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あの日のスピカ。  作者: ツユクサリヒト


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45/72

45.


⭐︎45.





合同取材。


 音楽番組。


 CM撮影。


 雑誌。


 イベント。





 弓弦とほたるは。


 仕事で顔を合わせる機会は、確かに増えた。


 けれど。


 それは”仕事”だった。




 スタッフに囲まれ。


 カメラが回り。


 マイクが向けられ。


 終われば、それぞれ次の現場へ。




 たった数分。


 笑い合って。


 「お疲れ様でした」と言って別れる。


 そんな毎日。




 だからこそ。


 弓弦の想いは、少しずつ大きくなっていった。



「……。」




 もっと。


 もっと一緒にいたい。


 もっと話したい。


 仕事じゃなくて。


 普通に。




 一人の男として。


 ――デートしたい。





     ◇◇◇





「……無理だろ。」


 神崎の一言で夢は砕け散った。



「だよねぇ……。」


 弓弦はテーブルへ突っ伏す。




 しゅん。


 見えないはずなのに。


 頭の上のゴールデンレトリーバーの耳が、ぺたんと垂れた気がした。





「見える。」


 黒瀬が真顔で言う。




「ああ。」


 水城も頷く。




「耳、完全に萎れてる。」


「尻尾も下がってる。」




「誰の話?」


「弓弦。」


「俺?」


「大型犬。」


「俺、人間。」





 神崎はコーヒーを飲みながら苦笑する。


「相手は日本一忙しいアイドルだぞ。」


「休みなんてない。」



「分かってる。」


 弓弦は素直に頷く。




「でもさ。」


「……うん。」


「デート、したいじゃん。」



 その一言だけは、本音だった。





     ◇◇◇





 翌日。


 移動車。



 運転席には阿久津。


 三十七歳。


 色黒で目つきは鋭い。


 一見すると怖い。


 しかし、Asterismを誰より大切に思うマネージャーだった。




 バックミラー越し。


 後部座席を見る。


「……。」


 弓弦は今日もスマホを眺めている。




 ホーム画面。


 ほたるとのトーク。


 最後のやり取りは業務連絡。




 そこから三日。


 何も送れていない。


「……送る内容がない。」


 ぼそり。




「送れば?」


 水城が言う。


 

「いや。」


「迷惑かな。」


「重いかな。」


「忙しいかな。」


「寝てるかな。」


「返信考えさせるの悪いかな。」


「送らなくていいかな。」


「でも送りたい。」


「……。」


「……。」


 車内が静かになる。



 

 黒瀬が小さく呟いた。


「重症。」


「末期。」

  



 神崎が締める。


「重いな。」


「うるさい。」

   




     ◇◇◇





 昼。


 四人は馴染みの定食屋で昼食を取っていた。



「いただきます。」


 弓弦は箸を持つ。




 しかし。


 食欲がない。



「……。」


「デート。」


「まだ言ってる。」


 水城が笑う。




「行きたい。」


「知ってる。」


「映画とか。」


「うん。」


「水族館とか。」


「うん。」


「カフェとか。」


「うん。」


「……。」


「かわいい。」


「犬だな。」


 神崎が笑う。


  




 

 その時だった。



「弓弦さん。」


 入口から声がする。




 阿久津だった。


 仕事の電話を終えたらしく、席へ戻ってくる。



「少し。」


「はい?」


 阿久津は椅子へ腰掛けながら、さらりと言った。


「明後日の夕方でしたら。」


「……?」


「ほたるさん。」


「少し時間があるそうですよ。」





 弓弦の動きが止まる。


「……え?」


「先ほど。」


「レナさんと連絡を取りまして。」


「収録終了後でしたら。」


「二時間ほど。」


「空いているようです。」


「…………。」


「もちろん。」


 阿久津は冷静に続ける。


 


