いた。


 アズマは少し黙った。


「……便利だな」


 ペンを戻す。


 しばらく考える。


「でも、これだけじゃな」


 影を動かせる。


 物も持てる。


 便利ではある。


 だが、それ以上は分からない。


 アズマは着替えを始めた。


 そのときだった。


 机の上に置いた財布が目に入った。


 財布。


 その横には、昨日コンビニでもらったレシート。


 アズマは何となく財布を影で掴んでみる。


 持ち上がった。


「……」


 財布が宙に浮く。


「…………」


 アズマは財布を見る。


 影を見る。


 そして、少しだけ考える。


「これ……」


 財布を床に置く。


 影を財布の下へ潜り込ませる。


 持ち上げる。


 そのまま、自分から離してみる。


 財布が動く。


 ゆっくり。


 床を滑ってくる。


「……手を使わなくても、物を動かせる」


 そこで、アズマは思いついた。


 玄関に置いてある鍵を見る。


 影を伸ばす。


 鍵を掴む。


 引き寄せる。


 カチャ。


 手元に鍵が落ちる。


「……」


 アズマは鍵を拾った。


「これ、外でも使えるな」


 少しだけ嬉しくなった。


 *


 昼。


 アズマは駅前を歩いていた。


 人が多い。


 影も多い。


 道路。


 建物。


 電柱。


 人間。


 それぞれの影が、地面に伸びている。


 アズマは歩きながら、自分の影を動かしていた。


 足元から細く伸ばす。


 戻す。


 また伸ばす。


 人の影には触れない。


 なんとなく、嫌な感じがする。


 理由は分からない。


「……他人の影も動かせるのかな」


 試そうと思った。


 だが、やめた。


 今ここで変なことをして、誰かに気づかれたら面倒だ。


 アズマは普通に歩く。


 駅前の商店街に入った。


 すると、ゲームセンターの前にクレーンゲームが並んでいた。


 景品のぬいぐるみ。


 その中に、一つだけ妙に欲しいものがあった。


「……あれ欲しいな」


 財布を見る。


 小銭が少ない。


 一回分くらいしかない。


 やってみる。


 取れない。


 もう一回。


 取れない。


「……」


 三回目。


 取れない。


 アズマは筐体を睨んだ。


「あとちょっとなんだけどな」


 景品は取り出し口の近くまで動いている。


 もう一度やれば取れそうだ。


 しかし、小銭がない。


 アズマはその場を離れた。


 数歩歩いてから、振り返る。


 クレーンゲーム。


 景品。


 取り出し口。


 そして、その下に伸びた影。


「…………」


 アズマは戻った。


 周囲を見る。


 誰もこちらを見ていない。


 しゃがむ。


 影を伸ばす。


 筐体の下へ。


 さらに奥へ。


「……入るな」


 影の先が、取り出し口の中へ入った。


 景品に触れる。


 掴む。


 少し引く。


 ぬいぐるみが動いた。


「……」


 もう一度。


 ぐいっ。


 景品が取り出し口から落ちる。


 アズマの足元。


「…………」


 拾う。


 周囲を見る。


 誰も気づいていない。


 アズマはぬいぐるみを袋に入れた。


 そして歩き出す。


 しばらくしてから、ぽつりと言った。


「……これ、結構まずい能力かもしれないな」


 口ではそう言った。


 だが。


 顔は少し笑っていた。

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