34.
⭐︎34.
その日はスタジオに皆んな集まっていた。
スタジオいっぱいに拍手が響く。
十二人の出演者が横一列に並ぶと、客席からは歓声が沸き起こった。
男性六人。
女性六人。
これから一か月、小さな島で共同生活を送るメンバーたちだ。
MCが笑顔で口を開く。
「改めまして、皆さんよろしくお願いします!」
「よろしくお願いします!」
声が揃う。
「いやぁ、豪華ですね。」
「アイドル、俳優、女優、モデル、シンガー……。」
「この十二人が恋愛するんですよ?」
「信じられません。」
客席が笑う。
「まずは皆さんの恋愛観から聞いていきましょう!」
◇◇◇
「トップバッター、水城さん!」
「はい!」
元気よく返事をする。
「どんな女性が好きですか?」
「可愛い子です。」
「早い!」
爆笑。
「いや、でもほんと。」
「笑顔が可愛い子。」
「一緒にいて楽しい子。」
「あと距離近い子!」
「チャラい!」
「否定できません!」
スタジオが笑いに包まれる。
「恋したら?」
「ガンガン行きます!」
「待てません!」
「なるほど!」
◇◇◇
「続いて黒瀬さん。」
「はい。」
「恋愛には積極的?」
「積極的ですね。」
「彼女欲しいです。」
「今?」
「欲しいです。」
「番組始まる前から?」
「始まる前から。」
即答。
「潔い!」
「この番組、本気で来てます!」
客席が盛り上がる。
◇◇◇
「神崎さん。」
「はい。」
「恋愛観を。」
神崎は少し考える。
「……尊敬できる人ですね。」
「おぉ。」
「価値観が近くて。」
「一緒にいて自然体でいられる人。」
「恋愛より、人として尊敬できることの方が大事です。」
落ち着いた声。
客席から感心した拍手が起こる。
「大人ですねぇ。」
「でも今は。」
神崎は苦笑した。
「仕事しか見えてないです。」
「島でも?」
「変わらないと思います。」
「鉄壁だ!」
◇◇◇
「そして!」
「王子様!」
「御影弓弦さん!」
歓声が一段大きくなる。
弓弦は穏やかに笑った。
「好きになったら一直線ですね。」
「おぉ!」
「ちゃんと気持ちは伝えます。」
「後悔したくないので。」
「女性から追われることが多そうですが?」
「いや。」
「追う方が好きです。」
「キャーーー!」
黄色い歓声。
「ちなみに島で恋は?」
弓弦は少しだけ笑う。
「いい出会いがあれば。」
余裕ある笑顔。
まさに王子様だった。
◇◇◇
「俳優、一ノ瀬さん!」
「よろしくお願いします。」
「女性人気No.1ですが。」
「いやいや。」
「恋愛は?」
「好きになったら長いですね。」
「一途です。」
「ただ。」
「方向音痴なんで。」
「デートで迷います。」
爆笑。
「そこ!?」
「島で遭難しないでくださいね!」
◇◇◇
「最後、伯耆さん。」
「はい。」
穏やかな笑顔。
「恋愛経験豊富そうですが。」
「そう見られますね。」
「実際は。」
「一人の人を長く好きになるタイプです。」
「最近お別れしたばかりなので。」
「今回は自然体で過ごせたら。」
どこか切ない笑顔。
会場も静かに頷いた。
◇◇◇
「続いて女性陣!」
「最年長、白石さん!」
「はい。」
落ち着いた笑顔。
『年齢的にも、本気で恋愛したいですね。』
『遊びじゃなくて。』
『ちゃんと将来を考えられる人に出会えたら嬉しいです。』
「お姉さん!」
「頼れる!」
拍手。
◇◇◇
「九条さん!」
『慎重ですね。』
『まず人として好きにならないと始まらないです。』
『一目惚れは、たぶんありません。』
「クール!」
◇◇◇
「天野さん!」
『スキャンダルが怖くて恋愛してきませんでした。』
『だから逆に、この番組は楽しみです。』
「リアル!」
「芸能人ならでは!」
◇◇◇
「橘さん!」
『私は好きになったら行きます!』
『待ってたら誰かに取られちゃうので!』
「肉食!」
「いいですねぇ!」
スタジオ大盛り上がり。
◇◇◇
「MASHIROさん。」
少し緊張したようにマイクを持つ。
「恋愛は……よく分からないです。」
「歌ばかりだったので。」
「でも、素敵な方がいたら、お話してみたいです。」
照れ笑い。
可愛らしい空気に包まれる。
◇◇◇
「そして最後は。」
「最年少。」
「国民的人気アイドル。」
「ほたるさん!」
客席の空気が変わる。
ほたるは少し照れたように笑い、マイクを持った。
「恋愛経験ゼロだそうですね?」
『はい。』
素直に頷く。
「どんな男性がタイプですか?」
少しだけ考える。
その素振りも愛らしい。
『…自分にないものを持っている人、でしょうか。』
「おぉ。」
『私は慎重な性格なので。』
『決断力のある方。』
『前向きな方。』
『自分が知らない世界を見せてくださる方には、憧れます。』
柔らかな笑顔。
清楚で。
控えめで。
誰もが思い描く理想のアイドルだった。
その隣で。
弓弦は思わず目を細める。
──やっぱり、素敵だな。
この子がいるだけで、話すだけで。
場が全て持っていかれる。
誰もが、この子を求めてしまう。
完璧なアイドル。
天賦のスター性。
そんなことを考えているとは、誰も気付かなかった。
「さぁ!」
「皆さんの恋愛観も分かったところで!」
「次は、この番組だけのスペシャルライブです!」
照明がゆっくり落ちていく。
「それでは、どうぞーーー!!」
会場から大きな拍手が響いた。