「OKをいただけるかは分かりません。」


「予定が変わる可能性もあります。」


「ですが。」


「誘うくらいなら。」


「今でしょう。」




 沈黙。


 次の瞬間。





 ぴんっ。


 見えないゴールデンレトリーバーの耳が、勢いよく立った。






「立った。」


 水城が吹き出す。




「完全に立った。」


「尻尾も振ってる。」



「犬だ。」




「犬ですね。」


 阿久津まで真顔で頷いた。





「違います!」


 言い返しながらも。


 弓弦はもうスマホを握っていた。




「どうしよう。」


「何て送ればいい?」


「普通でいい。」


 神崎が答える。





「普通?」


「普通。」


「普通って何?」


「普通は普通だ。」


「分かんない!」





 水城が横から覗き込む。


「貸せ。」


「やだ!」


「じゃあ早く打て!」




 十分。


 二十分。


 三十分。




「まだ?」


「まだ。」


「何文字?」


「八文字。」


「何書いてんだ。」





 ようやく。


 震える指で送信した。


『明後日、

 もし時間があったら、

 デートしない?』




 送信。


「……。」


「送った。」


 スマホを伏せる。


「終わった。」


「人生終わった。」


「始まってもいない。」


 神崎が即座に突っ込む。


     ◇◇◇


 返事は来なかった。


 一時間。


 二時間。


 三時間。




 仕事中だから。


 分かっている。


 それでも。


 気になる。




「まだ?」


「まだ。」


「既読?」


「まだ。」




 帰宅後も。


 風呂でも。


 歯磨き中も。


 スマホは手放さない。


「落ち着け。」


 神崎が呆れる。


「無理。」


「寝ろ。」


「無理。」


「返事は明日だ。」


「……。」


 結局。


 日付が変わる頃だった。


 ぴこん。


「!!」


 スマホが光る。


 勢いよく飛び起きる。


「きた!」


 ベッドから転げ落ちながら画面を開く。


 既読。


 そして。


 返信は一つだけ。


 ころん、とした。


 可愛いパンダのスタンプ笑っている。


『OK。』の文字。


 


「…………。」


 固まる。


「…………。」


 数秒後。




「やっっっっったぁぁぁぁぁぁ!!」


 夜中だというのに。


 ベッドへダイブ。


 枕を抱えて転げ回る。


「パンダ!!」


「パンダ!!」


「かわいい!!」


「スタンプかわいい!!」


「ほたるちゃんが送ってきた!!」


「俺に!!」






 スクリーンショット。


 保存。


 お気に入り登録。


 さらにスクリーンショット。



「バックアップ!」


「消えたら大変。」


 誰に聞かせるでもない独り言。


 現在、突っ込み役不在。



 弓弦は満面の笑みでスマホを抱き締めた。



「……デートだ。」




 その一言だけで。


 世界中の幸せを手に入れたような顔をしていた。






◇◇◇






デート当日。


 昼過ぎ。


 弓弦のスマートフォンが小さく震えた。


 送り主は、ほたる。


 思わず姿勢を正す。


「!」


 仕事の打ち合わせ中だった水城が横から覗き込む。


「ほたるちゃん?」


「うん。」


「開け。」


 震える指で画面を開く。


 送られてきたのは、たった二つ。


 待ち合わせ場所。


 そして時間。


『16:30』


『ここに来て』


 それだけだった。


「……。」


「……。」


「短っ。」


 水城が吹き出す。


「業務連絡。」


 黒瀬も笑う。


「でも、ほたるちゃんらしい。」


 弓弦はその短い文章を何度も読み返す。


「……俺に送ってくれた。」


「そこ?」


「俺に。」


「知ってる。」


「俺だけに。」


「当たり前だ。」


 神崎が呆れたようにコーヒーを飲んだ。

   



     ◇◇◇




 約束の時間。


 指定された場所は、駅前のロータリーだった。




「ここでいいのかな。」


 人通りは少ない。


 小さな駅。



 けれど、ほたるの姿はない。


 周囲を見渡していると。


 黒いワンボックスが静かに止まった。


 助手席の窓がゆっくり下がる。


「御影さん。」


「レナさん。」


「乗って。」


「え?」


「早く。」




 後ろから人が歩いてくる。


 弓弦は慌てて車へ乗り込んだ。


 ドアが閉まる。


 その瞬間だった。


「……。」



 後部座席。


 窓際に、ほたるがいた。




 帽子を深く被り。


 シートへ寄りかかって。


 すぅ、と静かな寝息を立てている。


「……寝てる。」




 思わず小声になる。


 レナは苦笑した。


「昨日も二時間くらいしか寝てないの。」


「え。」


「急な取材が入っちゃって。」


「……。」




 弓弦は眠る横顔を見る。


 島にいた時と同じ。


 安心しきったような寝顔。


「……俺。」


 ぽつりと呟く。


「今日、誘っちゃって。」


「迷惑だったのかな。」


 そう言うと。






 レナは小さく笑った。


「違う違う。」


「ほたるはね。」


「嫌なことは、ちゃんと嫌って言う子。」


「……。」


「もし本当に嫌なら。」


「断ってる。」


「社長相手でも。」


「私相手でも。」


「仕事でも。」


「平気で。」


 思い出したように肩をすくめる。





「だから安心して。」


「今日ここにいるってことは。」


「来たかったってこと。」


 その言葉だけで。


 弓弦の胸が少し軽くなった。




     ◇◇◇






「ほたる。」


 レナが優しく肩を叩く。


「着いたよ。」


『……ん。』


 ゆっくり目を開ける。


 ぼんやりしたまま周囲を見て。


『着いた?』


「うん。」


『ありがと。』


 眠そうな声。


 それでも自然と弓弦を見ると、小さく笑った。





『おはよう。』


「お、おはよう!」



 夕方なのに。


 おはようだった。






 レナが笑う。


「二時間後に迎えに来るね。」


『はーい。』


「楽しんできて。」


 そう言って車は静かに走り去っていった。





     ◇◇◇





「……。」


 弓弦は辺りを見回す。




「……?」


 住宅街。


 どこにでもある道。


 どこにでもあるスーパー。


 どこにでもある公園。




「……。」


「こっち。」


 ほたるは何事もないように歩き始める。




 スタスタ。


 迷いがない。


「え?」


 弓弦は慌てて後を追う。




 五分ほど歩くと。


 目の前に現れたのは。


 ごく普通のマンションだった。




 三階建て。


 オートロックはある。


 けれど、芸能人が住むような場所ではない。





「……?」


「……?」


 理解が追いつかない。



「えっと。」


『うん?』


「ここ。」


『うん。』


「どこ?」




 ほたるは立ち止まり。


 本気で不思議そうな顔をした。


『……?』


「え?」


『私の家だけど。』


「…………。」




 思考停止。


『早く。』


『時間ない。』


 スタスタ歩いていく。





「…………。」


 弓弦は口を押さえた。



(推しの。)


(家。)


(…….推しの家!?)


(え、待って。)


(いや、分かる。)


(普通のデートスポットなんて目立つ。)


(二人とも顔が知られすぎてる。)


(だから人目につかない場所を選ぶ。)


(理屈は分かる。)


(でも。)


(だからって。)


(推しの家ぇぇぇ!?)





 心臓がうるさい。




(落ち着け俺。)


(落ち着け。)


(にやけるな。)


(顔!)


(アイドル!)


(理性!)


(もつか!?)






     ◇◇◇





 ほたるが鍵を差し込む。


 カチャ。


 ……開かない。


『?』


 もう一度。


 カチャ。


 今度は開いた。


『……閉め忘れてた。』




 無表情。


 さらりと言う。


「え?」


『たまにある。』


「たまに!?」


 弓弦は思わず声が裏返った。


「危ないよ!?」


『そう?』


「そうだよ!」


「ちゃんと閉めないと!」


『……気を付ける。』


 あまり危機感がない。


 弓弦は別の意味で不安になった。




     ◇◇◇





 部屋へ入る。



「お邪魔します。」


『どうぞ。』




そこは。


 想像と違っていた。


 もっと豪華な部屋だと思っていた。


 高級家具。


 ブランド品。


 広いリビング。


 そんなものはない。


 二人暮らしには少し広いくらいの、温かい部屋だった。


 白を基調にした家具。


 丁寧に掃除された床。


 小さな観葉植物。


 壁には色鉛筆で描かれた絵。


 冷蔵庫には可愛らしいマグネットで留められたメモ。


 棚には写真立て。


 妹ちゃんの写真、笑顔でピースしている写真。




「……。」


 胸が温かくなる。


(ほたるちゃんらしい。)




 飾らない。


 優しい部屋。


 住む人そのものだった。




     ◇◇◇




『座って。』


「うん。」


 可愛らしいローテーブル。


 ほたるは慣れた手つきで茶器を用意する。


 ふわり、と甘く爽やかな香り。


「いい匂い。」


『ジャスミン茶。』




 透き通った茶器へ静かに注ぐ。


 さらに小皿へ丸いクッキーを並べた。



『鳳春堂の。』


「え?」


『美味しいよ。』



 一口食べる。


「……。」


「おいしい。」


『でしょ。』


 少しだけ得意そうだった。





     ◇◇◇





 席へ戻ると。


 ほたるが自然に隣へ座る。


『ちょっと。』


「うん?」


 肩へ軽く寄りかかる。


 スマホを取り出し。


 インカメラを起動。




『もう少しこっち。』


「え、こう?」


 カシャ。


 一枚。


 二枚。


 三枚。


 画面を確認する。


『うん。』


『綺麗。』


 そのまま弓弦へ送信。


 通知が鳴る。


「…ありがとう。」


『あとで使って。』


「宝物にする。」


『え?….そっか。』


 小さく笑って。


 ほたるはソファへ身体を預けた。


『……眠い。』


「うん。」


『一時間。』


『寝る。』


「え?」


『起こして。』


「え?」


『よろしく。』




 そのまま。


 ころん、と横になる。


 数十秒後には。




 すぅ……。


 規則正しい寝息が聞こえてきた。


「…………。」


 本当に寝た。


 弓弦は動けない。


(無防備すぎる。)


(俺、男なんだけど。)


(……。)


(信頼、してくれてるのかな。)




 嬉しかった。


 その信頼が。




 壊したくないと思った。


 だから静かに。


 ジャスミン茶を一口飲む。




 窓から差し込む柔らかな夕陽。


 穏やかな部屋。


 優しいお茶の香り。




 そして。


 ソファで安心しきって眠る、世界で一番好きな人。


(……幸せだ。)


 推しの淹れてくれたお茶を飲みながら。


 推しの寝顔を眺める。


 そんな贅沢な一時間が、この世にあるなんて。


 弓弦はまだ、夢でも見ているような気分だった。






◇◇◇






翌朝。


 アステリア・プロダクション。


 Asterismの楽屋。


 扉を開けた瞬間だった。




「おう。」


「おはよー。」


「お疲れ様。」



 三人が一斉にこちらを見た。


 そして。




「おうちデート。」


「……え?」



 水城がにやりと笑う。



「楽しかった?」


「……え?」



 黒瀬まで笑いを堪えている。


「ほたるちゃんの家ってどんな感じ?」


「…………え?」




 神崎は新聞を読みながら一言。


「お茶は美味かったか。」


「…………。」


 


弓弦の思考が止まる。




「……なんで知ってるの?」


 部屋が静まり返る。


 三人は顔を見合わせた。





「え。」


「知らないと思ってたの?」


「いや。」


「弓弦。」





 水城がスマホを差し出す。


「見て。」


「?」





 画面には。


 ほたるの公式Instagram。





 最新投稿。




 写真は昨日、自宅で撮ったツーショットだった。


 ソファに並んで座る二人。


 肩を寄せるほたる。


 緊張して少し表情が硬い弓弦。




 自然で。


 柔らかくて。



 恋人らしい一枚。


 添えられた文章は短い。



 ――おうちで少し休憩。




「…………。」


 弓弦は固まった。


「え。」





 スクロールする。




 いいね。


「……。」


「……。」


「……二百八十万?」


「今朝見た時は二百七十万だったから。」




 黒瀬が笑う。


「もう三百万いくんじゃない?」







 コメント欄も凄まじかった。




『尊すぎる。』


『付き合ってるの本当だった。』


『家!?』


『おうちデート!?』


『ほたるちゃん家!?』


『弓弦くん顔真っ赤で可愛い。』


『世界一幸せな男。』


『この写真、国宝。』




「…………。」


 弓弦の手が震え始める。


「……俺。」


「うん。」


「載ってる。」


「載ってる。」


「ほたるちゃんの。」


「うん。」


「Instagramに。」


「うん。」


「俺。」


「うん。」





 数秒の沈黙。


 そして。




「やったぁぁぁぁぁぁぁ!!」




 飛び跳ねた。


「載った!!」


「公式!!」


「推しのInstagramに俺がいる!!」


「落ち着け。」



 神崎が即座に肩を掴む。




「見てこれ!」


「見て!」


「ツーショット!」


「保存しよ!」


「保存早っ。」


「スクショもしよ!」


「投稿消えないから。」


「バックアップ!」


「だから消えない。」



 水城は腹を抱えて笑っていた。



「今朝。」


「朝六時に見つけた。」


「弓弦絶対喜ぶと思った。」


「喜ぶに決まってるだろ!」


「世界一嬉しい!」





 その顔は、一昨日のスタンプを見た時と同じくらい幸せそうだった。


 しかし。








「いや。」


 黒瀬が冷静に口を開く。




「弓弦。」


「ん?」


「喜んでるところ悪いけど。」


「?」





「完全に商売にされてるから。」


「…………え?」



「この投稿だけで。」


 水城が数字を見せる。


「フォロワー十五万人増。」


「関連ワード全部トレンド。」


「企業公式まで反応。」


「カップル起用お願いします、ってコメントまで付いてる。」


「雑誌社も記事にしてる。」






 神崎がスマホを差し出した。


 ネットニュース。


『“おうちデート”公開。ほたる&弓弦、自然体ショットにファン歓喜』


『「本当に付き合ってるんだ」と反響』


『理想のカップルとの声』


「……。」






 さらに。


「スポンサーも動いた。」




 神崎は淡々と言う。


「家電。」


「家具。」


「飲料。」


「旅行。」


「全部、『二人で』のオファー。」


「……。」






「ルミエールも。」


「アステリアも。」


「今頃笑いが止まらない。」





 弓弦は少しだけ考えた。


「……。」


「……。」


「……つまり?」


 水城がにやっと笑う。





「昨日のデート。」


「うん。」


「ちゃんとデートでもある。」


「うん。」


「でも。」


「うん。」


「めちゃくちゃ仕事でもある。」


「…………。」





「完全に。」


「ビジネスです。」


 弓弦は肩を落とした。




「……そっか。」


「かわいそう。」


「でも。」




 次の瞬間。


 スマホを見て、またにやける。


「ほたるちゃんが。」


「自分のInstagramに。」


「俺との写真載せてくれた。」


「嬉しい。」


「…………。」






 三人は顔を見合わせる。




 水城が呆れたように笑った。




「な?」


「燃費良すぎるだろ。」



「商売に使われてるって説明されても。」


「結局そこなんだよ。」




 黒瀬も肩を震わせる。



「推しに認知されて、写真載せてもらえたオタクの思考そのもの。」


「トップアイドルのセンターとは思えない。」




 神崎はコーヒーを飲みながら、小さく笑った。


「幸せなら。」


「それでいいんじゃないか。」


「だよね!」


 即答だった。



 そのあまりにも迷いのない返事に。


 三人はとうとう堪えきれず、大笑いした。

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